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研究の熱にあてられて【2023年再生医療学会参加の感想】

Science Memo
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本記事では2023年3月23日〜25日に開催された「第22回 日本再生医療学会に参加した感想」についてアウトプットします。

4年ぶりのオンサイトでの参加ということで、オンラインでは感じるのが難しい、「現実空間で感じる熱」の刺激が強く、感化されたことを忘れないように綴って行きます。

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刺激を浴びるほど受けた

パンデミックを乗り越え、4年ぶりのオンサイトでの開催でした。

久々に現地参加した学会で、オンラインと違うなと感じたところは議論が連鎖して繋がるのが面白いと感じる部分でした。
質疑応答の時に、○○先生が発言されて、それを受けて△△先生が畳み掛けて、それを見た××先生が発言待機してるみたいな熱い感じ、これぞオンサイトの雰囲気!って感じで楽しかったです。

一応オンラインで毎年参加はしていましたが、改めて4年ぶりのオンサイトに参加して、これまで関わってきてた方々がびっくりするぐらい進んでおり、自分はこの数年間何してたんだ?と猛省しました。

企業にいるから出来ないこともあるのは仕方ないと言い訳して諦めてた自分が、進んでた方々の熱意を見て恥ずかしい気持ちでいっぱいでした。

そういう環境の中でモチベーションを維持することは難しいと言われています。
それでも自分には今の環境でやりたいと思えることがあるんだから、言い訳なんてせずに熱意を持って取り組まねばと反省しただけでも、現地参加した価値は十二分にありました。

AI時代で技術の価値が高まる

ChatGPTの話題がとにかく尽きないここ最近、自分も仕事でAIを作ったりと触れる機会があり、非常に興味がある分野です。

再生医療学会での講演でもAIを使った技術の取り組みが多かったように思います。

再生医療の製品を作るためにも、AIの活用(培養技術や観察技術などへ)が進んできていると感じる中、AIが発達してきて情報を得る事、扱う事の価値がだいぶ減るような気がしました。
特にコンサルとかの情報で完結してしまうような仕事の価値は減ると思います。

ただ、データの価値はより高まるのではないかなと予想しています。
その理由は、実際に自分たちの仕事にAIを使うとなると、自分たちが扱うものに合わせてチューニング(学習)をする必要があるためです。

機械学習ではありますが、簡単な予測モデルを作ってみて、いかに良質かつ膨大な学習データを得ること、持っていることができるかが重要なポイントでした。

ChatGPTが話題で、使い方、活用方法をみんな模索していますが、あのような他人が作ったAIは作った人の目的があり、その目的の中で最も有効な効果を発揮するものです。
そして作られたものは使い方を知ってしまえば、その人達の中で差は生まれない。価値が大きいものとは言えないものだと自分は考えています。

一方で、ものを作ることに使うAIでは、自分たちで自分たちの目的にあったAIを作る必要があります。
このときに重要なのが学習に使うデータになります。

ChatGPTでも情報の処理能力の高さとその影響力が垣間見えていますが、ものを作る領域においても、それに合わせたAIを作ることができればその領域においては他の追随を許さないほどリードできる力を持っていると思います。
このような状況において、AIを作ることができる学習データ。つまり積してきた実験データ、これから取る実験データは技術を発展させるための資源としての価値が、今まで以上に高くなると予想しています。
(データの質と量が研究開発の競争力を測る資源としての価値が今以上に大きくなるイメージ)

そして、上記のようなデータの価値が高まった場合、ものを作る事、ものを制御するような現実の技術の価値はさらに高まると考えます。
AIに学習させるためのデータという資源を生む役割を担うからですね。

さらに恐ろしいのが、その技術にもAIを掛け合わせられることです。

技術によって得たデータをAIを使って処理、解釈、フィードバックすることで、技術のブラッシュアップがこれまでとは比べ物にならないほど爆速になってしまうでしょう。
つまり、技術の発展がより加速するわけです。

AIを作るという方でも使いこなせないと技術の分野でも社会的に価値のある人材として生き残るのは難しくなるのかなと思います。

とりあえずこれから先の時代を生きるためには、AIを使うというのはPCを使うことのように一般的に当たり前になると思います。
PCを使えても、「使って何をするか?」という何かをする技術がないと使える意味が薄いように、AIと掛け合わせる技術がより価値のあるものになるでしょう
今でもコアになるオリジナリティのある技術の有無の差は大きいですが、その差がより開くような気がしています。

