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再生医療についてもっとくわしく!どんな治療方法があるの?【再生医療のアトリエ】

再生医療のアトリエ
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「再生医療と組織工学てどんな研究?」では再生医療と組織工学についてざっくりとまとめました。

本記事では、「再生医療」についてもっと詳しく深掘りをしていきます。

再生医療では何をどのように使っているの?という疑問に対して、

  • 薬を使った再生医療
  • 細胞を使った再生医療

があり、これらについてまとめていきます。

再生医療と聞くと、細胞を移植して臓器を再生させるイメージを持っている人が多いかなと思いますが、実は細胞を使わない方法や、細胞を使っても直接的に機能を補完しない方法もあり、意外と複雑です。

「再生医療のアトリエ」は私が大好きな研究である、再生医療・組織工学という人工的に臓器を作る研究について「とにかく楽しく、わかりやすく」をモットーに叡智を綴る場所です。
よかったところ、わかりにくいところ、もっと知りたいところなどコメントいただけると嬉しいです。

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再生医療(Regenerative Medicine)のおさらい

「再生医療と組織工学てどんな研究?」では、再生医療とは

  • 薬などで体が本来持つ再生能力を高める
  • 失った分の機能を補うための細胞を移植する

ことで、臓器の機能を再生するという医療であるとまとめました。
移植のドナー不足問題を解決したり、既存の方法では治療できない病気の対抗策として期待されています。

薬を使った再生医療

人間の体はある程度の再生能力をすでに持っています。

  • 擦り傷や切り傷などの小さな怪我は自然治癒する
  • 骨折などの大きな怪我でも、患部を固定することで治癒することができる

お医者さんが行う処置は治癒の手伝いをしているだけで、実際に治癒しているのは人間の体です。
それでも治らない怪我や病気ももちろんあります。

例えば

  • 交通事故による脊髄損傷
  • 脳梗塞や心筋梗塞のうな臓器中の細胞の壊死

これに対して、薬を使うことで、細胞を活性化させて本来持つ再生能力を高める治療法が再生医療の一つです。

この薬というのが、細胞成長因子(細胞増殖因子)というものです。
役割は、細胞の増殖、分化、遊走の機能を制御することです。
(※分化:細胞が変化して役割(機能)を持つようになること)
(※遊走:細胞が臓器(組織)の中を移動すること)

成長因子には

  • 線維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)
  • 血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)
  • 骨形成タンパク質(BMP:bone morphogenetic protein)

などがあります。

これらの成長因子はサイトカインとも呼ばれています。
このサイトカインは細胞から分泌されるもので、周りの細胞に対して影響を与えるタンパク質です。
このサイトカインが、組織中にある幹細胞の増殖、分化を促進することで再生能力が向上することに注目しています。

具体的には、
歯周病によって破壊された歯周組織に、bFGFを投与することで、歯周組織中にある幹細胞などの増殖、分化を促進して組織を再生するもの。(参考1)(参考2
他にも、虚血による壊死などの疾患に対しては、FGFやVEGFを用いることで血管新生を促し、患部に酸素・栄養素を供給することで、再生する治療法も考えられています。(参考3

サイトカイン以外にも、遺伝子導入技術低分子化合物を用いて、疾患によって変質した細胞を元の細胞に戻す(分化させる)ことで、再生をしようとするダイレクトリプログラミングという技術も開発されてきています。(参考4)(論文1)(論文2

細胞を使った再生医療

次は、細胞を用いた再生医療です。
こっちの方がおそらく多くの人がイメージしているような再生医療だと思います。

iPS細胞などの幹細胞から、脳の細胞、心臓の細胞、肝臓の細胞を作って、病気の部分に移植すると、機能が回復するというものです。
失った細胞を供給することで、本来の機能を取り戻すという考え方ですね。

ところが、話はそんなに簡単ではないことがわかってきているようです。
細胞を使った再生医療には実は2つの項目に分けられます。

  • 移植した細胞から分泌されるサイトカインが、周囲の細胞の機能を増強させる
  • 移植した細胞が臓器の一部になり、機能を補完する

移植した細胞から分泌されるサイトカインが、周囲の細胞の機能を増強させる

一つ目の、移植した細胞から分泌されたサイトカインによって再生する方法の有名で代表的なものは、細胞シートがあります。

骨格筋から作った細胞シートを心臓に移植すると、心不全が改善するという報告があります。
これは、移植した骨格筋のシートが心臓をの動きを補うのではなく、骨格筋のシートが分泌するサイトカインが、心臓の細胞の機能を向上させることで、心不全を改善していることがわかってきています。(論文3

また、iPS細胞から作った心筋細胞シートを移植する研究も進められています。
これも大きくはサイトカインによる治療効果が大きいと考えられていますが、ある程度は移植した細胞シートも心臓の動きを物理的に補助しているのではないかという報告もあります。(論文4

移植した細胞が臓器の一部になり、機能を補完する

二つ目の、移植した細胞が臓器の一部になり、機能を補完する再生方法についてです。
幹細胞や、分化した細胞を体内に移植することで、欠損した機能を補います。

幹細胞では、主にある程度分化方向が決まった、体性幹細胞というものが使用されています。
例えば、

  • 間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)
  • 脂肪由来幹細胞(Adipose derived stem cell:ACS)

iPS細胞やES細胞のような何にでも分化できるような細胞は腫瘍化のリスクがあるため、あまり使用されない状況です。
むしろ、徹底的に混入しないような品質管理が求められています。

代表的な体性幹細胞はMSCですね。
移植することで、様々な細胞に分化したり、因子を分泌したりすることで再生を促進することが確認されてきています。

分化した細胞移植では、例えば、
加齢黄斑変性という網膜色素上皮細胞の疾患では、損傷した細胞を除去し、iPS細胞から作った新しい網膜色素上皮細胞を移植することで、機能を再生する治療法の開発が進められています。(参考5

角膜の疾患では、iPS細胞から作った角膜上皮細胞の移植を行うことで、消失した角膜を再生させる研究が進められています。(参考6

交通事故やスポーツの怪我などによる脊髄の損傷では、iPS細胞から作った神経細胞の移植を行うことで、損傷した脊髄を再生することで、失った運動機能を取り戻す研究が進められています。(参考7

これらのように、細胞を使った再生医療は細胞から分泌されたものが薬のような作用をしたり、細胞自身が臓器の機能を補完したりと様々な原理で再生が行われています。

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あとがき

以上、「再生医療についてもっとくわしく!どんな治療方法があるの?」についてまとめた記事でした。

再生医療は

  • 薬を使った再生医療
  • 細胞を使った再生医療

の二つの方法があります。

薬を使って、人体が本来持つ再生能力を向上させる方法や、細胞をつかって臓器の機能を補完する方法をはじめ、日々の研究によってさらに様々な手法が開発されており、年々複雑になっていきますね。
正直なところ安直に分類分けしてしまっていいのか悩んでいます。

「再生医療のアトリエ」は私が大好きな研究である、再生医療・組織工学という人工的に臓器を作る研究について「とにかく楽しく、わかりやすく」をモットーに叡智を綴る場所です。
よかったところ、わかりにくいところ、もっと知りたいこと、間違えているところなどありましたらコメントしていただけると嬉しいです。

参考文献

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