本記事では、「バイオ系研究者にとってiPadはノートパソコンの代わりになりうるか」について検証してみたことをアウトプットします。
iPad1台で
- バイオ系研究者として研究活動はできる?
- プログラミング(Python)はできる?
- ブログはできる?
という3つの項目を検証しました。
結論は、軽い作業やちょっとしたことであればiPad1台で済んでしまうポテンシャルは秘めています。しかし、「iPadはiPad、ノートパソコンはノートパソコン」得意不得意はもちろんあるので、使い分けることが最高効率でした。
研究者ならば素直にノートパソコンという仕事道具を肌身離さず持ち歩き、+iPadによって最高効率で仕事をした方が捗りそうです。
iPadがノートパソコンの代替となる可能性を秘めたiPadOS
そもそも「なぜiPadがノートパソコンの代替になるのか」について、2019年秋に発表されたiPadOSが注目されています。
Apple自身も
どんなコンピュータにも似てないコンピュータ
引用:Apple公式HP https://www.apple.com/jp/ipad-air/why-ipad/
なんてことを言っており、AppleもiPadは既存のコンピュータに代わる立ち位置だよ、とアピールしている気がしますね。
私自身も「iPadはノートパソコンの代替になるのではないか」とても期待していました。
薄くて軽くてすぐに起動できて、ノートパソコンに負ける要素がどこにも見当たらなさそうです。
ちなみに私がiPadOSに期待していた項目は下記の5つ
- PCの代わりとしてがっつり作業できる
- PCよりも軽くフットワークが軽くなる
- SafariでPCと同じブラウザが使用できるので、Webサービスが使いやすくなる
- USBメモリが使用できる
- マウスがつかえるようになる
この期待について検証したので、詳しく見ていきましょう。
iPadをノートパソコンの代わりにするアイテム
今回のiPad1台で全てをこなすことを検証するために用意したアイテムは下記の3つです。
- キーボード
- マウス
- USBアダプター
キーボード
使用したキーボードは
- Apple純正キーボード MagicKeyboard(日本語配列)
- 折りたたみキーボード Ewin(英語配列)
どちらもBluetoothで接続でき、薄くて軽く、iPadと非常に相性が良いキーボードです。
MagicKeyboard
Magic KeyboardはiPadOSよりずっと前からiPadで使用していたもので、持ち運ぶに当たって、自作キーボードケースを作って活用しています。(過去記事でアウトプットしてます!)
普通のキーボードなので使いやすく、どこでもがっつりタイピングできます。
何より、iPadでBluetoothキーボードの日本語配列に対応しているのはMagicKeyboardだけなので、配列にこだわるのならばこれ一択な気がします。
ちなみに、Smart Keyboardも気になっていますが、高い、キーが小さい、ストロークが浅い、タブレットとして使うときに重いなどのデメリットが目立つので避けてしまいました。
Smart Keyboardも使ってみたい…
Ewin
Ewinは安めの折りたたみBluetoothキーボードですが、Amazonでなかなか評判がよかったので購入しました。
キーの押しごこちは普通のキーボードと遜色なく、持ち歩きやすいと欠点が見つからないくらい良いキーボードでした。
英語配列なところと、日本語英語の切り替えがMagic Keyboardのように1ボタンでできないアプリがある(Caps Lockで1ボタンで日英切り替えできますが、Googleドキュメントのアプリでは使えない)という2点のみ残念です。
(これはMagic Keyboard以外のキーボード全てのデメリット)
どちらも非常に使いやすく、
- がっつり作業をする予定の時は「Magic Keyboard」
- ちょっとお出かけする時は「Ewin」
という感じで使い分けていました。
マウス
マウスについてはどれを使うか悩みに悩み抜いた結果、「Logicool MX Anywhere 2S」を購入しました。
Bluetooth接続かつ、レーザー方式で場所を選ばずに使用できることがiPadのどこでも使えるというコンセプトに一致していると感じたためです。
(本音は、もし使いにくくても、自宅のPCやMacBookで使用できるから無駄にならないだろうという言い訳)
- 3機まで登録できる
- 小さく、持ち運びが楽
- レーザー方式でどこでも使える
- 充電バッテリー式
というメリットを持っている非常にモバイル性に優れたマウスです。
こんな感じのケースに入れて持ち歩いています。(遥か昔、無印で購入したポーチ)
キーボードを使用する時、どうしても画面まで手を伸ばすのがしんどかったのですが、マウスを使えるようになって、手の移動がキーボードからすぐ横のマウスまでになり、とても快適になりました。
USBアダプタ
純正のものを購入しました。(高い…)
私は研究室、自宅、出張先の全てで研究作業をするので、ポータブルSSDにデータを全て管理し、各場所のPCに繋いで使用しています。
iPadでも作業するに当たってデータを保管しているSSDを接続する必要があったので、とりあえず安心と信頼の純正にしました。
と言うことで、iPadノートパソコン代替計画を進めるための役者は揃ったので、実際に使えるか見ていきましょう。
iPad1台で研究活動はできるか?