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専門家達の努力

再生医療の技術が実用化のために、安全性、安定性などなど、非常に厳しい検査をクリアする取り組みをたくさん聞きました。
新しい技術であり、前例が無いものだからこそ、「どこまで明らかにすればOKなのか?」というそれだけでも諦めたくなるような難しすぎる問題に向き合いながらとにかく進んでいる人たちばかりでした。

それこそ、本気で実用化に取り組んでいる人たちは、文字通り命を削っていると思います。

ここ数年、パンデミックの状況の中、専門家の声を信じない人、専門家のふりをして適当なことを言う人、そういう人たちをピックアップするメディアなどなどが溢れていたように思います。

今回の学会で、命を削りながら実用化の課題に取り組んでいる人たちの姿を目の当たりにして、専門家を軽んじるメディアや人々は本当に失礼なことをしているなと、改めて感じました。

日本の技術や研究が海外にどんどん差をつけられていることを問題視するニュースがありますが、こういう風習がその問題の一つなんじゃないかなと感じます。

そういう経験をしたことがない人や、知らない人が力のあるポジションに行けてしまうシステムをどうにかしないと変わらないのでしょうかね。

とりあえず、命を賭けて尽力している人たちの取り組みを少しでも知り、リスペクトを欠かさないことが自分に今できることなのかと思うので大事にしたいです。

自分は何がしたいのか

学会の講演で、様々なアカデミアの人と企業の人が一緒に挑戦する姿をたくさん見ました。

技術を作るにあたって、この先の時代では1つの組織だけでは太刀打ちできなくなる。というかもうなっているように思います。

じゃあどうやって他の人たちと一緒に協力できるか?を考えてみると、
良い技術を作る、持っているだけではダメだと思いました。

「この技術を使って何をしたいのか」という具体的な目的が大事なのかなと。
この目的の熱量、本気度、が共感してもらえるかどうか、一致するかどうか。

企業の良くない所として、新しい技術を作る時、「市場規模は?利益は?」をすごく気にします。
「良いもの」と言われていても、市場規模や利益が不透明だとGOサインが出ないほどに、重要な指標にしているところもあります。(弊社…)

新しい製品の市場なんてあるわけなくて、自分で作るか発展させるしかないのに…

それでも、新しい製品作りに賭けて市場を切り開く挑戦をしている企業もあります。
その熱量とか意識とか覚悟が一致して、初めてレベルの高い連携ができるんだろうなと感じました。

たくさんの講演で、挑戦する人たちの熱に当てられて、ここ1年ほど後ろ向きな企業の姿勢の中で気持ちが燻っていました。
この燻りをどうにかするためには、まずは自分の周りから自分の熱量を分かってもらわなければ…と。
そうやって周りを動かしていって初めて新しい市場開拓の挑戦をしている人たちと同じ土俵に立てるのかなと感じました。

自分にはその熱量はある…はず!

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この分野に貢献したい

初めて再生医療学会に参加して、実は10年ほど経ちました。
約10年、楽しくて大好きと思える研究分野ですが、ガートナーハイプ・サイクルで例えると、「過度な期待」のピーク期を越えて落ち込んだ、幻滅期から啓発期を迎えているようなフェーズに来ているようで、前ほどの話題の盛り上がりがなくなったところは悲しく思います。

論文の調査とかをしていても、特に国内の技術を作る研究は減ってきているように感じていて、実用化のところにかなり集中と選択されている気がします。

もちろん実用化して前例になるものを作らなければ日本ではなかなか期待を取り戻すのが難しいですし、発展するか否かの分岐点になっていると思うので実用化も大事な部分です。

ただ、実用化したあとに続く技術が日本だとなかなか育っていないように感じます。
細胞を使って組織を作る研究は日本では減っているものの、海外では3Dプリンターなどを用いた研究を積極的に取り組んでいます。
Organ-on-a-chipなどのMPS(Microphysiological system)についてもやはり海外のほうが積極的に取り組まれており、日本は後追いしている状態です。

自分は医学出身ではないので、臨床という今取り組まれている重要なところでは役に立てませんが、次に続く製品を作る技術という所で貢献したいです。

と言うか、それをするためにアカデミアを離れて企業という立場で取り組むと決めたので、ここを突き詰めようと再認識しました。

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