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再生医療がこの10年で発展したことと解決すべき課題のメモ

研究ライフ
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本記事では「再生医療がこの10年間でどこまで進んだのかついて」の対談記事を読んで学んだことをアウトプットします。

再生医療の研究が始まって、いくつかは実際に世に出たものもあり、かなり研究が進んできました。
参考記事では、2011年からの10年間、「再生医療はどのように進んだのか」「これから乗り越えないといけない課題は何か」について、大学と企業の様々な視点から議論されていました。

特に共通して大きく変わったことは
「再生医療等安全性確保法や薬機法の法整備」
とのことです。

参考記事

再生医療の産業化に対して必要な仕組みとは-2011年から10年間で何がどう変わったのか-
畠 賢一郎、鮫島 正、鈴木 龍夫、広瀬 徹、西田 幸二、佐藤 正人、田畑 泰彦
日本再生医療学会雑誌 再生医療 第19巻第2号 メディカルレビュー社

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各業界での10年間の変化

アカデミアから見た10年間の変化

大きく変わったことは次の1つ

  • 再生医療等安全性確保法や薬機法の法整備が整った。

法律ができたことによって、これまで研究でストップしていたものが、やっと世に出せるようになってきたとのことです。
10年前は法整備が全くできておらず、再生医療という新しい製品はどの分類に分けられるのか全然定まっていなかったそうですが、この法律が整ったことで、再生医療は「医薬品」「医療機器」に次ぐ第3のカテゴリーとなりました。

また、安全性などの面からも製品として世に出るまでに時間がかかっていたが、この法律で条件付きではあるものの、早い段階で世に出すことができるようになったとのことです。

企業から見た10年間の変化

大きく変わったことは次の3つ

  • 再生医療等安全性確保法や薬機法の法整備が整った。
  • がんに対するCAR-T細胞療法への世界的な投資額の増大。
  • 大きな製薬企業が参入してきた

再生医療等安全性確保法や薬機法の法整備がされたことについて、アカデミア視点では研究は加速するメリットがありましたが、企業側から見るとデメリットが大きくなったそうです。
その理由は「再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(good products manufacturing practice: GCTP)」が厳しくなったことで、企業としては、これまでよりも製品を作るハードルが上がり、参入しにくくなったとのことです。

CAR-T細胞が注目を集めるとなぜ再生医療に影響があるのか?
CAR-T細胞は体から採取した細胞を加工して体に戻すことでがんを治療するもので、
これが受け入れられれば、同様に体から細胞を採取して体外で培養・増殖・加工する再生医療が同じように抱えているような課題の解決に繋がるのではないかとのこと。

大きな製薬企業が参入した変化による影響は、日本も国際共同治験に加わることができるようになったというのが大きいとのことです。
国際共同治験に加わることのメリットは

  • 早期の開発・承認
  • ドラッグ・ラグの解消
  • 短期間で多くの症例で評価できる

など、多くの恩恵を受けることができるそうです。(参考:Answers

臨床研究から見た10年間の変化

大きく変わったことは

  • 法規制が進んだことで、介入試験が大きく減った。
  • 観察研究が増え、ビッグデータの解析などがポピュラーになってきている。

大学も企業も法律が整備されたことによって、メリットデメリットがありました。
臨床研究では、法整備が変わったことによって試験方法自体大きく変わったようです。
これがメリットとなるかデメリットとなるかは今後次第なのかなと感じました。

ビッグデータの解析も現在の世の中の注目を集めているところなので、今後数年は大きく発展するのではないかと思います。
ただし、個人情報保護法が医療の研究と適合していないため、ビッグデータを扱う研究にとっては障壁になっているとのことで、ビッグデータの解析技術よりも、このような法律関連での問題を解決する必要があるようです。

産業側の課題が見えてきた

利益が出ていない

ここでは代表としてハートシートについて取り上げられていました。
(ハートシートは細胞をシート状に加工して、心臓に移植することで心臓の機能を回復させる再生医療の一つ。)
残念ながらハートシートの収益はマイナスのようです。

その理由は下記の2つとのこと

  • 症例数が少ない
  • 安全性の確保に費用がかかりすぎる

ハートシートが使える患者がまだまだ少ないため、そもそも利益が上がるほど売れないそうです。
適応できる範囲が広がれば、よりたくさんの人に使ってもらえ、売れる数は増えるとのこと。

