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【Weekly Report14】iPS細胞で育毛成分を探索、AIで食道がんの治療予測、腎集合管オルガノイドで難病治療薬を探索

Weekly Report
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今週気になった論文や研究の話題についてのアウトプットです。
主に再生医療・組織工学、培養肉、AIの研究が中心。

今週(2023.12.4〜12.10)気になった研究・話題は以下の通り。

  • iPS細胞で育毛成分のスクリーニングをする研究
  • AIで食道がんの治療予測をする研究
  • 腎集合管オルガノイドで難病治療薬を探索する研究
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iPS細胞で育毛成分のスクリーニングをする研究

薄毛の悩みは死活問題と言っても過言ではないので、再生医療による髪の毛の再生の研究が注目を集めていますね。

株式会社ミルボンと大坂効率大学の共同研究で、iPS細胞を使った育毛成分の探索についての研究が興味深かったです。(日本の研究.com

一言に再生医療と言っても、細胞を移植するだけでなく、因子などを投与して細胞を活性化させることも再生医療と言えるので、これも立派な再生医療の研究になるのではと思いました。

内容は

  • iPS細胞に植物エキスを添加、毛髪形成に関する遺伝子(KRT31)の発現量を確認
  • 2種類の植物エキスがKRT31の発現を増加させた。
  • 植物エキスをヒト頭皮から採取・器官培養した毛根の組織に添加して培養すると、エキスを添加した組織で毛髪を伸張させた。
  • 実際にヒトにも使用してみたところ、髪の毛の太さが増加し、抜け毛の本数も減少した

というもので、植物エキスが効くというのも驚きですが、分化前のiPS細胞で行ったスクリーニングが有用であったという点が非常に興味深かったです。

iPS細胞を用いた薬の研究において、細胞を分化させるステップが結構厄介で、時間もかかるし、良い品質の細胞は少量しか入手できなかったりします。

そんな中、創薬研究でも毒性評価をするときに分化させずに、ES/iPS細胞のまま薬を添加し、遺伝子の変化を追うことで毒性を予測するという研究があります。PubMed
この研究もまさにこれに類するものだなと感じました。

iPS細胞を分化させずに評価する方法がより確実なものになれば、薬の薬効や安全性を低コストに評価できて魅力的ですね。

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AIで食道がんの治療予測をする研究

食道がんの治療は、化学放射線治療と手術を組み合わせる手法が一般的な方法の一つとされています。
このとき一部の患者は化学放射線治療のみで治ることがあるようで、手術をしたけどがんが消えていたということもあるとのこと。

事前に化学放射線治療でがんが消失していることが分かれば、手術をしなくても良くなるということで、AIを使って予測するモデルの開発に取り組んだ研究が興味深かったです。(日本の研究.com

内容は

  • 食道がん患者のCT画像、PET画像、占領分布から画像特徴を抽出。
  • AI(決定木、サポートベクターマシン、k近傍法、Random Subspace Ensemble、ニューラルネットワーク)を使って学習させ、がんの消失の予測モデルを作成
  • 汎用的な予測モデルとするために他施設のデータを混ぜて学習することで、予測精度が86%を達成

というもので、使用する画像の種類、AIのアルゴリズム、施設間の違いが良いモデルを作るために重要ということが示されていて、予測モデルを構築するに当たって非常に参考になる研究でした。(PubMed

1施設のみのデータで学習させた予測モデルを他施設のデータに適用すると極端に予測精度が落ちてしまったが、複数施設のデータを混ぜて学習することで予測精度が改善された点について、
施設によって画像を取得する装置や治療に関する情報の違いによる影響と考察していて、同じようにやっているようでも、施設間差の違いは本当に大きいのだなと感じました。

細胞を使った実験も施設間での再現性を担保するのがすごく大変な経験をしていることもあり、どの分野でも大変なんだなと。

AIの手法もたくさんあり、どれが良いのかというのも結構議論になりますが、この研究を見ていると目的と使用する画像と手法の組み合わせ次第なのかなと思うこともあり、ひとまずリソースが許す限り試してみるのが良いのかもしれませんね。

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腎集合管オルガノイドで難病治療薬を探索する研究

iPS細胞から腎集合管オルガノイドを作製、多発性嚢胞腎という難病のモデルを構築し、スクリーニングをして治療候補薬を見つけた研究が面白かったです。(日本の研究.com

オルガノイドを用いた薬の評価方法について開発が進められてきていますが、この研究は新規のオルガノイドの培養方法からハイスループットスクリーニング法、さらにはオルガノイドで見つけた薬を疾患モデルマウスに投与すると治療効果が確認されたという、一連の工程をこなした非常にボリュームのある研究でした。PubMed

内容は、

  • iPS細胞から腎臓の集合管というネフロンを構成する一部位のオルガノイドを作製。
  • ゲノム編集を行った細胞を使い、多発性嚢胞腎を再現するオルガノイドを作製することで、疾患の開始メカニズムを解明。
  • ハイスループットスクリーニングの評価系を作り、治療候補薬を探索した結果、レチノイン酸受容体作動薬が有効であることを発見。
  • 疾患モデルマウスにレチノイン酸受容体作動薬を投与すると治療効果が認められた

というもので、オルガノイド形成方法の確立、疾患の解明、治療薬の発見と一つの論文でここまでやり切るのかと驚いた研究でした。

これまでも集合管オルガノイドを作製し、治療候補薬の探索を行った研究は行われていたそうですが、オルガノイドではそれらしい結果が出ても、動物モデルではその有効性が確認できなかったそうで、この研究ではそこが解決できている点がすごいですね。

また、従来のオルガノイドの培養方法だと疾患の特徴を持ったオルガノイドを作る再現性が高くなかったようですが、この研究で開発した手法(拡大培養時に6週間以上培養する)では、確実に疾患の特徴が発現するようなところもすごいですね。

オルガノイドの培養は複雑というのはプロトコル集を見ていて実感しますが、この研究の方法も、マトリゲル上に播種しては単離してを繰り返したりしていて、よくこの実験で再現性を取れたなと驚嘆するぐらい、培養期間が長く手順も複雑でとにかく読んでいて引くぐらいのプロトコルをやり遂げたのがすごすぎる研究でした。

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