「よいものは売れる」が通用しなくなってきたと言われるように、
「よい研究だから評価される」も通用しないことが多いように感じる今日この頃です。
こんな世の中で研究を評価してもらうために「ブランディング」という考え方が研究者個人でも大事だと、「ブランディング見るだけノート」という本を読んで改めて感じたのでアウトプットします。
- よい研究をしていると思うのに理解されない
- プレゼンを頑張っても「結局何がしたいの?」と言われる
- 学会とかで自分の研究や自分のことを知ってもらいたい
という悩みに対して、
- 研究を認知してもらうのにブランディングが大事だと思う理由
- ブランディングから学ぶ研究の伝え方
- 研究や自分を認知してもらう方法
について、「ブランディング見るだけノート」を参考に、自身の経験と照らし合わせて、研究にどうやって落とし込んでいくことができるか考えたことをまとめました。
ブランディングは組織全体で取り組むもののようですが、研究テーマ一つ一つや研究に取り組む個人に対してもブランディングすることで、大きな効果を発揮してくれる可能性が高そうです。
ブランディングとは
よく「マーケティング」という言葉は聞きます。
マーケティングは、どんな製品を、どれくらいの価格で、どこで売り、どう宣伝するかというものに対して、
「ブランディング」は、製品を選択するときの「好き」や「面白い」といった感情的な価値をつくる「ブランド」を、いかに知ってもらうかということだそうです。
どちらも主に市場で使う概念だと思います。
10年近く研究に携わってきて、このマーケティングやブランディングという考え方は研究でも同じ様に使える概念だなと感じます。
マーケティングであれば、研究テーマをどれだけの労力をかけて、どこで発表して、どうアピールしていくかという感じになると思います。
ブランディングであれば、研究テーマに対して、好きや面白いといった感情的に認知してもらうことができるかになると思います。
これまでに、
研究テーマの作り方について考えてみたことや、
研究を伝える方法について考えてみたこと
といったマーケティング的な要素のことはこのブログでもアウトプットしてきた。
本記事では、自分の研究をどう認知してもらえるか、どれだけ研究の好きや面白いを知ってもらうことができるかについて「ブランディング見るだけノート」を参考に考えてみたことをアウトプットします。
研究を認知してもらうのにブランディングが大事だと思う理由
認知されない研究はないものと同じ
どれだけよい製品をつくっても、消費者に知ってもらうことができないと存在しないものと同じで、
研究も認知されないと存在しないようなものだと思います。
よい研究をしていれば知ってもらえるという考えではなかなか知ってもらえないことが多いです。
そもそも、よい研究かどうかは見た人が決めることです。
なので、まずはどれだけ多くの人に知ってもらう(認知してもらう)ことができるかが大事です。
研究を知ってもらう方法は学会発表、論文が主だと思います。
このときに、ただ研究を知ってもらうだけでなく、興味を持ってもらうことが大事だと感じます。
大きな学会で発表した人ならわかると思いますが、学会の年会では膨大な発表があります。
論文も年間で160万報も出ているそうです。
その中でただ見てもらうだけではなく、覚えてもらうためには、好きとか面白いと共感してもらう必要があります。
この時に、せっかく見てもらったのに、「このデータよくない」とか「面白くない」というネガティブに認知されるととても困りますね。
こういった理由から、ブランディングが大事だなと感じました。
認知してもらわないと研究者として生きていける確率が下がる
研究者として生きていくためには、研究者同士の繋がりがかなり大事に感じます。
特にアカデミアの研究者として生きていくとなったときに、数少ないポストを巡る椅子取りゲームを制する必要があります。
ただでさえ人員不足なアカデミアでは、自分が知っていて信頼できる人を下につけたほうがラボ運営のリスクが下がるので、コネを重視する傾向が強いように感じます。
不公平のように感じますが、わからないこともないです。
企業でも共同研究を行って、よいと思った人材を雇用したほうが、不特定多数の中から選考を行って採用するよりはよい人材を確保できる確率が高くなります。
このように、よい人材と認知してもらうことによって、研究者として生きることができる確率が高くなります。
ここでも、よい印象で認知してもらうことができればそうですが、悪い印象で認知されると、最悪噂として広まり苦戦することになります。
