本記事では「画像解析を使った再生医療」について解説している記事を読んで学んだことをアウトプットします。
再生医療でもAI(人工知能)や機械学習の応用が取り組まれており、特に移植する細胞の品質を管理するための「画像解析」で大きく期待されているとのことです。
再生医療や創薬に応用できる細胞の開発で、どうしても超えなければいけない壁が「できた細胞たちは全て同じ作用を示すもの?」や「移植に使っても大丈夫なの?」というところです。
実際に使うものを染色などの傷つけてしまう方法で評価するわけにはいかないので、いかに傷つけないで品質を管理できるかが重要です。
そこで大きな力になるのが機械学習などによるコンピューターを駆使した画像解析ですね。
AIや機械学習を再生医療にどう使うのか?
再生医療の分野でもAIや機械学習を使うというのは聞くけれど、実際にどうやって何をしているのでしょうか?
その一つが、細胞の品質管理です。
なぜ再生医療で機械学習などを使った品質管理が大事なのでしょうか?
それは下記の2点を達成するためとのこと。
- 製品の安全性
- 製品製造の安定性と効率性
これまでは熟練した人の手、目によって製造され、品質管理してきました。
これを自動化することで、誰でも安さ、安全さ、均一さを確保できるようにすることが目的とのことです。
この時に、細胞を傷つける評価では、実際に使用する細胞が本当に状態の良いものなのかを判断することができません。
そのため細胞を傷つけない非破壊的な評価技術が必要です。
そこで重要になってくるのが「顕微鏡」から得られた「画像の情報」です。
顕微鏡は、1600年ごろに開発されて今もなお現役で使われている超有名な非破壊的な観察道具です。
顕微鏡にコンピューターを組み合わせることで、これまで人の目で判断してきた細胞の形などの情報を自動で処理ができるようになるわけです。
要は熟練者の目をコンピューターで再現するということです。
いわゆるビッグデータ解析やデータサイエンスの細胞培養版の応用例ですね。
- 細胞の見た目
- 実験の良し悪し
という情報を大量にコンピューターに教え込んで行くそうです。
再生医療で機械学習の実際の取り組み
1. データを蓄積するための実験
コンピューターが予測するために必要な参考データをとる必要があります。
中でも実験者間のばらつきの原因と言われているような
- 継代数
- ピペッティング
- 培地交換
といった、数値化している人がほぼいないような部分を数値化して結果と合わせることが大事だそうです。
2. 画像の撮影
数値化した実験者の操作と関連づける結果を得るために、客観的で網羅的なデータが必要とのことで、定期的に自動で大量の画像を取得する必要があるそうです。
そこで役に立つのが顕微鏡×コンピューターですね。
3. 画像の処理
大量に取得した画像から、必要なデータの抽出を行います。
染色しない状態で、コンピューターが画像の中から「細胞」を見つけ出すのは思っている以上に難しいそうです。人間は結構簡単に見分けられるんですけどね。
そこを機械学習によって解決するそうです。
例えば、ニコンの「CL-Quant」などがあるそうです。(参考:株式会社ニコン)
4. データの処理
画像から抽出した情報を解析します。
一つの解析の特徴として、人間はたくさんある細胞の中から、特徴的だったり、気になるものをピックアップしているそうです。
そこで、コンピューターによる画像の処理では、細胞一つ一つを単体で見るのではなく、細胞の集団についての特徴を見ることで、人間に近い方法で細胞を判断できるのではないかとのこと。
これについては、熟練者のコピーを作ることが目的だから、この方法が合理的なのかもしれませんね。
5. 機械学習
「実験結果」と「画像情報」を結びつけるステップとのこと。
コンピューターが細胞を見た時に、この状態だと、こんな結果になるという答えを出すルールを作る部分だそうです。
機械学習のステップに到るまでに、膨大な作業や処理が必要ですね。
6. 改善へのフィードバック
工業的には「改善できなければ、分析・解析した意味はない」と言われているそうです。
確かに、「何のために分析・解析をするの?」というのは大事なことですね。
分析結果だけみて喜んでいるのは意味がありません。分析・解析の結果からより良い状態にしていくことが目的です。
どれだけハイテクな自動化装置やAIを使っても、工程改善できなければ意味がありませんね。
特に細胞製造においては
- 培養方法の最適化
- 手技ミスの検出
の改善に力を入れることになるそうです。
実際に使用している例
再生医療に使う幹細胞
幹細胞自体、かなり不安定な細胞です。
扱う人が変わると、実験結果が再現できないことは多々あります。
