本記事では「企業研究者が業務時間外に論文・特許を読むのは業務になるの?」という疑問について、同僚と議論してみて「線引きを明確にすべきだな」と考えたことをアウトプットします。
よく「業務時間外で論文を読むのは業務になるから注意される」ということを聞きます。
- 業務時間外で論文を読むのはダメなのか?
- 研究者なら業務外でも論文を読んだ方がいいのではないか?
などの疑問があると思いますが、一企業研究者の立場になった私の考えは、下記の通りです。
論文は業務時間外でも読んでも良いが、「会社の目の届かないところで、業務の最重要論文以外のものを読む」ということを気をつけると余計ないざこざを避けることができる。
その理由は、会社にも「立場」があるからです。
業務外で論文を読むのは業務になるのか
業務外で論文を読むと注意される
よく耳にしたり、自分自身も同僚から言われたりするのですが、「業務時間外で論文を読むことは業務になるからよくない」という意見がありますね。
確かに、業務とプライベートの線引きを明確にしておくことは、現代の働き方であったり、心身の健康の確保に重要なことであると思います。
一方で、研究者であるならば業務時間外でも論文には目を通しておくのがプロとして当たり前という意見もあります。
その中で、
- 業務時間外で論文を読むのはなぜダメなのか?
- 研究者なら業務時間外でも論文を読んだ方がいいのでは?
という疑問について考えていきましょう。
業務時間外で論文を読むのはダメなのか?
そもそもなぜ「業務時間外で論文を読むのはダメ」と言われるのでしょうか。
この答えの大部分は、「企業の立場」にあると思います。
(残りの小さい部分は個人の価値観とかだと思います。)
企業の立場とは何か?という話ですが、それは雇用する側の責任・法律の縛りだと思います。
業務外論文議論で主に関わる企業の主な縛りとしては、「業務時間外に業務の指示をしてはいけないこと」だと思います。
時間外に業務の指示を出し、業務関係のことをさせるのは時間外労働(いわゆるサービス残業など)に類するものということになります。
昨今、このサービス残業などについてはかなり口うるさく言われていますね。
業務外論文が面倒臭いのは「研究者にとって論文を読むのはプライベートとしては趣味・勉強のようなものだけど、業務でもある」という性質があるためだと思います。
この業務でもあるという側面があるから、会社としては業務時間外に論文を読んでいる人がいたら注意せざるを得ないということですね。
ここで容認したり、酷いときは読むべきといった場合、外部から業務時間外での業務の指示を出しているなどと思われかねない可能性が生まれます。
当事者同士が良くても、第三者からの視点というのがこの時代かなり大きく関わってきます。
このような「立場」があるから、企業側としては業務時間外での論文を読むのは建前でもダメと言わざるを得ないのかなと感じます。
研究者なら業務外で論文を読んだ方がいいのでは?
次に、研究者なら業務時間外でも論文を読んだ方がいいという意見について考えます。
私個人は、読むべきとまでは言わないけれど、読みたいと思うなら読んでいいと思います。
研究者にとって論文を読むのは当たり前のことであり、業務でもあるといえばそうなのだけど、読書の一環として論文が本と同じ位置付けという人も多いと思います。
論文を読むのは悪いことではないけれど、前述したような「会社の立場」というものがあるので、そこに所属する以上はその立場は尊重した方がいいと思います。(郷に入りては…)
それが気に入らないのであれば、業務外でも論文を読むことを快諾するような会社に転職したり、独立して自分でルールを決めるのがいいのではないですかね。
立場があることを踏まえて、本当に論文を業務時間外で読んではいけないのかというとそうではないと考えます。
自分が趣味で読む本を会社から限定されていないように、何を読むのも本人の自由なはずです。
それは論文も然りのはず。
また、自己研鑽などの目的で業務時間外にのみ受講可能なe-learningなどを導入している会社もあると聞きます。
業務時間外だけど業務に関係する自主学習は推奨しているわけですね。
論文も勉強の一貫なのでよくよく考えると矛盾しそうなところですね。
ではどうするか?
答えは簡単で、会社の目のつかないところで読む。これだけだと思います。
業務外で論文を読むときに心得ておくこと
業務時間外で論文を読むときは会社の目のつかない所で読む
前述したように、会社にも立場があり、目のつくところで論文を読まれて業務時間外に「文献調査」という業務をさせていると勘違いされると思わぬトラブルにつながることが考えられます。
そういったトラブルを避けるためにも、業務時間外で論文を読むのならば会社の目のつかない完全にプライベートとして切り分けた状態で読むのが妥当というのが私の意見です。
そして論文を読んでいることも公言しないほうがいいでしょう。
プライベートで論文を読んで自分の知識欲を満たしたいだけなのに、それをわざわざ公言して会社に評価してもらう必要はないはずです。
個人的な勉強でついた知識がたまたま業務に役に立ったぐらいで良いのではないでしょうか。
文献調査などの資料で使用する論文は読まない
会社で必要な文献調査は完全に業務の一貫なので、これに関わる論文はプライベートで読まない方がいいでしょう。
その理由はサービス残業がよくないことと同じと考えます。
サービス残業がよくない理由は
- その業務を遂行するために必要な時間、人員、コストを正確に把握できなくなる
- それによって業務を引き継いだ人が想定の時間と人員でこなせない仕事量をすることになる
という点だと考えています。
文献調査の論文もこれと同じで、業務の時間内の決まった時間で文献調査をすることで、調査にかかるコストがわかります。
プライベートでその論文を読むと、
「あんまり文献調査の時間とってないのにかなり充実した調査内容になっているな。次から調査時間はそれぐらいあれば良いのだろう。」
と会社が判断した結果、他の人が文献調査を行った時に、
「◯◯さんは短時間でこれだけの調査結果を報告しているのになぜできないのか?」
なんて思わぬところに負荷がかかったりすることがあるらしいので気をつけたいところですね。
読んだ内容が役にたつかどうかわからないというのは学生ならわかりますが、一応プロとして爪とぎのために論文を読むというのであれば、プロとして業務にダイレクトにかかる論文か否かという目星ぐらいは、論文の概要をみたら判断できますからね。
まとめ
以上、「企業研究者が業務時間外に論文・特許を読むのは業務になるの?」という疑問について企業研究者になって個人的に考えたことのアウトプットでした。
個人の意見としては業務に深く関わる文献を読めば業務になる可能性が高いので、プライベートで論文を読みたいときは
- 会社の目の届かないところで
- 業務と少し離れた論文(社内資料の引用文献として使わない程度)
- 会社に論文を読んでいることを公言しない
ということを気をつけて線引きをちゃんとすれば読んでも問題ないのではないかと思います。
論文は、最前線の情報収集媒体でもあり、知的好奇心を満たしてくれる情報誌でもあるので大学所属でも企業所属でも切っても切り離せないものです。
企業については会社内だけでなく世間的にもルールによる縛りが大学よりも強いと思うので、それぞれの立場を把握して線引きして不要なトラブルを避ける立ち回りが大事だなと感じます。
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