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学振の申請書に挑むことで身につく研究に必要な能力

Science Memo
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本記事では「学振の申請書に挑むことで身につく研究に必要な能力」についてアウトプットします。

  • 業績がないけど大丈夫か?
  • 書くための労力が大きすぎて面倒臭い
  • そこまでして学振に挑戦するメリットは何か?

という疑問に対して、学振に挑戦してみて感じたメリットをアウトプットします。

本記事の内容は下記の通りです。

  • 学振に挑戦することで申請書の書き方が身につく
  • 採択されなくても挑戦する過程で身につくことに意味がある
  • 学振の申請書を書く中で身につく3つの能力

研究室の後輩と学振について話していて、「そこまで労力をかけても通る自身がないから挑戦しない」という意見を聞きました。
確かに、研究費や奨励金と言ったお金の面で見ると、もし通らなかった時にかけた労力に見合わないと思います。

しかし、実際に経験してみて、お金以外にも得られるものは多く、挑戦する価値は大いにあると感じています。

私自身、実際に学振DC1に挑戦せず後悔し、DC2に一度落ち、2回目で採択されました。
研究費と奨励金にはとても助けられましたが、それ以上に学振の申請書作成の中で得られたことは、その後の研究活動でも、企業で研究者になっても役立っています。

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学振に挑戦することで申請書の書き方が身につく

申請書は学振の基礎にして最大の難関と言っても過言ではありません。
本記事では、採択されるための書き方、というよりは書く中で身につくことについてアウトプットします。
書き方などテクニックについては「学振書類で最後まで徹底した3つのこと【とにかくわかりやすくする】」でアウトプットしています。

申請書を書く目的は何か

そもそも申請書を書く目的は何でしょうか?

  • 自分の研究テーマを実行する価値
  • 自分がそのテーマを実行するに値する人間であること
  • 自分に投資する価値があること

をパトロンとなる学術振興会・審査員の人にいかにアピールするかです。
これを、決められたスペース・ルールの中で、文字で表現して競争を勝ち抜く必要があります。

申請書を書く上で大事なこと

設問に対して的確に答えているか?

これは簡単で当たり前だけれど、できている人はあまり多くないと感じます。

実際に申請書をみてみましょう。

2.【研究計画】※適宜概念図を用いるなどして、わかりやすく記入してください。なお、本項目は1頁に収めてください。様式の変更・ 追加は不可。

(1) 研究の位置づけ

特別研究員として取り組む研究の位置づけについて、当該分野の状況や課題等の背景、並びに本研究計画の着想に至った経緯も含めて記入してください。

令和4年度採用分特別研究員-DC 申請書より, https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_sin.html

この中で、※箇所の「概念図を用いるなどして、わかりやすく」というのがまず第一のポイントです。
実際に審査する人は、学振の申請書の審査だけを仕事にしている人ではありません。教授などのとにかく忙しい人です。

この人たちが短時間でパッとみて、理解できるようにすることがまず重要です。

  • 絵だけで全体像が理解できる
  • 重要な部分を太字・下線などで強調して考えなくても重要だとわかるようにする

という方法が取れますね。

次は、「なお、本項目は1頁に収めてください。様式の変更・ 追加は不可。」という部分です。
書ききれないからと言って、ページ数を増やしたり、様式を自分勝手に変えるのはその時点で評価対象外ということです。
ここまでは当たり前すぎてできていない人はいないと思います。

特に大事なのが次の部分です。
「研究の位置づけについて、当該分野の状況や課題等の背景、並びに本研究計画の着想に至った経緯」について書けというものです。

よくありがちな悪い例として、
「◯◯の分野では××が注目されている。このため△△の研究に取り組んだ」

と書く人がいます。
一見、シンプルでわかりやすそうですね。

しかしこれでは不十分です。なぜその課題に取り組むことが重要なのか、取り組む意義は何なのかが全く伝わりません。
理由は、背景は確かに書いているけれど、「状況と課題」「着想」が論じられていないからです。

状況と課題について掘り下げると、解決したい問題に対して、その分野の中でどのような取り組みが行われているのか?どこまでが明らかになっていて、未知なことは何なのか?何を解決しなければいけないのか?まで書く必要があります。

着想は、その解決しなければいけないことに対して、なぜ本研究で提示する方法を思いついたのか?その方法が合理的で妥当であることを説明します。

という感じで、確かに提示されている大枠の背景と研究計画については書いているけれど、「状況と課題」「着想」について抜けているという例を見かけることが多い気がします。
このように、「設問に対していかに必要十分に書くことができるか」という能力が申請書を書く中で重要で意識的に書くことで身につく能力だと思います。

採択されなくても挑戦する過程で身につくことに意味がある

学振は運の要素がある

全員が同じレベルでも、定員があるため必ず落ちる人がいます。

そして、

  • 注目されている分野によるインパクトの大きさ補正
  • 審査員ガチャ
  • 結局は人間が判断するもの

このような性質があるため、学振に採択されなかったからといって、研究者としての素質がないとは思いません。

とはいえ、実力ももちろん反映されます。
前述した、「設問に対して必要十分に論じていないもの」については、まず審査すらされないと思って良いでしょう。
内容について考える前の段階で振るい落とされる確率が高いです。
隙間時間に一人で複数人の書類を審査するには落とせるものは落として、絞ってから考える人が多いのではないでしょうか。