そこで、画像から品質が保てているのか検出しているそうです。
培養の途中段階の様子で最終的に目的の品質のものができるか予測できるそうですよ。
リアルタイムでサンプリングすることなく、細胞の状態を知ることができるのは、無駄な試薬や労力を使う手間が省けるので便利そうですね。
培養手技、製造方法の最適化
人の手によって製造された細胞は、状態が製造者によって違うことがあります。
この原因として、細胞を培養する時の操作手順が、素早くとかゆっくりとか「なんとなく」やっていることが挙げられるそうです。
「なんとなく」やっていた操作を数値化して、細胞の画像を結びつけることによって、操作によるばらつきを軽減させることができるそうです。
思ったこととか考えたこととか
機械学習のいいとこよくないとこ
再生医療に使われる細胞は、体の中に入れるものだから、安全性がこの上なく求められるのは当然です。
細胞はとっても繊細なので、熟練の技術を持った人が必要と言われています。
ただし、熟練の人を確保するのも育成するのもお金も時間もかかるし、必要としている患者に必要な分を確保することは難しいです。
なにより医療費がものすごく高くなります。
という理由で、安心・安全・大量にものを作るためにはコンピューターなどを使用して仕組み化することが必要不可欠とうことで、細胞分野では、製造された細胞を画像解析するためにAIや機械学習が使われているということですね。
一方で、全てコンピューターでできるようになったら、今度は熟練の人の仕事がなくなるのではないかという懸念があります。よく言われているAIに仕事が奪われるという感じの議論ですね。
細胞分野についてはしばらく心配ないのではないかなと考えています。
その理由は、必要なデータを得るための実験をデザインして、それが良いものかどうかを判断して、コンピューターが理解できるように落とし込む。というのは、今の所もこれからも、人にしかできないからと考えているからです。
実際に、上記で示したようにAIや機械学習を利用しているのは大きく分けて6工程あるうちのたった2工程しかありません。
そして、何が良い結果か?という定義は人間が決めていますし、コンピューターはその答えを出すための手伝いをしているだけというのが現状です。
とはいえ今後発展して、コンピューターが人間目線で自分で実験を考えて、実行して、解析できるようになることもいつか来るんでしょうかね。
そんな人格みたいなものが作れる世界が来たら、自分だったら自分の人格をコンピューターの中に入れて、生身を捨てて電子の世界に潜ってしまいますかね。
自分の想像力×コンピューターの計算能力がシームレスで繋がっていたらすごく面白そうです。
機械学習×ロボット
そんな妄言はさておき、iPS細胞やES細胞を使った実験では、操作する人によって、細胞の状態が変わってしまうということについて。
細胞が発現している性質は、主に発現しているタンパク質だったり、遺伝子だったりします。幹細胞の場合、同じプロトコルで培養した細胞でも遺伝子の発現状態が実験者で結構変わっていることがよくあるそうです。
当然その違いは結果にも現れます。
それをいかに解決するかというのが「機械学習を使った画像解析」でしたが、もう一方のアプローチである「ロボットを用いた実験操作」というのも開発されています。
それが「まほろ」という、2つのアームを使って人間と似たような動きで実験操作を行うロボットです。(参考1:ロボティクス・バイオロジー・インスティテュート株式会社)(参考2:新薬研究開発の未来を担う創薬実験ロボット、ラボドロイド「まほろ」 - 産総研とロボティック・バイオロジー・インスティテュート、ロボスタ)
上記の参考に実際に動いている動画があるので、ぜひ見てみてください。
この「まほろ」というロボットに、実験のプロトコルをインプットすると、その通りにやってくれるそうです。
このロボットを使うメリットとして、上記で問題とされていた、人間が「なんとなく」行っていた攪拌とかピペッティングなどを全て数値で制御することができるので、実験ごとや実験者間の違いを軽減することができます。
さらに、実験のログなども残してくれるので、実験操作についてこれまで以上に細かく記録しておくことができるそうです。
人の手だけでは労力と時間の都合でできなかった条件がものすごくたくさんある網羅的な実験なんかも、ロボットを導入することで実行するハードルが下がりそうですね。
あとはリモートで実験したりして引きこもりが捗りそうです。もとい研究を考えたり、データの解釈に時間を割くことができて、研究の発展スピードが格段に上がりそうですね。
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