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研究テーマの決め方についてバイオ系研究者が考えてみた

研究の姿勢
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本記事では、研究テーマの決め方もとい作り方についてバイオ系研究者として考えてみたことをアウトプットします。

研究テーマはどうやって作るの?

という疑問について、

放任主義の研究室で育った私なりの研究テーマの作り方について考えたことを解説します。

ポイントは下記の3つです。

  • 目的を明確にする
  • 技術の選定
  • 期間を決める

一応この方法で大学院の5年間で数報の論文や特許になるテーマは作れているので、一つの考え方として参考いただけると嬉しいです。

また、テーマの決め方については研究室ごとで異なり、だいたい下記の4つに分かれていると思います。
本記事では3, 4の放任主義な研究室に属した人向けだと思います。

  1. 教授がすべて決める。
  2. 教授が大枠を決めて、詳細は指導教官と決める。
  3. 教授が大枠を決めて、詳細は自分で決める。
  4. 研究室のテーマから外れなければ何してもいいよ。

研究テーマの作り方の本質は、「問題点の把握」「合理的な解決方法の選択」「費用対効果」と考えています。
一般的な社会でも十分通用する能力だと思うので、自分なりのテーマの作り方を身につける参考になれば幸いです。

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目的を決める

まず考えるべきはその分野の最も大きなゴールを知ることです。

次に、今のその分野の最先端はどこにあるのかを確認します。

ゴールと最先端の間にはどのような課題が散りばめられているのかを考えます。

この課題こそが、「達成すべき達成されていない課題」=「新規性があるもの」というのが一つの考え方だと思います。
新規性には色々捉え方があるのでこれが全てではないですけど。

その課題の中で自分が取り組みたいものは何か、候補を選びます。

研究の始まり(原点)から最先端までの歴史を示すことで、背景を整理します。
課題の重要性の説得力をつけることができます。

使う技術を決める

目的を決めたあとは、目的を達成するために必要な技術を決める必要があります。
決める技術は主に2つと考えます。

  • 研究室の独自技術
  • 既存の技術

研究室の独自の技術

これは一つのオリジナリティとして確立しているものなので、かなり便利です。
その研究室に所属している醍醐味でもあります。

一応、他のところでは使っていないものなので、この技術を使って得られた新しい結果はある程度新規性が担保されていると言えます。
ゴリ押しですが、多少合理性に欠けていても(他にもっとスマートな解決方法があるかもしれないけど)論文として通すこともできます。ゴリ押しですけどね。

既存の技術

これは新規性はありませんが、様々なところで既に使用されている技術は信頼性があります。
つまり、その技術を使うことの妥当性やその技術の信頼性を新たに示す手間は省くことができます。

とは言っても、コントロールの置き方だったり、データの解釈の仕方については技術や経験が必要なので、既存の技術を使うから楽と言うものではありませんが。

これは自分が今置かれている環境で使えるものをまず選択することをおすすめします。
新規に立ち上げる手もありますが、試薬や装置の導入のお金と初期検討の手間がものすごくかかるので、あくまで最終手段のような気がします。

使う技術を決めることによって、研究に必要な「お金」と「時間」の目星をつけることができます。

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余談:アイデアのつくり方

これまで記してきた、目的を決めたり、達成絵売るために必要な技術を決めたりすると言うのは、つまるところ「アイデアを出す」ということです。

このアイデアの出し方については良書があり、私も6年ぐらい愛用しています。
それが「アイデアのつくり方」です。
「60分で読めるけど一生あなたを離さない本」というキャッチコピーに恥じない良書です。

目的や技術の選び方について参考になるアドバイスが書いてあるので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

書籍情報

「アイデアのつくり方」、ジェームス・W・ヤング 著、今井茂雄 訳、竹内 均 解説、株式会社阪急コミュニケーションズ

実験の期間を決める

特に学生や任期付きの立場だと期間の意識がとても大事です。
卒業論文が完成しなかったら卒業できませんし、修士・博士論文ができなかったら修了できません。
そして、ポスドクなどは論文ができなければ就職活動が不利になるばかりです。

期間の目安

学部生は1年しかない上に、就職活動や院試を考えると実質1年もありません。
修士課程は2年もあるように見えて、就職活動や博士課程進学の準備があると実質2年もありませんね。
と言う感じで、思っているほど期間は長くありません。

そのことを踏まえて、実験の期間を決める必要があります。
この時に、研究の全ての過程を全て見通して期間を決めるのはプロ級なので、そう簡単にはできないと思います。私もここはまだまだです。

判断基準として、一つの小さな結果が出るのにどれぐらい時間がかかりそうかが有効だと思います。

例えば細胞培養であれば、
・実験の準備にかかる時間(前培養とか)
・本実験で細胞を培養する日数
・解析にかかる日数
が考えられます。

この中で、本実験で細胞を培養する日数が半年もかかる系なんてものもありますが、かなりリスクは高いと思います。
特に、細胞培養で分化という細胞の種類や形態の変化を扱うものは、技術習得に時間がかかったり、培養に時間がかかるものが多いです。