研究活動といえば、
- 論文読む
- Officeソフトで資料作成
- データの整理
が代表的ですね。解析はハナから期待していないので上記3つでいきます。
論文を読む
iPadを研究活動に応用するのは、過去記事でも紹介していますが、こと論文を読むことについてはノートパソコンを超えています。代替どころか、むしろiPadでないと論文が読めない体になりつつあります。
論文については、読む、書き込みは「GoodNote」、論文ノートは「OneNote」というアプリを使っています。
また、論文管理はこちらの記事で紹介しているように、iCloudで管理しています。
Officeソフトで資料作成
やはり研究といえば、Wordで文章作成、論文執筆、PowerPointで発表資料作成、Excelでデータまとめなんかが主流ですね。
iPadでOfficeソフトを使用するには、Office 365(サブスクリプション制)を購入する必要があります。Amazonでサイバーマンデーセールで非常に安く購入したので、買い切りよりはトータルで安く済んでいるかな?と感じます。
実際に使用した感じを見ていきましょう。
Word
Wordは文章をひたすら打ち込んでいくだけなので、そこまで不便は感じなかったです。普通のWordだと思います。
ただ、入力方式とファイルの共有について少々気になるところがありました。
入力形式についてはiPadOSのキーボードからの入力はスマホと同じなので変換がPCと全然違う挙動をし、慣れるまで非常に時間がかかりました。そしてPCで作成した文章の続きをiPadで作業しようとすると、レイアウト崩れを起こしてしまうので、本格的な文章作成として使うにはまだまだな気がします。
PowerPoint
正直なところ、0から作り始めるのはとってもしんどかったです。マウスが使えるとはいえ、操作性はパソコンに比べて圧倒的に使いにくいです。図形の挿入で曲線などが使えないため、パワポ職人のような図形の作成は難しいです。
ただし、既にできているものを修正する、発表練習に使う、ポスターで補助資料を使う分にはパソコンよりも優秀でした。
使い方としては、PCでがっつり作成をする→隙間時間にiPadで修正・発表練習と言う感じだとものすごく使いやすかったです。
Excel
これも0から使うには使いにくいです。グラフについては一応は作成できるものの、後からデータの追加などが難しかったり、色の設定なんかも自由にできないので、普段使っているこだわりのフォーマットがある人にとってはこの上なく使いにくいように感じます。
しかし、閲覧する分にはあまり問題ないのと、関数なんかは結構使えるので、ちょっとした作業なんかはPCと同等に使用することができます。
USBメモリ、HDD、SSDについて
USBメモリはある程度は使えます。データやファイルをぶち込んでいつでもどこでも快適作業が可能です。iCloudとの住み分けとしては、オンライン環境が確保困難な場所で活躍してくれます。
HDD・SSDについては、しっかり考えないと使いにくいです。
私のせいなのですが、研究室と自宅PCはWindowsでノートパソコンがMacということで、SSDのフォーマットをWindows仕様のNTFSにしており、Macでは通常では使用できません。でも、「NTFS for Mac」という神ソフトを使えばMacでもNTFSのSSDやHDDが使えるんですね!
と、どやっていたのが仇になりました。
iPadはNTFSに対応していません。
素直に、Mac対応の「APFS」か両方対応の「exFAT」であればUSB同様に使用可能とのことです。
ただし、USBアダプタ単体では電力の供給が不足するために、USBアダプタを電源に接続した状態でないと安定しないことがあるそうで、正直モバイル機としてどうなのかと思うところはあります。
小まとめ
iPadを研究活動でPCの代替として使用できるか、検討してみたり調べた私の結論は「中途半端すぎてiPad1台では使えない」でした。
いいところは下記の3つ
- マウスが意外と便利でキーボードと相性が良い
- 論文読むのはPCよりも快適
- 修正や確認などのちょっとした作業はPCと同等かそれ以上
イマイチのところは下記の3つ
- Officeのソフトは中途半端すぎてこれ1つだけでは十分に使いこなせない
- アプリ依存すぎて自由度が低いため、研究のような柔軟な対応が必要な時に力不足
- USBやSSD・HDDが使えるようになったけれど、制約が多くてモバイル機としての機動力というメリットを活かしきれていない
という感じで、イマイチなところが割と致命的なところが多く、なんとかやりくりをするレベルではないくらい不便に感じるので、iPad1台で研究活動は正直厳しいと感じました。
ただし、論文やノートとして使用する分にはPCを超えているので使い分けが大事だと思います。PC1台よりも、PCとiPadを併用することで最大効率が完成します。
iPad1台でプログラミング(Python)はできるか?
iPadでPythonをするためのアプリ
iPadでプログラミング(Python)をやるに当たって導入したアプリがあります。
それが「Pythonista3」です。
これは有料アプリ(1200円ぐらい)なのですが、インストールするだけでiPadにPythonの環境を用意することができます。私はまだ使いこなせていませんが、iPadでここまでやっていいのか!?と言われるぐらい素晴らしいソフトだそうです。
私もPythonの導入部分の基礎についてはPythonistaを利用して勉強していました。本当によくわかっていない初心者でもコードを入力するだけで簡単に動かすことができて便利でした。
ただし、pythonistaでは利用できないライブラリもあるそうなので、いろいろやりたい中級者以上には物足りないのではないかなと感じます。
iPadでVScodeをオンラインで使用できる?
