本記事では、「優れたサイエンスコミュニケーターになる方法(How to be a good science communicator)」という記事を読んで学んだことをアウトプットします。
サイエンスコミュニケーターという「科学を一般の人たちに伝える仕事」が近年話題になってきているように感じます。
Natuerでも、現代の状況から科学を一般の人に伝えることの大事さを強く認識しているようで、Natuer Medicineという雑誌に「優れたサイエンスコミュニケーターになる方法」という素晴らしい記事がありました。
その記事を読んで、
- サイエンスコミュニケーターの仕事は何?
- サイエンスコミュニケーターになるために大事なことは何?
- サイエンスコミュニケーターが意識することは何?
という疑問について学んだことについてまとめたのでアウトプットしていきます。
私が強く印象に残った、サイエンスコミュニケーターになるために大事なことは、
- 正確なこと。根拠となるデータを示すこと。
- 知らないことは知らないと言えること。”we don’t know”
- 世の中の最新の研究に毎日遅れずについていくこと
サイエンスコミュニケーターが意識することは
- 話を聞く人がどんな人たちなのかを把握すること
- 自身の専門から離れないこと。自身の専門に責任を持つ
- 子供でも科学が理解できるように単純化できること
という点が、とても参考になりました。
サイエンスコミュニケーターの仕事は何?
サイエンスコミュニケーターとは何かについては、2022年1月23日(日)にアナウンサーの桝太一さんが、アナウンサーから「サイエンスコミュニケーション」の研究に携わる立場に転身するというニュースが話題になったので、言葉だけでも聞いたことがある人は多いと思います。
また、「サイエンスコミュニケーター」という言葉からも、科学を社会に伝える役割を担う人というような印象も容易に抱くと思います。
サイエンスコミュニケーターの具体的な役割については、
科学者や技術者と一般の方々をつなげるのが科学コミュニケーターの役割です。科学を解説したり、研究の面白さを伝えたりするだけでなく、一般の方の疑問や期待を研究者に伝えることで、科学と社会の間に双方向のコミュニケーションを生みだします。
日本科学未来館、科学コミュニケーターについて
研究者や技術者といった科学技術の専門家と一般社会の間に立ち、相互理解を促す架け橋的な役割を担うのがサイエンスコミュニケーター(科学コミュニケーター)です。
リクナビ、サイエンスコミュニケーター
一般の人たちに科学技術の有用性や面白さを伝える「科学広報」や「サイエンスライティング」活動に加え、一般の人たちが科学に対して抱いている疑問や期待を専門家に伝えていくことで双方のコミュニケーションを生み出すことが期待されています。
どちらも共通していることを見ると、
- 科学者・技術者と一般の人々をつなげる(相互理解すること)
- 一般の人たちの疑問や期待を解決する
ということが主な役割とのことのようです。
インターネットが普及して、様々な情報を簡単に得ることができるようになってきた一方で、誰でも発信できてしまうため、情報は玉石混淆となってしまっています。
嘘の情報を得るだけならまだしも、その情報によって健康などで不利益を被る問題も起きています。
そんな背景があるため、サイエンスコミュニケーターの役割というものは、非常に重要なものとなってきているようです。
サイエンスコミュニケーターになるためには、もちろんそのために学ぶべきことやきちんとしたトレーニング、心構えが必要とのことで、Nature Medicineに掲載されていた「優れたサイエンスコミュニケーターになるための方法」についての記事が面白かったのでアウトプットします。
サイエンスコミュニケーターになるために大事なこと
Natureの記事、「優れたサイエンスコミュニケーターになる方法(How to be a good science communicator)」では、サイエンスコミュニケーターにとって大事なこと、意識するべきことなどが現代の問題点を挙げながら具体的に解説されていました。
サイエンスコミュニケーターが大事なことで、私が特に印象に残ったのが下記の3つです。
- 正確なこと。根拠となるデータを示すこと
- 知らないことは知らないと言えること。”we don’t know”
- 世の中の最新の研究に毎日遅れずについていくこと
正確なこと。根拠となるデータを示すこと。
「正確なこと。根拠となるデータを示すこと。」については、前述したように、インターネットの発達で、誰でも情報発信ができてしまうことから、正しい情報を見分けることが必要です。
ただし、科学の特に専門性の高い情報については、専門家でないと判断することはかなり難しいです。
私もトレーニングを積んで、博士号を取得した身ではありますが、科学的な知見においても自分の分野から離れた分野についての真偽は判断することができません。
ですので、科学について関わりが薄い人たちに情報の真偽を見抜けと言うのはかなり酷なものだと思います。
そこで出番になるのが各分野のサイエンスコミュニケーターということでしょう。
サイエンスコミュニケーターの発言が正しいことを保証するものとしては、信頼関係はもちろん「根拠となるデータを示すこと」が挙げられていました。
科学の知見について、何が根拠でその情報が正しいと言えるかは、今の世界の仕組みでは「データ」が最高峰のものと言っても過言ではないでしょう。
このデータについては、アクセス可能なものを示していくのが重要とのことです。
「データはある。でも見せられない」では信用も何もないですからね。
知らないことは知らないと言えること。”we don’t know”
「知らないことは知らないと言えること。”we don’t know”」が特に大事だと思いました。
本文では
Sometimes the truth is “we don’t know,”
How to be a good science communicator. Nat Med. 2021 27(10), 1656-1658.
