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研究者になるには大学と企業どっちがよい?違いはなに?

研究の姿勢
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本記事では、研究者になるには「大学」と「企業」のどちらが良いのか?違いはなんなのか?
という疑問について、博士課程を終え、ポスドクをし、現在企業の研究者として進んだ私の一つの意見をアウトプットします。

私の考えは下記の2点。

  • どちらの道に進んでも研究者になれる。
  • 違いは評価される項目。大学は「論文」、企業は「製品」

私が研究者になりたいと抱いたのは中学生ぐらいでしたが、博士過程に行くぐらいまで、研究者になるためには大学に残らなければいけないと考えていました。

しかし、多くの共同研究を経験し、企業でも優秀な研究者が多いこと、大学だけが研究者になるために理想的な環境ではないことを知り、現在は企業で研究者として進んだ私が見て経験して考えたことを記します。

ずっと大学で生きていくと意気込んでいただけあって、自分でも衝撃的な進路転換だったのでアウトプットとして残していきます。

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大学と企業どちらにする?

研究者になるには大学しかないと思っていた

私はこれまで「研究者になるなら大学しかない」と中学生の時から博士課程の初期まで本気で考えていました。
なので、茨の道と比喩されるような大学で教員を目指すという進路について悩んだことはありませんでした。

今振り返ると、「大学しかない」と本気で言っていた博士課程初期のころは、視野が狭すぎて恥ずかしい思い出です。

共同研究という視野の広がり

「大学しかない」という、凝り固まった考えがほぐれたのが企業との共同研究でした。

運の良いことに、

  • 博士課程で所属した研究室が企業との共同研究で成り立つ、共同研究講座であったこと
  • 大型プロジェクトで5,6社の企業や他大学と共に研究したこと

という貴重な経験をさせてもらいました。

大学と企業のたくさんの人と共に研究して感じたことは、

  • 研究者としての能力は変わらない
  • 目的と環境が少し違うだけ

ということでした。

ここでたどり着いた自分なりの答えが下記の2つです。

  • 研究者は「大学」「企業」のどちらでもなることができる
  • 自分がしたいことはどっちで叶えられる確率が高いかで選択する

大学と企業の研究者の違い

役割・在り方

役割というよりは在り方に近いでしょうか。

  • 大学 = 冒険家
  • 企業 = 傭兵

というイメージが私の中ではあります。

大学は自分で新たな道を切り開いていくことによって新たな発見をするような、例えるなら冒険家に近いと思います。

一方企業は、自分の好奇心の探求というよりは、企業が達成したいことを自分の力を貸すことによって達成するという、いわゆる傭兵のイメージが近いと感じました。

という感じで、在り方(研究に対する動機)が違うだけで、研究に必要な能力は変わらないように感じました。
企業の研究者が大学の研究者より劣っているという人を見かけるけれど、大学の先生以上に優秀と感じる人もいましたし、これまでなにを学んできたんだろうという大学の研究者もいます。

つまりどっちもどっちで、能力なんて人によります。
個人の能力について「大学だから」「企業だから」と変に一般化することがナンセンスだと感じます。

大学は教育機関である

企業は、世の中をよくする対価としてお金をもらうことで利益を得ることが目的なので、
企業の研究者の主な仕事は製品の開発につながる研究になります。

一方、大学は自分が好きな研究だけをしていれば良いというわけではありません。
そもそも、大学は学校(教育機関)なので教育という業務が避けては通れません。
むしろ大学に雇われている教員の大半の大学からの評価は、研究業績よりも大学の講義によるところが大きいそうです。(大学によると思いますけど)

この記事の根底を覆すような発言になりますが、
研究だけしたければ大学ではなく「研究所」に行くと良いのでしょう。

求められるもの

この違いは結構当たり前ですが、大学と企業では研究の成果として求められる形が違います。

  • 大学 = 論文
  • 企業 = 製品

もっと細かく見ると研究費の獲得だったり、特許数だったり、色々ありますが特に見られる項目としては「大学は論文」「企業は製品」だと思います。

企業の場合は製品そのものというよりは、製品につながる成果などの部分だと思いますが。
いくら良い研究だとしても、製品に繋がらない、利益が得られない研究は企業としては受け入れてもらいにくいでしょう。
製品に繋がらなくても、特許としては最低限おさえておくことが求められているようです。

