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患者まで届いている血管の再生医療について学んだメモ

Science Memo
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本記事では「患者まで届いている血管の再生医療」について学んだことのアウトプットをします。

血管の内腔が狭まることによって、血流が減少することで痺れや痛み、ひどいと組織の壊死、切断にも繋がる病気(末梢動脈疾患)があります。
治療法はあるけれど、再発しやすいなど治療の改良が求められていました。

これに対して、細胞(骨髄単核球)を移植することによって血管の再生を行うことで、これまでの治療法よりも高い治療効果が得られ、実用化に向けての取り組みが進められているとのことです。

参考記事

治療抵抗性重症虚血肢患者に対する自家骨髄単核球細胞移植による血管再生治療
川俣 博史、矢西 賢次、堀 友亮、藤岡 歩、庄司 圭、的場 聖明
日本再生医療学会雑誌 再生医療 第19巻第4号 メディカルレビュー社

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末梢動脈疾患についてと既存の治療方法

末梢動脈疾患とは

末梢動脈疾患(peripheral arterial disease : PAD)とは、動脈内腔が狭くなり、手足の血流が減少するという病気で、冷感、痺れ、間欠性跛行(歩くと痛みや痺れを感じる)などの症状が起こるそうです。
重症化すると常に痛みを感じ、組織欠損を起こすこともあるそうです。
いずれもQOL(生活の質)が下がる症状です。

特に組織欠損の時は感染症が起きたりすると下肢切断することもあるとのことで、かなり大きな疾患ですね。

末梢動脈疾患の原因疾患

末梢動脈疾患の原因となる疾患は下記の3つが多いそうです。

  • 閉塞性動脈硬化症
    動脈硬化によって血管内腔が狭くなる。
  • 閉塞性血栓血管炎
    血管が炎症を起こして塞がる病気。喫煙者に多くみられる。
  • 膠原病関連血管炎
    結合組織などで生じる血管の炎症。

やむを得ない疾患で患ってしまうならまだしも、喫煙でも起こり得るということで、やはり喫煙はしないに越したことはないですね。

末梢動脈疾患の治療法

末梢動脈疾患の既存の治療法は下記のものがあるそうです。

  • 喫煙や糖尿病などの危険因子の除去
  • 運動療法
  • 抗血小板薬、血管拡張薬などの薬物療法
  • 手術

しかし、これらの治療を行って症状が改善されても、再発することも少なく無いとのこと。
そこで、再生医療による「より効果的な治療法」の開発が取り組まれているとのことです。

血管の再生医療

血管の再生(形成)には下記の2種類があります。

  • 血管発生
    原始血管ができる過程
  • 血管新生
    既存の血管から新しい血管が形成されること

これまで血管発生は胎児の時だけだと思われてきました。
ところが、1995年の研究で成人でも血管新生が生じることが示唆され、血管の再生の研究がこれまで進められてきたとのことです。(参考:PubMed

この2種類の血管の再生の現象を応用することで再生医療を行うとのことです。
ここでキーになるのが「骨髄単核球」で、この細胞の中には血管内皮前駆細胞という血管に分化する能力を持った細胞が含まれているそうです。

骨髄単核球を血管の機能が低下しているところに移植することで、血管を再生し、虚血状態を改善できるのではないかとのことで研究が進められてきたとのことです。

自家骨髄単核球細胞移植による血管再生医療

実際に移植する「骨髄単核球」は自家(自分の体由来)のものなので、拒絶反応などの可能性は低いとのことで、安全性は高そうです。
治療方法としては、患者から自家骨髄液を採取し、目的の骨髄単核球を濃縮分離し、患部に移植するというもの。

この治療ができるのは、「再生治療等の安全性確保に関する法律」のもと、正式な認可を受けた施設のみであったり、治療対象を既存の標準治療では治療できない患者に対しての臨床試験に限られているなど厳重に管理されているそうです。

そして押さえておきたいのは、移植して治療完了というわけではなく、移植後のリハビリを行って数週間から数ヶ月で治療の効果が出てくるとのことです。さらに、移植後、半年ぐらいは医師による管理が必要とのことです。

細胞を移植したらすぐに血管がメキメキ生えてきて治るような魔法のような治療法ではないというのは、再生医療全般的にそうですが誤解しないように注意しないといけませんね。

とはいえ、治療効果のほどは、虚血によって壊死した組織が細胞移植によってかなり綺麗に改善されている結果が本誌にて示されています。
(結構ショッキングな絵なので自己責任で本誌を見てみていただきたい)

詳しく解説している総説はこちら(京府医大誌、2016

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思ったこととか考えたこととか

血管の狭窄などで機能が落ち、体に必要な酸素・栄養を供給することができなかった時、その部分は壊死してしまうというのは、原理的にも症状の酷さ的にも想像は容易ですね。
一度そうなると切断せざるを得なかった病が、再生医療によって「切断前ならば治療できる例」が増えてきたように思います。

対応する疾患は違いますが、細胞ではなく細胞の成長因子と言われるタンパク質を患部に注入することによって、血管新生を促し、治療を行う研究も行われています。(参考:DDS 技術を活用した心臓血管外科領域における 血管新生療法

しかし、いずれの場合も、漫画でよくあるような、ちぎれた腕を瞬時に回復するような再生とは違います。

現状の再生医療は

  • 小さな機能の欠損を改善する
  • すぐには治療効果は出ない

というものがほとんどです。
しかし、

  • これまで治らなかったものが治る

という点においては間違いなく価値があるものだと考えています。

前述したように細胞を移植しただけではすぐに効果は出ず、リハビリや医師の管理が必要とのことです。
これにおいては過去記事でもアウトプットした再生医療とリハビリという観点が重要だと感じました。(再生医療でもリハビリは大事なんじゃないかという記事のメモ
どうやって再生するか?安全性を確保するか?といった、技術ばかりに注目されることが多いけれど、医療として実現する上で、研究者・医師だけでなく、リハビリや身の回りを補助する人などたくさんの人の力が必要だと思います。

噂で聞く程度だけれど、医療業界は人手不足とのことで、新しいことを進めるための人員の確保も大変そうで、技術だけクリアすればよいというわけでもなさそうな現状のなか、再生医療を実現するためには一筋縄では行かないことばかりなのだと思います。

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