と書かれていたところがグッときました。
“I”ではなく”We”と書かれている部分がかなりポイントだと思います。
これはサイエンスコミュニケーターという立場の人も大事ですし、一般の人たちにとっても大事なことだと感じます。
というのも、上記の“we don’t know,”の一文で、”We”と表記されていることは、その疑問についての答えは科学者・技術者の誰にもわからない。
つまりまだこの世界で答えが見つかっていないという意味になります。
最先端で研究者が命を削って解明しようとしていて、その知識を世の中に伝えるために知識を集約するサイエンスコミュニケーターが全力を尽くしてもわからないということです。
決してサボっているわけではなく、人類の今の限界としてわからないという意味が“we don’t know,”には込められているのではないかと感じました。
たまに、「わからない」と答える専門家を叩くような記事や番組をみます。
いくら専門家が真摯に向き合った上での「わからない」を言うことができても、それを受け取る一般の人たちが理解していないと相互理解は厳しいものになります。
ですので、この”we don’t know”はぜひ、一般の方々に届いたらいいなと思う言葉でした。
世の中の最新の研究に毎日遅れずについていくこと
「世の中の最新の研究に毎日遅れずについていくこと」については、厳しい言葉ですが、本当にその通りだなと感じました。
サイエンスコミュニケーターの役割として、「相互理解」や「一般の人の疑問に答える」とあります。
Natuer Medicineの記事でも、疑問に答えたり、不安を解消することが重要な役割と述べられていました。
ただ自分が面白いと感じた科学を伝えるだけではなく、「一般の人の疑問に答える」も重要な仕事です。
この時、なぜ毎日最新の研究に遅れずについていくことが重要になるのかと考える理由は、今の世の中の情勢を見たからです。
未知の脅威が世界中で発生しました。
誰も詳しいことを知らないし、どうしたらいいかもわからない状態が続いたと思いますし、今もその状態と戦っていると思います。
この時、専門の研究者たちが「その脅威はどういうものなのか」「どのように対策できるか」について必死に調べて、論文として開示しましたし、今もなお多くの論文が出ています。
ただ、その研究者たちの仕事はいかに早く調査するかが仕事です。
しかし、その調査結果は一般の人が読むにはかなり難しいものです。
サイエンスコミュニケーターはその難しい調査結果をいかにわかりやすく、早く一般の人たちに共有して、疑問や不安を解消することが仕事になるのではないかと思います。
最新の研究結果がすぐに世の中に還元されることは少ないですが、昨今の世界の情勢を見ると最新の科学的な知見をいかに早く一般の人に伝えるかという、緊急性も大事になっています。
このような理由で、かなり厳しい言葉ですが、「世の中の最新の研究に毎日遅れずについていくこと」はかなり重要だと感じました。
サイエンスコミュニケーターが意識すること
次は、サイエンスコミュニケーターが意識すべきことについてです。
私が特に印象に残ったのが下記の3つです。
- 話を聞く人がどんな人たちなのかを把握すること
- 自身の専門から離れないこと。自身の専門に責任を持つ
- 子供でも科学が理解できるように単純化できること
話を聞く人がどんな人たちなのかを把握すること
「話を聞く人がどんな人たちなのかを把握すること。」については相手の立場に立って考えるという解釈をしました。
科学に詳しい人、少し詳しい人、全く知らない人で説明の仕方がかなり変わると思います。
学会発表とかでも、同じ専門家が集まるものでは、専門用語ごりっごりのハードな説明でも伝わるでしょう。
しかし、学会と言っても、少し分野がズレたところで話す機会もあります。
そのような場合では、なるべく誰でもわかるような言葉に置き換えたり、話す内容も浅いものにすると思います。