生活の安定さ

私が言うまでもなく、世間的に見ても

  • 大学 = 不安定
  • 企業 = 安定

でしょう。

細かく見ると、大学教員は基本的に数年間の任期がある立場からスタートし、成果を出し、任期がなくなる立場に変わっていきます。
任期がなくなれば、大学が存続する限りは超安定だと思います。
しかし、任期がある状態の時は、次の働く場所がわからない、中途半端な雇用状態、いつ任期なしになれるかわからないなど、ものすごく不安定です。
この安定と不安定の差が激しすぎるのが大学の特徴だと思います。

また、最近は研究費もあるところはあるし、ないところはないという差が激しくなってきているそうで、満足に研究をしようと思うと、「研究費を獲得」するための業務があります。
大学教員は基本的に裁量労働制かつ成果を早く出せるだけ出したら良いので、給料と仕事のバランスが壊滅しています。
時給換算して絶望している教員もしばしば見ます。
とはいえ、大学で働く人は「お金がたくさん欲しい」よりも「自分だけの研究がしたい」がモチベーションだと思うの、お金はあまり問題はなさそうに見えます。(見えるだけ…?)

企業は正社員であれば全体的に見て、大学よりも安定だと感じます。
何より、時間が決まっているので、仕事と給料のバランスは大学よりも良いところが多いですね。(ブラック企業は置いておく)
ただし、企業も倒産や縮小、運営方針の変更などによって、納得していた仕事ができなくなったり、最悪リストラされることもあります。
そんなリスクはあれど、全体的に見ると大学教員よりは守られている立場なので安定性は高いと思います。

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大学と企業の研究者の同じところ

自由に研究ができない

「自由に研究がしたいなら大学」と聞きますが、最近はそうでも無いように感じます。
私個人的には「半分正解半分間違い」という感じでしょうか。
正直なところ、大学でもやりたい研究をするのは難しいです。

理由は2つ。

  • 研究費が必要
  • 大学の雑務が多い

研究をするためにはお金が必要ですが、前述したように、最近は研究費の配分バランスが極端になってきているため(選択と集中)、研究費が獲得されなかったら本当に研究ができません。
そして、研究費は審査された上でもらうので、自分が本当にやりたいことが、他人に価値が無いと判断されてしまうと行うことができないわけです。

研究費の獲得に加え、大学の業務や雑務もこなさないといけないので、研究にあまり制限がなくても、研究を行う時間自体が少ないことが問題視されていたりします。

一方企業では、自分の研究をすることはほぼできないけれど、研究に使う時間は確保されていることが多いそうです。
ちゃんと管理されているところであれば、研究に全力投球させてくれているそうです。
また、企業にもよりますが、自分でプロジェクトを立ち上げることを推進しているところもあるそうで、そういった機会に恵まれれば、自分のやりたい研究をするチャンスもあるそうです。

つまり、自由に研究ができるできないは大学と企業でも環境と運によるところが多いと思います。

研究者としての能力

大学から企業に行く人を「脱落した人」とか心無いことを言う人稀にいます。
しかし、実際に共同研究で様々な大学や企業の人と共に研究をしてきましたが、「大学も企業も研究能力に大差ない」が私が感じたことです。

「できる人はできるし、できない人はできない」これに尽きると思います。

大学で研究しているから特別に研究能力が高いと言うわけでもありませんし、優秀だけど大学に興味がなく企業に行った人も多いので、能力に差はないといえます。
聞いた話によると、アメリカなどでは優秀な人ほど早々に企業に引き抜かれるそうで、大学が人材不足で困っているところがあるとのこと。

