科学と言えば、大体の人は数学、化学、物理学、生物学といったような分類思い浮かべるかと思います。ここではもう少し広い解釈で見ていきます。大学(理系)で研究活動を行なっていると広い分野として、理学、工学、医学と分類されることが多いですが、それぞれの特徴と目指すゴールをメモしていきます。
今回は再生医療の研究に携わるいち研究者としての考えをメモしていきます。
理学、工学、医学とは何か
理学、工学、医学とは数学、化学、物理学などを「より広く見たジャンル」と捉えるのがまずは一歩目でしょう。厳密にはもっと複雑なのですが。
好きな教科は何ですか?と聞かれた時に、数学や化学という人がほとんどだと思います。おかしい所はありません。
ですが、ちょっとだけ難しく考えて、数学や化学というものは何に属すのかという事について触れましょう。
ふつうに学校での勉強では数字を扱うものは数学、物質は化学、自然現象は物理学、生き物は生物学という感じですね。
ところが、大学や企業ではもう少し広く捉えた方が上手くいくことが多い気がします。
というのも、広い見方をしないと最終的なゴールを意識することが難しいからです。
それでは、各ジャンルについてみていきましょう。
理学
理学のゴールは「自然界で既存の現象、原理の解明」です。
なぜ、どうやってその現象が起きているのかということを明らかにすることです。
理学に属すものは物理、数学、化学、生物学、天文学などがあります。
ゴールが原理の解明ということで、いかんせん学問らしいほど学問です。社会の課題を解決するというよりは、学問的な知的好奇心を満たすことが主になります。
しかし、原理を理解するというのは非常に重要で、理学がなかったら今のような科学技術の発展はなかったくらい大事なものです。何事も基礎は大事ですね。
工学
工学のゴールは「新規のものづくり」です。
これまでになかった新しいものを作ることで、社会の課題を解決していきます。
学ぶ内容は理学とほとんど同じなのですが(基礎は大事なので当たり前ですね)、より広く学んでいきます。
そして、知識と知識を融合させることによって、これまでに存在しなかった新しいものを作るということがゴールとなります。
理学によって生み出された知識を、工学によって社会に還元するためのものを作る。というように捉えると、理学より社会に近いですね。企業の就職として、工学の方がいいというのはこういうところからくるのでしょう。
しかし、弱点としては、あくまでも工学は応用なので、原理側から根本的に新しいものを作るのは苦労するという事ですね。
医学
医学のゴールは「生命のしくみの解明、病気の理解、治療」となります。
今回は、歯学や薬学も医学と同じ分類で扱わさせてもらいます。(歯学は医学より歯に焦点を絞っていて、薬学も薬の視点から生命や病気について見ているからと考えているからです)
医学は基礎医学、臨床医学、社会医学などが挙げられます。
他と違うのは一つの分野で基礎から応用までカバーしているところでしょうか。
といっても、基礎の部分としてはやはり、理学と同じなので、物理学、化学などは重要ですね。
検査機器や医薬品は物理学や化学などの恩恵を大きく受けています。
医学を学びたい時はやはり医学部に行くことになるので、主にはお医者さんになる方が多いと思います。しかし、お医者さんにならなくても医学を学ぶことはできます。
それは、修士課程、博士課程で医学部の大学院に進学することです。お医者さんにはなれませんが、医学を学ぶことはできます。
以上、理学、工学、医学のメモでした。
理学、工学、医学と再生医療
では、再生医療の立場として理学、工学、医学について語ります。
再生医療は学問としては再生医学になります。再生医学は基礎か応用かと問われれば応用になりますね。
それでは、再生医学の土台となるものは何でしょう?
それは、理学、工学、医学の全てです。
医学とつくのでもちろん医学は重要です。そして、これまでにない、細胞からなる新しいものを作らなければならないので、工学も必要です。そして、作ったものがどのような機能を持っているかという事を評価するためには、理学の知識も欠かせません。
つまり、再生医療は、理学、工学、医学の全てからアプローチできる。もとい、しなければいけませんということです。
何が言いたいかというと、再生医療の研究に携わりたいと思っていても、医学部に行くのは厳しい、という方でも、理学や工学の分野から進むことができます。
現に、最近は工学部で再生医療に取り組む研究室が増えてきています。
自分の立場を理解して立ち回る
今現在、科学に携わっている人は自分が理学、工学、医学のどれに属しているのか確認してみてください。
- 理学 → 原理の解明
- 工学 → 新しいものづくり
- 医学 → 人のため
何かに取り組む時に上記のゴールをしっかり意識することで、迷走することがなくなると思います。
そのゴールを意識するためにも、今自分はどの立場にあるのだろうかということを認識することがとっても重要です。
これから、進路を決める人はこれを参考にして、自分がどれをしたいのかという事を考えてみてはどうでしょう。
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