大学で先生になってたくさん研究したい!
そんな思いを抱いて、科学の世界に足を踏み入れた一研究者が、まさかの企業研究者になって半年経った感想をアウトプットします。
研究するなら大学と企業どっちがいいの?
という疑問は議論が尽きませんが、一人の経験談として誰かの役に立てば幸いです。
企業研究者になってよかったこと
- 生活の安定
- 長期プロジェクトに挑戦できる
企業研究者になってイマイチなところ
- 勤務時間の制限が研究と相性悪い
- 自由に研究の話ができなくなる
全ての大学、企業がこれに当てはまる訳ではありませんが、私が置かれた環境の変化の中で感じたこととしては上記のような感じです。
2020/12/3追記
「アカリク アドベントカレンダー」に参加しました。
企業研究者になってよかったこと
生活の安定
大学で働くと必ずと言っていいほど問題になるのが雇用期間の問題です。
大学では任期なしのポジションに着くまでは、ひたすら数年間のスパンで場所を転々とする人が多いです。
この不安定感がとんでもなくストレスになる人が多いのではないでしょうか。
一方で、企業は絶対に安定とは言えないものの、大学よりは安定しています。
このメリットで大きな部分だと感じたのが、「自由に挑戦できる」ということです。
お金ももちろんですが、特に時間の部分です。
大学の職員になると教育や研究費の獲得、雑務の時間が増えるので、ほとんど自分でやりたい研究ができなくなります。
そして、人生の時間のほとんどをかけても、必ず生き残ることができません。
40歳ぐらいまでに任期なしの職につけないと転職もかなり難しくなるようです。
(年齢、立場、給料、実務経験の都合で企業も大学雇いにくくなるそうです。)
企業だと大学よりかは人件費を幾ばくか確保されているので、大学よりも仕事の分担管理がしっかりされており、その結果個人のプライベートの時間も大切にされているように感じます。
その時間で、研究でも研究以外でも自分の挑戦したいことに挑戦できるのは非常にいいなと感じています。
また、生活の基盤がしっかりしていると、仕事もプライベートも安定するので、生き残りをかけた不安定な状態よりもアクティブに生きているなと思います。
長期プロジェクトに挑戦できる
前述したように、大学ではだいたい任期がある職で、2~4年程度が多いと思います。
こうなると「短期で確実に成果がでること」しかできなくなります。
新たな環境に慣れ、論文を出し、次の公募の準備をしなければいけません。
(ずっと同じ場所にいることができる人も中にはいますが…)
こうなると、挑戦的なプロジェクトはほとんどできないか、やっても途中で引き継いでしまうことになります。
ちゃんと引き継いでくれれば良いですが、変な方向にいって頓挫したり、うまくいっても立ち上げた自分の名前を外されるなんてこともあるので、そうなった時は悲しいですね。
その点、企業だと短期の研究開発ももちろん、5~10年以上の長期的なプロジェクトにも大学ほど人生の危機を気にしなくても取り組むこともできるので、基盤の安定さというのは大事だなと感じます。
ただし、異動とかあるので、大学ほどではないけど必ずしも最後まで取り組める訳ではないと思います。(ここは今後どうなっていくかは見ものですね)
この世に絶対はないので、あくまでも私の一つの経験の中で比べてどうという程度です。
企業研究者になってイマイチなところ
勤務時間の制限が研究と相性悪い
大学での勤務はほぼ時間が決まっていません。
朝から深夜までやる人が多いと思います。
というかやらざるを得ない状況の人が多いと思います。
研究費も獲得しないといけないし、実験しないといけないし、論文書かないといけないし、雑務をこなさないといけないなど一人で抱える仕事がかなり多いです。
一方で、健全な企業だと勤務時間がしっかり管理され決まっているところが多いでしょう。
私はホワイトなところに拾ってもらえたので、勤務時間はしっかりしています。
ただし、情勢的な理由で残業ができない立場で、いかに時間内に必要なことをやりきるか工夫することが大事な状況化に置かれています。
時間内にやらないとというプレッシャーがかなりストレスに感じる部分です。
どうしても研究は想定外なことが起こるので、かなりしんどいことが多いです。
「残業がないのいいな」と言う人もいますが、研究と残業なしの組み合わせはなかなか相性が悪いなと痛感しました。
やりたくてもできないというのは、それはそれで来るものがありますね。
自由に研究の話ができなくなる
大学所属の頃は、知り合いとどんな研究やってるかとか話したり、困ったこととか気軽に話ができました。
(とはいっても本当に話してはいけないところは話しませんが)
ところが、企業だとそこらへんの情報漏洩はなかなか致命的な問題なので自由に話せません。
特許取れなかっただけで経営が傾くことがあるぐらい情報は大事です。
知人たちと議論するのは大好きなのですが、企業に入ってからはなかなかそういう機会がなくなって少し寂しいところがあります。
その反面、秘密保持契約を結んだりした人たちとは思う存分濃密なディスカッションができるので、それはそれでとても楽しいのですが。
大学も企業も変わらないところ
研究外のお仕事の多さ
大学にいた時は実験の他に、研究費の申請書類作成とか、教授からの訳のわからない仕事を押し付けられたりとか色々していました。
企業に入っても、本当に必要なの?とか思う仕事や雑務は多いのでそこは変わらないかなとは思います。
(大学は企業よりも割と本業に支障をきたすレベルで多いと個人的な経験では思うところがありますが…)
こういう仕事はない方がいいけれど、組織に属すとある程度は仕方ないのでいかに効率よく終わらせることができるようになるかが大事なのかもしれません。
本当は問題提起して改善できるのがいいとは思いますが、そう簡単なことではないし、そこに必要以上労力を割くのも勿体無いので、どう改善するかは見極めて対処するしかないのでしょうかね。
この部分を生理的に受け付けないなら、どこにも所属せずに独立して、全部自分の裁量で自由にできる環境を作るしかないのかなと思います。
まとめ
以上、「元ポスドクが企業の研究者として6ヶ月過ごしたので大学と比べてみた」についてのアウトプットでした。
企業研究者になってよかったこと
- 生活の安定
- 長期プロジェクトに挑戦できる
企業研究者になってイマイチなところ
- 勤務時間の制限が研究と相性悪い
- 自由に研究の話ができなくなる
という感想を抱いています。
企業にいた方がよい、悪いについては言及しませんが、今どんな形であれ科学技術に携わる事ができているので、今の環境で自分ができることをやるだけですね。
とりあえずは、大学にいた時よりは時間が確保できるようになったのは確かなので、もっと自由に科学に取り組んでいきたいと思います。
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