私の選択「企業に進んだ」

私は博士課程を取得した後、1年間ポスドクをし、現在は企業で研究者として業務に取り組んでいます。
ずっと大学で研究したいと思っていたけど、企業に進んだその理由は、
「ものを作り、最終的に世に出したいから」になります。

自分がしたいこと「ものづくり」

私の研究のモチベーションとしては、「ものづくり」が最も大きいです。
研究の道に進みたいと思った時も、誰も作ったことがないものを作りたいという想いがきっかけです。

以前、美術館巡りをした時なんかも、絵画よりも天球儀のような立体的なものの方が楽しいし、ときめきを感じました。
学会なんかでも特にときめく発表は、何かを形にできるものについてが多いです。
そういう体験をして、「ものづくり」が自分が本当にやりたいことだなと再確認しました。

工学で博士を取得した

工学は本来ものづくりの学問です。
しかし、大学では学問の世界なので論文が一番に評価されます。
厄介なことに評価する人たちは少しでも分野が違うと内容を理解できなくなる人が多いので、論文のインパクトと本数を重視する人が多いです。

(と言うより、理解できても価値は人それぞれだから正確に評価という概念自体ないように感じます。)

そんな背景があり、工学でも小手先だけの論文を出すための研究が横行しているように感じます。

(とはいえ、生き残りをかけて業績を出し、安定してからやりたいことをやるという意味では効率が良い戦術だとも思いますが。)

私自身、これまでに論文を出してきましたが、残念なことに論文がでても全く喜びを感じなかったんですね。
私が一番心が動いた時が、新しいものができた時で、それをもっとブラッシュアップして世に出せるようにしたいというのが大きな欲求になります。
それでも、論文や特許なんかももちろん大事なので、嫌でもやらなければいけないところですね。
でもそれを一番の目的にしたくはありません。

必要に迫られて実験ツールを自作したけれど満足できないクオリティ

研究を進めるにあたって、これまでにないものを作り上げるためには、既存のものでは対応出来ず自分で作る必要があります。
本当に最低限のものはできるけれど、それ以上は難しく悔しい思いを何度かしました。

自分の研究を遂行する傍で、企業の人とも研究をしていましたが、やはり企業の人たちはチーム形成の仕方が上手く、ものを作る開発力がずば抜けて高いことを見せつけられてきました。
自分では一部分の最低限しか形に出来ないけれど、企業は最後までしっかりと形にしていく部分がこの上なく羨ましいですね。

大学ではその能力を身につけることがどうしても不得手なもので、このまま大学に残っても本当に自分がやりたいことをすることは難しいのではないか。
そう思ったら、実際に行ってやってみたいという気持ちが高ぶっている時に、良いお話をいただいたので、そのまま企業に進んだという形になります。

  • 何としても成果を出さなければいけなさすぎて、新しいことを学ぶ余裕がないのが今の大学の状況であること。
  • 自分がやりたいことは大学よりも企業の方が叶えられる確率が高そうなこと。

この2つが「ずっと大学で研究者になりたい」と思っていた私が企業の研究者として進んだ理由になります。

まとめ

以上、研究者になるには「大学」と「企業」のどちらが良いのか?違いはなんなのか?についてのアウトプットでした。

研究者になるには「大学」と「企業」のどちらが良いのか?違いはなんなのか?

という疑問について、私の考えは下記の2点です。

  • どちらの道に進んでも研究者になれる。
  • 違いは評価される項目。大学は「論文」、企業は「製品」

大事なことは、自分が本当にやりたいことは大学と企業のどちらの方が達成できそうなのか?という問いかけをすることだと思います。

そのためには

  • 大学の研究を全力で経験したり
  • 企業の人とも関わってみたり
  • 自分がときめくことは何なのか問いかけてみたり

することを実際に経験することが近道だと思います。

私自身、企業に入ってまだまだ間もないひよっこなので、大学にいた側から見た考えになります。
企業に進んだことが正解だったのかもまだわかりません。
ただ、やりたいことは明確なので、達成できるように全力を尽くしていきます。

これからは実際に企業で研究者としての業務を通して考えたことも、今後アウトプットしていきたいと思います。

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