本記事では「実験医学 2021 12月号」を読んだ感想をアウトプットします。
最新の生命科学、医学の情報がわかりやすくまとめられた雑誌です。
おそらくバイオ系医学系の研究室には常備されていると言っても過言ではないくらい有名な雑誌ですね。
12月号の実験医学では、
- バイオDXについての特集
- ノーベル生理学・医学賞についての解説
- 2光子励起ライトシート顕微鏡
- C型肝炎ウイルス発見の舞台裏
などなど、今月号もとても面白く、勉強になる記事がたくさんありました。
「実験医学 2021年12月号」を読んだきっかけ
大学から離れて、バイオ系の研究の世界の情報にアクセスするためのツールとして購読する価値が大きいなと思い、2021年11月号から購読しました。
前回(11月号)の感想記事はこちらです。
12月号で特に私自身面白いと思ったのが下記の内容です。
- バイオDXについての特集
- ノーベル生理学・医学賞についての解説
- 2光子励起ライトシート顕微鏡
- C型肝炎ウイルス発見の舞台裏
「実験医学 2021年12月号」を読んだ感想
バイオDXについて
DXとは
まずは、「バイオDX」の「DX」とは何か?についてです。
DXは「Digital Transformation」の略称とのことです。
DXの定義としては、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを元に、製品やサービス、ビジネルモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確率すること」経済産業省、DX推進ガイドライン
とのことで、おそらくバイオDXとはデータとデジタル技術を活用して、バイオの分野を発展させようという取り組みだと認識しています。
ちなみに「Digital Transformation」の略称が、DTではなく、DXな理由として、「Trans」は交差の意味があり、交差を1文字で表すと”X”であること。DTは別の意味がすでに当てられているということ。
といった理由からDXが使用されているようです。
バイオDXについて
『バイオDX(デジタルトランスフォーメーション)』による科学的発見の追求
という2021年度の戦略的創造研究推進事業の戦略目標の一つとして掲げられたようで、国をあげての取り組みのようです。
実際のバイオDXの内容としては、生命科学のハイスループット化によるデータ蓄積や公共データベースの発達による背景のもと、必要なデータを抽出、解析するデータの利活用というものがあるそうです。
論文投稿時に解析に用いた遺伝子の情報などをデータベースに登録することが求められることが多いそうで、そういったデータを有効活用しようという取り組みがされいます。
応用例として、
- 遺伝子発現データから新規の遺伝子の発見
- RNA-seqデータから新規ウイルスの探索
- 採集が大変な昆虫の研究で、データベース情報から、トランスクリプトームの解析
- ゲノム編集でのターゲットの選定の迅速化
- 高価なイメージング技術のオープンアクセス化
- 膨大になる公共DBの情報の解析方法の開発
- AI創薬
などなど、最近話題のデータサイエンスが本格的に進んでいるように感じました。
これらの研究のメリットは、自身でウェットな実験をする必要がないため、どこでもできるということが挙げられていました。
これまで地道にウェットの実験をしてきた人たちがいたからこそ可能な研究だと思います。
また、これからも新しいデータの蓄積や結果の検証のためのにはウェットな実験は必要になるので、データ駆動型を過信してウェットな実験のウエイトを減らしても良いというわけでなはいことには注意だと感じました。
ノーベル生理学・医学賞についての解説
2021年のノーベル生理学・医学賞では、「温度・触覚の受容体の発見」について、David Julius博士、Ardem Patapoutian博士が受賞されました。
発見された受容体は
- TRP (Transient receptor potential)チャネルという温度感受性のチャネル
- Piezo1, Piezo2という機械刺激の受容体
関節の曲がり具合や、筋肉への力の入れ具合などの、自身の運動や体の位置の感覚に関わっている重要な受容体とのことです。
物理刺激の感知のメカニズムについて、受容体分子が未解明であったこと、これらの受容体の発見で大きく研究が進んだことが評価されたそうです。
感覚制御の研究や、鎮痛薬開発が進むことが期待されています。
私自身、何となくの受賞背景と、何となく内容を知っていた程度でしたが、どれほどすごいことなのかについて、実験医学の記事ではとてもわかりやすく解説されており、勉強になりました。
なぜノーベル賞を取るほどの研究だったのかやどんな苦労があったのかなど、の詳細を知りたいけど、どの媒体を見たら良いか分からないという人におすすめしたい記事でした。
2光子励起ライトシート顕微鏡
2光子励起ライトシート顕微鏡についての記事も非常に面白かったです。
ライトシート顕微鏡といえば、透明化した3Dの生体や組織を観察するための装置として、個人的にとても注目している技術です。
これまでの共焦点レーザー顕微鏡では、レーザーを走査することで1枚の画像を作るものに対して、ライトシート顕微鏡は、レーザー光をシート状に広げることで、立体物を一気にスキャンする方式になっており、立体物の撮影速度が非常に速いことが特徴だと思います。
ただ、ライトシート方式は、2光子励起のシステム(生きたまま、深いところまで見やすい)とは相性が、悪く、視野範囲が狭くなるデメリットなどの課題があったとのことです。
それが、光学ユニットの改善を行うことで、これまで600μmだった視野範囲を1000μmまで大きくすることができ、さらには、2〜3μmの軸方向の分解能を持つことができるようになったとのことだからすごいです。
メダカの全身を生きたまま細胞レベルで観察できたり、発生の現象も光毒性などで阻害することなくタイムラプス撮影することができたりしたとのことで、これからの応用が期待される技術だなと思いました。
何より使ってみたい!!
C型肝炎ウイルス発見の舞台裏
C型肝炎ウイルスの発見もノーベル賞を受賞した研究ですが、その舞台裏についての解説記事も面白かったです。
ウイルスのcDNAのクローン化を行う必要があったけど、PCR装置がない…じゃあ人力でやるしかない!
といって、それぞれの温度に設定した水槽を用意して、時間を測りながらサンプルを水槽に移して行くことで、PCRをするという、PCRをやったことがある人ならば誰しもが1回はできるのでは?と思ったことをやってのけたそうです。
そしてその結果が発見に大活躍したものであったとのことだからすごいの一言につきますね。
まとめ
以上、「実験医学 2021 12月号」を読んだ感想のアウトプットでした。
12月号の実験医学では、
- バイオDXについての特集
- ノーベル生理学・医学賞についての解説
- 2光子励起ライトシート顕微鏡
- C型肝炎ウイルス発見の舞台裏
が個人的にとても印象に残る記事でした。
生命科学や医学の世界についての情報に幅広く知ることができる素敵な雑誌だなと思います。
そして、この情報を通して、考えたこと・思ったことから、「自分はどうする?」を考えさせられる良い時間になるなと思いました。
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