テーマは流行り廃りがある中で、ある程度どうしようもないとはいえ、ある一定ラインの実力があることは大前提です。
申請書を書く中でこの実力を身につけることが何よりも大事だと考えています。
ここで言う実力とは、設問を理解して必要十分な内容で論じることができるというものです。
これが身についていると、たとえ今回はダメだったとしても、次回や他の奨学金や助成金で採択される確率がかなり高くなると考えています。

実際に、学振の申請書で身についた「設問の理解と必要十分な回答」を他の助成金でも応用することで採択をつかみとることができました。

自分の力試しの場

学振に挑戦して、採択されなかった場合、ただ不採用という連絡がくる訳ではありません。

  • 各項目(申請書の内容や業績など)の評価
  • 申請者のうちのだいたいどれぐらいの位置にいるか

というフィードバックを得ることができます。

もちろんライバルたちを認識して闘志を燃やすことも大事ではあるけれど、何よりも各項目の評価が大事です。
自分の申請書のよかったところ悪かったところがわかるので、いかに修正するかを考えましょう。
考えて修正することが自分の力になります。

この挑戦してフィードバックすることを、学生という身分のリスクが低い中で行うことができるのが良いと思います。
これが何か役職について、研究費を取ることができなかった場合、自分以外にも不利益が被るなんて状況だと、力試しとか言っている場合ではありません。
是が非でも命をかけて獲りに行かないといけない状況はかなりストレスがかかるでしょう。

申請書を書く能力は学振以外でも重要

「設問に対していかに必要十分に書くことができるか」という能力は、学振だけでなく就活でのエントリーシートなどでも同様に重要になることが多い気がします。
後輩のエントリーシートを添削していて思うのは、設問を無視してアピールしたいことをアピールしているものが多いところです。

設問として提示している以上、聞きたいこと知りたいことがあるはずです。

そこを読み取って、的確に答えることが何よりも大事なのではないでしょうか。
聞いてもいない自慢話を聞くのは面白くないですね。

会社に入っても使うことができると感じています。
研究や開発のテーマ説明や報告を上司にするときです。
仕方がないことですが、自分の会社で行なっていることとはいえ、上の人ほど研究の細かいところは理解することができなくなっていきます。(担当する役割が違いますからね)
その人たちに、いかにわかりやすく説明し、納得してもらうことができるかが大事になります。
学振の申請書を読む人も、完全に同分野の専門家という訳ではなく、細かいところは理解できない人に当たることも多いとのことで、共通点は多いと感じます。

学振の申請書を書く中で身につく3つの能力

これまでのまとめのようなものです。

  • 審査員の特徴を把握する
  • 指示・ルールを守る
  • 聞かれたことに対して的確に答える

審査員の特徴

審査員の特徴は下記の2点が特徴的だと思います。

  • 忙しい先生たち
  • 必ずしも申請者と同じ分野に精通した人ではない

この人たちに短時間かつ簡単に理解してもらえるような申請書を書く必要があります。
そして、これは学振の申請書に限ったことではありません。

  • 学会の賞などもそう
  • 就職活動のエントリーシート、面接でもそう
  • 企業の上の人たちへの報告でもそう

ただでさえ多忙な人たちに、何十人何十テーマと押し寄せてくる中から選んでもらう必要があります。
そのためには「わかりやすく説明する能力」が大事です。

指示・ルールを守る

多忙かつ数を捌かなければいけない審査員がどうやって良し悪しを判断しているのでしょうか?
効率の良い方法は多分誰でもたどり着く答えだと思います。

それは、書き方の規定に沿っているもの、いないものでまずふるいにかけるというもの。

この時、内容はほぼ読まれないと思います。
文章の様式・ページ数はもちろん、指示されている内容の抜け、誤字脱字、見にくいと言ったそんな理由で落とされる可能性があります。

内容を評価してもらいたいのであれば、まずはその段階を確実に突破する必要があります。
簡単そうで当たり前に感じる部分ではあるけれど、だからこそ差がつく能力だと考えています。

聞かれたことに対して的確に答える

「設問に対していかに必要十分に書くことができるか」が重要です。

どれだけ気持ちを込めても、感動できるようなことを書いても、聞かれたことに答えることができてなければ評価はつかないですね。

研究においても、仕事においても、問題に対しての合理的な対応が大事です。
コミュニケーションにおいても、聞かれたことに対して答えることが大事です。

たかが学振の申請書という一つの書類かもしれないけれど、設問に対して、「どれだけ真摯に答えることができるか」を訓練する場所でもあると思います。
限られたスペース、文字制限の中で、設問に対する答えをシンプルかつわかりやすく論理的に答えて、相手に納得してもらうというのはかなり難しいことです。

だからこそ、学振の申請書はプロの研究者を納得させるための訓練の機会としてとても良い場所だと考えています。

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まとめ

本記事では「学振の申請書に挑むことで身につく研究に必要な能力」についてアウトプットしました。
確かに学振の申請書はかなり膨大な時間と労力を費やすものです。
採択されないと無駄になると思うが、申請書を書く中で身につくこともかなり重要だと感じます。

まとめると

  • 審査員の特徴を把握する
  • 指示・ルールを守る
  • 聞かれたことに対して的確に答える

という申請書を書くにあたって重要な能力が身につくと考えています。

これが身についた結果、採択される申請書になるとも言うのではないでしょうか。

また、これは学振の申請書だけではなく、就活でも就職してからも役に立つ重要な能力だと感じています。

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