安全性の確保では、労務費、設備費を含めた試験などの費用が少し過剰になりすぎているため、そもそもの価格が高くならざるを得ないようです。
ここをコストダウンできない限りはどれだけ売れても赤字が増えるなんてことにもなりそうですね。

自家細胞か他家細胞か

他家細胞のメリットは、
「セルファクトリーシステムで拡大培養を繰り返して製造できること」で、
多数の患者に提供できることとされています。

一方で、細胞の増殖に大量の血清と培地が必要になり、これが主なコストとなっているようです。
ただし、コストを下げようとしても、血清や培地を変えるなどの製造方法や培養方法を変えると細胞の性質が変わる恐れがあるとの理由で、特に承認された後、製造方法を変更することは難しいそうです。

コスト抑制の方法を作ってもすぐに反映させられないというのがかなり大きな課題ですね。
他家は理論的にはロットスケールを大きくできるかもしれませんが、結局は手作業に頼る製造工程が大半を占めており、ここを解決できない限りは目的の大量培養は難しいそうです。

同種移植細胞使用の寛容度

10年で変わった部分もある中、変わっていない部分がここだそうです。
一例としてヒト骨髄液を原料にして製品化したものを製品化したものがありますが、原料は海外から輸入しているというのが現状とのことです。

採取する人が違うと効果や効率が違うため、できれば国内向けは国内での原料調達が望ましいとされる中、日本国内での原料の入手は法的なできるものの、倫理面での課題があるようでなかなか受け入れられていないそうです。

メガファーマの参入

CAR-T療法や遺伝子治療が注目されてきつつはあるが、多くの企業がやっている訳でなく、少数の企業で行なっているのが現状とのことです。
そのため、プラットフォームの構築に時間がかかっているとのことで、特に自家細胞は手作業で培養しており、標準化して機械化するところまで達していないそうです。
そのため、生産できる量に限りがあるのが課題とのこと。

また、ここでも上記と同様に、一度承認を得ると製造方法が変更できないことが障壁になっているとのこと。
低分子役や抗体医薬は製品の規格が合っていれば製造方法を変えても良いが、細胞は製造方法を帰ると同じ製品として認めてもらえない可能性が高くなるそうです。

これからの10年に向けた展望と課題

産学連携

アカデミアは基盤(基礎研究)から臨床研究を担い、企業は臨研究から市場に出すことを担っています。
このアカデミアから企業へのつなぎをスムーズに行うことができればより早く研究結果を製品にすることができるのではないかと考えられています。

確かに、法律の都合上、アカデミアの研究は進み、企業は入りにくくなっているとのことで、技術開発と臨床研究をアカデミアでブラッシュアップし、企業はいかに安全性の課題をクリアしていくかに注力した方が効率が良いと思います。

法律

ヒト(同種)細胞の原料供給に係るガイドラインで定められているように、産業利用可能な細胞(原料)をどうやって入手するかは法的に可能であそうです。
しかし、今は国外から調達しており、国内からも調達できるようにするためには倫理的な課題をいかに攻略するかを考える必要があるようです。

技術

これまでは病気を治すために新しい技術が作られてきたが、これからは新しい技術で、治すことができるものは何かを探すという逆のアプローチも大事ではないかと提案されていました。

確かにこれまでは目的を達成するために様々な技術が生み出されてきていたが、その目的を達成できなかったものは消えていくものが多いように感じます。
とはいえ、少し使い方が違えば十分に使える技術があるのは研究の世界ではよくあることなのでこの視点も大事だなと感じます。

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感想

自分が再生医療の世界に入ったのは約8年前で、この記事で紹介されていた10年間の全ては見ていません。
それでも、昔見た技術が臨床に応用されたり、残念ながら陽の目を見ることができなかった技術などを見てきました。

数年前はたくさんの分野のヒトたちが参入して、新しい技術がたくさん生み出されていましたが、再生を制御したりや臓器を作ったりすることの壁の高さからか、最近は学会でも再生医療のセッションが減ってきているように感じます。
また、再生医療関連のプロジェクトも新しい技術を作るよりも社会実装に向けたものが多くなっているようで、学会に出ても新しい技術と出会えなくなってきたのが悲しいところです。

それでも、今もなお先陣を切っている先生や世代交代によって活躍している若手の先生をはじめ、まだまだ多くの人が取り組んでいるのも事実です。
自分も再生医療に携わる研究者として技術を生み出す側として少しでも発展に貢献していきます。

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