私は現在、過去記事で紹介したようにMacでVScodeを利用した環境を構築して勉強していますが、やはり同じ環境が使えないと少々不便に感じることがあります。
VScodeもオンラインでどこでも同じ環境で利用できるサービスが動き始めているそうですが、有料だったりと、少し勉強するぐらいで使用するには高いかなーと感じてしまします
参考書を開くのに最適
プログラミング初心者で必須なものが「参考書」だと思います。
最近はWeb上でもわかりやすく解説してくれていることもありますが、まとまった知識を学習する際には「参考書」が便利です。
ただ、移動の時に参考書を持ち歩くのは重いし大きいし大変です。
ところが、「Kindle」を利用してiPadで参考書を管理すれば、いつでもどこでも、たくさんの参考書をiPad1台で管理できます。
デュアルディスプレイで作業が超効率化するとも言われていますね。
iPadで参考書やWebページを開き、PCでコードを打つということで、外出先でも簡単にデュアルディスプレイ様の環境で勉強することができます。
小まとめ
プログラミング初心者の私がそこまで大きなことは言えませんが、iPadでプログラミングは本当に始めたての初心者の勉強用には十分すぎる反面、自分で環境が用意できるようになってきた初心者にとってはいつもと同じ環境でできない分辛いところが多いなと感じてしまいます。
やはりここでもアプリという性質が足を引っ張ってしまっているように思います。
中〜上級者であれば、Pythonistaという制限がかかった環境でもあの手この手でなんとかしてしまえるのかもしれませんが…
と言うことで、iPadでプログラミング(Python)は勉強中の初心者には厳しいという結論でした。ただし、参考書を管理・閲覧する端末として利用する分には非常に便利です。
iPad1台でブログはできるか?
iPadでブログを書くアプリ
普段から、いつでもどこでもブログを隙間時間に書けるように「Googleドキュメント」のアプリを使用しています。
Apple純正のメモ帳でも良いのですが、Windowsマシンでも使うことがあるので「Googleドキュメント」を使用しています。
ブログ記事の更新は、「Wordpress」アプリでは使用できないブロックなどがあるため、ブラウザで更新しました。
そして、アクセスの解析系では「WordPress」「Google アナリティクス」を使用しています。
iPadでブログは書けるか?
これは「研究」「プログラミング」と異なり、iPad1台で十分にこなすことができました。
基本的にはただ文章を書くだけですからね。
「Googleドキュメント」で下書きをし、iPadOSによってPCのブラウザと同じ表示形式を使うことができるようになった「Safari」で記事を作成し、画像に文字入れし、ショートカットで画像調整をし、投稿するという一連の作業を全てiPadで行うことができます。
唯一イマイチな点としては、前述した通り、iPadの文字入力が慣れないとなかなかしんどいと言うところです。
その点を除けば、ブログであればiPadだけで十分だと感じました。
小まとめ
「iPad1台でブログは書けるか?」という問いについては、iPad1台で十分こなすことができました。
ただ、基本的に移動中にiPadでブログを投稿するときは、カフェやホテルで腰を据えて行うことが多く、研究者にとってはその移動中というのは、出張の電車や滞在ホテルになることが多いです。つまり、「基本的にPCも装備している」ので、腰を据えてやるのであればPC使った方が早いのでは…という本末転倒な感じになりました。
iPadだけ持って少しお出かけすることがほぼないので、使えるけれど使わないことが多い気がします。
まとめ
以上、「iPadはノートパソコンの代わりになるか検証してみた」ということで、バイオ系研究者としての立場で検証しました。
検証して感じたことは、下記の4つ!
- 研究者にiPad1台は物足りない(PCは必須)
- 持ち運びは楽になるが、作業効率的には、少々重くてもPCも持ち歩いた方が快適
- 研究者がiPadだけ持ったちょっとしたお出かけができることがほとんどない。(だいたい学会などPCを持ってがっつりお出かけ)
- それでも書類仕事しかしないという固い意志であればiPadでも十分である。
そしてそのまとめは、
- 研究では、iPadで論文・ノートを担当、PCでパワポ・データ解析
- プログラミングでは、iPadで教科書やWebページ表示、PCでコードを打つ
- ブログでは、使えるときはPC、隙間時間にiPadで下書き
という感じで「状況によって使い分けることが最大効率になる」ということです。
今回の検証で、iPadで色々できるようになり、1台で全てをこなすことにこだわりすぎていたなと気づきました。
デバイスによって得意不得意があるのは当たり前で、Apple自身もiPadをコンピューターとはいいつつも、デバイス間の連携を大切にしています。つまり、得意な作業を得意なデバイスで分担することが最大効率たりえるのではないでしょうか。
そのための、「軽さと薄さ」であると私は考えます。
ということで、iPadとPCをどうやって使い分けよう?、iPadだけで十分なのか?という疑問を抱いている方の参考になれば幸いです。
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