それを一般の人に対しても考えなければいけないという事ですね。
年齢や理系・文系というざっくりとした属性でも使う言葉や、説明する時の言葉づかいや資料についてかなり変わってくると思います。
同じ説明でも、相手に合わせた説明・ツールを使っていくことが良いコミュニケーションをするコツだそうです。
自身の専門から離れないこと。自身の専門に責任を持つ
「自身の専門から離れないこと。自身の専門に責任を持つ」については、最近特に意識していかなければいけないのかなと感じました。
前述したように、サイエンスコミュニケーターは正しく伝えることで信頼を得て、一般の人たちに科学を伝えて、疑問や不安を解消することが大きな役割です。
そして、常に最新の研究をフォローする必要もあります。
科学を伝えるというと、簡単そうに見えますが、やっていることはかなりハードなことだと、研究に携わっている身として感じます。
Natureの記事では、一人でできることには限界があるので、自分の分野は自分が責任を持って役割を全うすること。
他の分野は他の専門の人に託すことが信頼につながるとも述べられていました。
また、一般の人から見たら、情報発信する人が専門分野をちゃんと学んできた人かどうかの判断は難しいものなので、専門分野の立場を明確にしていくこと意識が必要だと感じました。
専門分野から離れたことを発信すると、「この人は専門外のことに口出ししているけど、言っていることは本当なの?」など、信頼にヒビが入ってしまうことにつながりかねませんね。
まさに「ブランディング」というやつですね。
子供でも科学が理解できるように単純化できること
「子供でも科学が理解できるように単純化できること。」については、説明する上で最も意識すべきことだと感じました。
「話を聞く人がどんな人たちなのかを把握すること。」でも述べましたが、相手に合わせた説明をすることは重要です。
そしてサイエンスコミュニケーターが話をする人たちの中で、最も説明することが難しい相手が「子供」だと思います。
成熟段階であるため、持っている知識も語彙も理解力もものすごく限られます。相当工夫して話の構成や言葉づかいを考えないと、興味を持ってもらうことすらできません。
実際に、この前小学生に私の研究についてお話する機会をいただきましたが、とても苦戦しました。
逆に言えば、子供に伝われば、それよりも上の人たちには伝わるだろうとも言えますね。
また、次のそのまた次の世代を担う主役も今の子供になります。
サイエンスコミュニケーターの方々のおかげでこれからの科学を担ってくれるような素敵な人材が育ってくれたら、それはとっても素敵なことだなと思います。
まとめ
以上、「優れたサイエンスコミュニケーターになる方法(How to be a good science communicator)」という、Natureの記事を読んで学んだことのアウトプットでした。
私がサイエンスコミュニケーターになるために特に大事だと感じたことは
- 正確なこと。根拠となるデータを示すこと。
- 知らないことは知らないと言えること。”we don’t know”
- 世の中の最新の研究に毎日遅れずについていくこと
の3つでした。
また、サイエンスコミュニケーターとして意識するとよいことについては
- 話を聞く人がどんな人たちなのかを把握すること
- 自身の専門から離れないこと。自身の専門に責任を持つ
- 子供でも科学が理解できるように単純化できること
が印象的でした。
サイエンスコミュニケーターは副業であってはならない的なことも記述されており、これからの世の中でサイエンスコミュニケーターのお仕事が大事な立場になっていくと良いなと感じました。
Natureの記事では、このほかにも大事なことがとてもたくさん書かれており、読む人によってポイントが異なると思うので、ぜひ元記事の方を読んでみてください。
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