再生医療をうたう怪しい製品はなぜ世に出回っているのか?【勉強メモ】

Science Memo
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本記事では、日常生活で「再生医療」をうたった美容であったり、化粧品があったりするのを見かけて、なぜ効果がないであろうと思われるものがこんなにも普通に世の中に出回っているのだろう?という疑問を抱いたことについて、調べてみたことについてアウトプットします。

※私の立場は再生医療に使うための細胞の塊を作ることを目指して日々研究をしている工学の研究者であり、医師や医療従事者では無いので、医療関係の知識はほぼ無いに等しいです。なので、基礎知識が無い状態で調べてのアウトプットになるので、至らないところがあったら指摘・補足等いただけると嬉しいです。

ちなみに先に答えを書くと、効果が怪しい医療や美容が世に出回っている理由の答えは「違反ではないから」だそうです。

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効果が怪しい医療や美容についての疑問

少し前まで、google検索で「再生医療」と検索すると、「幹細胞治療」などといった美容クリニックのHPがとてもあふれていました。(最近は対処され、ほとんど表示されなくなっていますね。)
また、ドラッグストアなんかでは再生医療と言って「幹細胞エキス」を使った美容品を売るためのセールストークを聞いたりします。
さらには、再生医療ではありませんが、「血液クレンジング」なんてものがインスタグラムで一時期話題になりましたね。

少しでも勉強している人からしたら、これらの効果はほとんど無い、むしろ危険なのでは?と思うようなものであると思います。

細胞を用いた再生医療なんて、現在多くの医師が安全性や治療効果を確認しながら慎重に進めている状態で、日本ではまだ5つぐらいしか製品として承認されていません。

参考記事

細胞・遺伝子治療 開発が加速―米では年間200の新規臨床試験、日本も申請・承認が本格化、AnswersNews(2019/1/30)
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/15526/

化粧品なんかでは、再生医療と言って幹細胞の成分を入れた化粧品は「メスを使わない整形」なんてことが言われています。本当でしょうか?

皮膚を透過することができるものの分子量(大きさのようなもの)は約500 ダルトンとされています(500ダルトンルールというものが論文で提唱されています)。しかし、再生医療で実際に効果があるとされているようなものであるFGF(線維芽細胞増殖因子)の大きさは約17,000 ダルトンであり、500 ダルトンに比べてとても大きいです。500 ダルトンのものがギリギリ通るようなふるいに約30倍もの大きさのものを通そうと思っても通らないですよね。幹細胞の成分の全てがタンパク質ではなく、もちろん分子量が低いものもあると思いますが、分子量が低いのもので実際に再生に効果があると言われているものはまだないと思います(あっても研究段階)。
これを考慮すると幹細胞の成分を皮膚に塗っただけでは効き目がほぼ無いと考える方が妥当な気がします。

参考記事

Bos JD, Meinardi MM. The 500 Dalton rule for the skin penetration of chemical compounds and drugs. Exp Dermatol 9(3), 165-9, 2000.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10839713

基礎からわかる外用剤、maruho
https://www.maruho.co.jp/medical/academic/infostore/vol02/03.html

500ダルトンルール:バリア機能が保たれた皮膚は大きい分子量の化合物は通過しない
https://pediatric-allergy.com/2018/10/13/500-dalton-rule/

FGF(fibroblast growth factor)、一般社団法人日本血栓止血学会
https://www.jsth.org/glossary_detail/?id=371

血液クレンジングでは、体から抜いた血液をオゾンで処理をして体に戻す「オゾン療法」と呼ばれるものだそうです。これが効くのか効かないのかについては、下記のような記事があります。論文は存在しているが、「美容やアンチエイジングに効果がある」と断言できない研究段階のものという意見があります。

参考記事

血液クレンジング療法を笑えない日本医療の闇、PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/30628

FDA(アメリカ食品医薬品局)というアメリカの政府機関(ここに承認されるか否かが日本でもとても重要とされているそう)でもオゾンについては、効果を示す濃度は体に影響が出たり、そもそも医療としての効き目は明らかで無いとの見解を示しています。

ではなぜこのようなものが世の中に普通に出回っているのでしょうか?

効果が怪しくても世に出ている理由

先ほど述べた、現在わかっていることから考えると効果があるとは言いにくいものが世に出ている理由について、再生医療学会誌を読んでいたら一つの答えのようなものが書いてありました。

手続きが正しければ科学的に意味のない行為であっても違反ではありません。

再生医療 Vol. 18, Issue 04, P11

ということらしいです。
国が定めた手続きに沿って行っていれば、たとえ効果がないものでも問題が起きない限りは、やっても問題ではないということだそうです。

真面目で優しい人からしたら効果がないのにお金を払わせることは詐欺なのではないかと思いますが、手続きに沿って行っている分には違反でないので何も問題ないということでしょうか。

ちなみに、幹細胞治療で再生医療をうたった美容クリニックなんかは、「安全性確保法」というものができて、国に届出を出さないと行ってはいけないというルールを作ったらだいぶん減ったそうです。

残念ながら、違反でなければやっても良いというスタンスな人が大多数であるという気がします。アウトに入らなければ残りは全てセーフということでしょうか。とはいえ時代によってアウトの範囲は変わるので、セーフだったものがアウトになることももちろんありますね。

この安全性確保法はしっかり機能しているのかということについては、再生医療をうたったクリニックのHPが減っただけでなく、再生医療と言って臍帯血の移植を無届けで行っていた医師と販売業者が逮捕されているなど、働きはあるそうです。

参考記事

臍帯血販売業者と医師ら逮捕 無届け治療に関わった容疑(2017年8月27日)
https://www.asahi.com/articles/ASK8W3K2YK8WPTIL007.html

無届け臍帯血移植、投与の医師に有罪判決(2017年12月22日)
https://www.asahi.com/articles/ASKDQ0456KDPUBQU028.html

解決する方法は何があるのか

再生医療学会誌の記事で書かれている解決方法としては、

科学的根拠の乏しい行為については許容すべきではなく、有効性・安全性などの成果は論文や学会発表などで科学的な議論を経るべきであり、社会に対して適切に情報を発信する努力をする

再生医療 Vol. 18, Issue 04, P11

という医師側の努力によるとのことです。しかし、あくまで努力なので本質的な解決は非常に難しいのではないかと感じます。
しかし、効き目のないものを「再生医療」と言って世に出して、世の人に再生医療は効果のないものと認識されてしまうと、現在真剣に再生医療に取り組んでいる人たちが報われないので、一刻も早く解決をすべき重要な課題であることは間違いないと感じます。

消費者側としてできることは、騙されないための科学のリテラシーを身につけることができうる対処法だと思います。完全に理解しなくても、本当に効くのかどうかを、自分で調べて、辻褄があっているかぐらいは判断する。わからないときは怪しいもので手を出さない方が吉。ぐらいの心持ちでいた方が良いのではないでしょうか。
自分の身を自分で守らなければいけません。そのために生涯勉強することを忘れないことはとても大切ですね。

以上、再生医療学会誌を読んで、気になる記事を読んで少し勉強してみたことのアウトプットでした。

再生医療学会誌は下記のページから購入可能なので、興味がある方は一読されてみてはいかがでしょうか。

再生医療、メディカルレビュー社
http://www.m-review.co.jp/magazine/id/40

参考記事
再生医療 Vol. 18, Issue 04, P11
OPINION 「悪貨」に目を瞑るな、八代 嘉美 著

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