いくら興味があったとしても、短期的な実験と長期的な実験をうまく平行しながらできる慣れた人でないとなかなか厳しいと思います。

と言う感じで、やりたくても現実的に厳しいものもあるし、やるならそれなりの覚悟が必要なこともあります。
このような理由で、本当にやりたい実験の期間的なハードルが高い時、我慢するか、ゴールを小分けにできないか、覚悟を決めてやるかは本人の納得次第だと思います。

研究費の申請も期間の意識は大切

中には、学術振興会特別研究員の申請や小さなプロジェクトの申請に出す人もいると思いますが、この時も研究の時間感覚は大事とされているようです。
だいたい上記のような小さなプロジェクトなどは期間が2~3年と決まっています。
なので、この期間内で達成できる目標設定をすることが大事です。
どれだけすごいテーマでも期間内にできないようなものは評価されません。
というより評価することができませんね。
期間内に達成できることを考えることも研究遂行能力として大事なポイントだと思います。

お金については、正直なところどれだけ立派なテーマを作っても研究室次第ということがあります。
裕福な研究室であれば、何不自由無くさせてもらえますし、そうでなければちょっとした試薬でもなかなか購入してくれないこともあります。
いかにトップを説得できるかが鍵ですね。

また、自分で研究費を獲得してくるということもできます。
数十万円の少額のものであれば学生でも応募できるものがあったりします。
テーマに自信があればぜひ応募してみてはどうでしょうか。

その他

成果が与える影響は忘れずに

ただ誰も達成できていない課題を達成するというのは十分新規性なのですが、忘れては行けない大切なことがあります。
それが、達成したときの成果が周りに与える影響です。

これが達成されたことによって「何ができるようになるのか?」「何が変わるのか?」ということです。
よく研究者が言われて悶々とする「何の役に立つの?」という答えははじめから用意しておく方が間違いないでしょう。

企業の研究の場合は、成果によって作れるモノの、市場に与える影響誰が使うのかどれぐらいの利益を産むのかという少し限定された、大学の研究より小さな部分で考えるのが良いのかなと考えています。

保険を作っておく

失敗した時や上手くいく見込みがなくなった時のプランBとかプランCの準備は個人的には必要だと思っています。
これは作るのは結構簡単で、目的から枝分かれさせることで作ることができます。

枝分かれさせるために必要な要素は「技術」「視点」だと思います。
課題A1に向かう方法も1つではなく、使う技術、見方によっ様々なルートがあります。
また課題A2に迂回した方がA1を突破するよりも課題Bに行くことが実は簡単だったりすることもあります。
課題A3を経由しようと思ったら、思いもしなかった結果が出て新たな道ができたりすることだってあります。

ただ注意と言うか自戒として、やりたいテーマを作りすぎて、なんでもかんでも手をつけないことは大事です。
失敗の不安にかられて、同時に複数テーマを実行しようとしても、人間は限界があります。
また一つのテーマへ割く労力が減ることは、達成確率が低下するという見方もできるので、私の経験的にはどんなに多くても3つが限度だと思います。

先行研究を調べ尽くす

私の師匠曰く、論文のデータベース(医学系やバイオ系なら「PubMed」)やGoogle Scholarなどと1日中にらめっこする日も大事だそうです。

これは上記の保険を作っておくで記した「技術」「視点」を身につける作業です。
常に自分の分野にアンテナを張っておくこと、その他分野の技術が意外とハマって思わぬ解決方法が出てくるなど、知識と情報はどれだけあっても無駄にはなりません。

また、最先端を知る方法の一つとして、学会に行く手もあります。
まだ研究を始めたばかりの人は、論文を読むのも大変ですが、学会に行けばなんとなくでもその分野のまだ論文になっていない情報も多く得ることができます。

学部生は無料で参加できる学会もあるので、ぜひ利用してみてはどうでしょうか。

テーマの進め方は常に修正する

これも私自身の自戒でもありますが、完璧なテーマ設定なんて不可能です。
自分でかなり調べ尽くして作ったテーマだからこそ自信があるものの、研究の世界なんて常に予想外が起きるのは当たり前です。

また、全てを調べ尽くすことも難しいので、自分が本当に間違っていないのかは常に疑った方が良いです。
研究室の人や、学会で指摘されたことについては自分の意地をはらずに一度謙虚になって見直して、その時々で修正をかけることが大事だなと思います。

私自身、意地を張って結局間違えたまま進んで達成できなかったテーマは今でも若干トラウマです。

ゴール地点は正しいか。ゴールにたどり着くための道筋は合理的かを常に問い続けることがデーマを作り、達成する上で大事だなと思います。

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まとめ

以上が、研究テーマの決め方もとい作り方についてバイオ系研究者として考えてみたことのアウトプットでした。

研究テーマはどうやって作るの?

という疑問について、

ポイントは下記の3つだと思います。

  • 目的を明確にする
  • 技術の選定
  • 期間を決める

一朝一夕では身につかないですし、身につけたからといって百発百中で成功する研究テーマを作ることはできない能力だと思います。

日々常に意識して、修正しながらようやくそれっぽいものができてくるようなものだと思うので、自分でテーマを考えなくても良い環境でも、考えなくてはいけない環境でも常に意識しておくのが大事だと思います。

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