自身に悪い部分があると思っているのであれば改善するしかありませんが、よいと思う部分については、そこを知ってもらえるように、研究と共に自分のブランディングも大事だと感じました。
信頼性を担保してくれる
研究を認知されるときは、だいたい人と所属をセットで覚えられることが多いと思います。
例えば、「◯◯大学の××の研究をしている△△さん」という感じですね。
学生の場合、ここに「研究室」というものも加わると思います。
「□□先生の研究室の人」
実は研究に携わっている学生は自分でブランディングをしなくても、ブランドの恩恵を受けていることが多いです。
それが下記の2つのブランドです。
- 大学のブランド
- 先生(研究室)のブランド
これらは大学や先生が長い時間をかけて築いてきたブランドです。
ブランディングの役割でもある信頼性というものがそこにはありますね。
その大学、研究室に属しているだけで、ある程度信頼・信用してもらったり興味をもってもらうことができます。
では、自身でブランディングしなくてもいいのではないか?とも思いますが、そうではないように感じます。
理由は、下手なことをするとそのブランドを傷つけることがあるからです。
また、自分が信頼されているのは、属している大学、研究室によるブランドによるものなので、自分のブランドではないことには気をつけたいところですね。
企業に属していても同じだと思います。
そこから出ると恩恵はかなり小さくなるので、自分自身でブランディングをしておくに越したことはないです。
大学や研究室のブランド力があまりないと感じる人は、世の中の評価的にはブランド力が高いところに属した人に比べて、かなり不利になっているので、より一層ブランディングが大事だなと思います。
ブランディングから学ぶ研究の伝え方・明確にすべきこと
ブランディングで大事なこと
ブランディングする上で何をしたらいいのかを考えてみます。
参考書の「ブランディング見るだけノート」では、ブランディングの大事なこととして、
- ブランドへの共感
- なんのために存在し、どんなミッションを果たすのか明確にする
- 差別化
といったことが挙げられていました。
かなりたくさんの要素を挙げられていましたが、こと研究において、私が特に大事だと感じたものが上記の3つになります。
研究に置き換えてみると下記のような感じになるかもしれません。
- 研究への共感(面白い)
- なぜその技術を使って、その問題を解決したいのか
- その技術である必要性は何か
これらを明確にするのが、まず研究でブランディングするための1歩目なのではないかと思います。
研究への共感
自分が研究に対して面白いと共感するときを振り返ってみると、
「自分が解決したい」とか「なぜだろう」と思ったことについて、「予想外の方法」、「これまでにない方法」で解決しようとしている研究が多いです。
面白くないと思った研究は、すでに報告がある結果に対して、すでにある別の技術でもできたよ、結果は同じぐらいだったけどというものです。
自分が興味あることに対してしか、面白いと思うことができないので、全ての人に対して同じ様に共感してもらうことは難しいと思います。
その中で、自分と同じ興味を持っている人にターゲットを絞った場合、分野と技術に対する知識は似た様なものを持っています。
何が新しいか新しくないかという「新規性」についてや、どこまで解明されているのかという「発展具合」については理解しているということになりますね。
つまり、何も知らない人に対してよくやるような、「こういうことができました!すごいでしょ!」という手は使えないということです。
むしろ理解している人に対しては、「何をいまさら」と思われ、逆効果になることにもなります。
きちんと、「課題」や「これまでに行われてきたこと」を整理して、その中で自分はこれまでわからなかったことやできなかったことを、解明・達成したということを伝えるのが共感してもらうために大事になってくると思います。
なぜその技術を使って、その問題を解決したいのか
個人的にとても大事だと思う部分です。
研究のテーマ設定の課題自体は、研究分野共通の課題でもあるので、どれだけ大義名分な課題設定をしても、みんな同じような課題設定になります。
普通に課題設定するだけだとありきたりな課題すぎて「まぁそうだよね」という感想しか抱けません。
どうやってオリジナリティを出すのかを考える必要があります。
課題自体は、最終ゴールに対しての今止まっている所の課題であることが多いはずです。
大きな研究テーマの中の1部分ですね。
多くの人たちが同じ課題に取り組んでいたとしても、使う技術が異なれば、課題をクリアした後のゴールまでの進み方は異なります。
このように、課題をクリアした先の目的や進め方を示すことで
- なぜその技術を使うのか
- なぜその問題を解決したいのか
というところでオリジナリティが出すことができるのではないかと思います。
「結局何がしたいの?」と言われたことがある人は、おそらくこの項目について意識することで理解してもらうことができる確率が高まるのではないでしょうか。
その技術である必要性は何か
技術の差別化について考えてみます。
上記の項目と被る部分もありますが、
研究に用いる技術について、なぜその技術でないとダメなのか、他のものではダメなのかという議論がまあまあ起こります。
この際に、よく技術の比較として用いられるのは、技術のスペック比較表ですね。
スペック比較表から、自分たちの技術の利点の部分をアピールしますが、多少スペックが違っても最終的にできることやものが同じであれば、アピールの意味がなくなります。
大事なのは、このスペックだからこそできることに主眼をおくことだと思います。
どの技術を使ってもできてしまうというのは
- 課題設定がうまくできていない
- 技術の選択ミス
によって生じてしまっているものだと思います。
これを避けるためにも、スペックの数値よりも、できること、できないことに主眼を置いて、自分たちの技術だからこそできることをアピールすると、差別化しやすくなると思いました。
「これ、別にこの技術じゃなくてもよくない?」と思われることを徹底的に避けることが重要ですね。
自分のことを認知してもらう方法
「研究を認知されるときは、人と所属をセットで覚えられることが多い」と前述したように、
「◯◯大学の××の研究をしている△△さん」と、研究を認知してもらうということは自分のことも認知してもらう事になります。
このとき、自分の認知のされ方もその後の人生に影響する要素の一つとなるくらい大事なので、ブランディングするメリットが大きいと感じる部分です。
どんな認知のされ方があるか考えてみると、
- 実験系がシンプルかつ効率的でわかりやすく組み立てることができる人
- 解析では恣意的な解釈をせずに、誠意のある人
- 知識が膨大で議論してて度肝を抜かれる人
などの、かかなり多種多様な認識が考えられます。
もちろん、これの逆(ネガティブ)な認知のされ方もあります。
この人の出すデータは恣意的で怪しいとか認知された日にはおしまいですね。
ではどうしたら、よい認知をしてもらうことができるのでしょうか?
答えは、当たり前のことを当たり前にやるだけだと思います。
- 実験の組み立てが上手い人は、常に目的が明確で手段が妥当かどうか、必要なデータに過不足はないかを常に考えて取り組んでいる人
- 誠意が感じられる人は、不利なデータを除外しない、データの解析方法を習熟している人
- 知識が豊富な人は論文や参考書と触れ合っている時間が長い人
と、研究に携わっている人であれば当たり前にやっていることですね。
それが少し突出している結果だと思います。
自分がどういう研究者でありたいかを決めて、意識してそれだけは他の人に負けないと思うくらいやるとついてくるものではないでしょうか。
こういう認識をしてもらえると、そこそこ誰かに覚えて貰うことができる確率が高くなります。
ここまでいくと、大学でも先生でもない自分だけのブランドが少しずつできてくるのではないかと思います。
まとめ
以上、「ブランディング見るだけノート」を読んで、ブランディングは研究でも大事かもしれないと感じたアウトプットでした。
よい研究をしたからといって必ずしも評価してもらえるとは限らないなかで、研究と自分を知ってもらうための方法としてブランディングは大事だなと感じました。
- よい研究をしていると思うのに理解されない
- プレゼンを頑張っても「結局何がしたいの?」と言われる
- 学会とかで自分の研究や自分のことを知ってもらいたい
という悩みに対して、
- 研究を認知してもらうのにブランディングが大事だと思う理由
- ブランディングから学ぶ研究の伝え方
- 研究や自分を認知してもらう方法
について、本を読んで、ブランディングを研究に落とし込めるかもと思ったことについてまとめました。
ブランディングは感情的に訴えかける部分とのことで、論理的な考え方をする研究者とは真逆のように感じますが、ブランディングでやるべきことは、研究者が普段当たり前に行なっていることを当たり前にするだけのような気がしました。
今回のアウトプットでは、ブランディングを研究にどうやって落とし込むのかを考えてみいたものなので、自分自身どこまでできるかトライしていこうと思います。
コメント