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細胞の2次元培養と3次元培養の違いまとめ【3D培養の良いところ】

再生医療のアトリエ
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本記事では、「細胞の2次元培養と3次元培養の違い」についてまとめていきます。

再生医療・組織工学では細胞を立体的に培養する3次元培養が注目されています。
しかし、なぜ3次元培養が良いの?についてはなかなか難しいところで、最先端の研究でも実はまだ手探りしているのが現状です。

この記事では2次元培養と3次元培養について、

  • なぜ3次元培養が注目されているのか
  • 2次元培養の具体的な問題
  • 3次元培養の利点
  • 2次元培養と3次元培養の違いについて

の項目についてまとめます。

まだまだ研究段階である3次元培養について、様々な臓器の細胞、様々な培養形態がある中で絶対的に3次元が良いというのも難しいものです。
そこで本記事では、「2次元培養に対して3次元培養のこういうところが良いということが研究でわかってきているよ」という情報を整理していくことを目的とします。
情報も膨大なので日々読んだ論文を付け足して更新していこうと思います。

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2次元培養と3次元培養培養

詳しくは「細胞の3次元培養の特徴と培養方法のまとめ【3D組織構築法11選】」で解説しているので、ここでは要点をおさらいします。

2次元培養

  • 細胞を平面環境で培養
  • 体の中の環境と大きく異なる(細胞やECMとの結合少ない、硬い etc.)
  • 体の中の状態や現象を正確に再現できていない。
    (参考:L Hutchinson et al. Nat Rev Clin Oncol. 2011.)

3次元培養

  • 細胞を立体的な環境、状態で培養
  • 細胞、足場材料、成長因子で構築
  • 2D培養よりも高い機能を発現
  • より生体に近い薬剤応答を示す

なぜ3次元培養が注目されるのか

3次元培養の注目理由

それは「3次元培養のほうが細胞が本来の臓器に近い機能を発現するから」です。

細胞培養を行う目的は

  • 個体・臓器レベルでは見ることができない細胞の機能を調べる
  • 生体内の生命現象を体外で再現する
  • ウイルス研究のための宿主として利用
  • タンパク質などの産生

実際に培養した細胞の使用用途は

  • 移植して治療に使う
  • 薬の評価を行う
  • 生命現象の解明をする

などがありますが、最近は細胞であれば何でも良いというわけでもないようです。
細胞はなるべく臓器と同じぐらいの性能を持っていることが望ましいとされています。

しかし、2次元培養では体内と環境が違うため性能が不十分なため、より体の中に近い培養環境である3培養が注目されているということでした。

創薬の視点から見た3次元培養

薬の開発で、臨床試験の第I相試験まで到達した薬の候補が最終的に患者に届くのはたったの8%程度しかありません。
(R Mahajan et al. J Pharm Bioallied Sci. 2010)

開発がうまく行かない理由はたくさんありますが、薬の有効性や安全性を調べる際に、培養細胞や動物実験が原因の一つとされています。
体内の機能を正確に発現していない細胞を使った薬の評価は、当然体内とは異なる薬の応答を示すかもしれません。
ヒトと体内のメカニズムが違った動物を使った試験は、当然ヒトでも同じ結果が得られるわけではありません。

このような問題を抱えていても、薬の開発でいきなりヒトで試験することはできないので、避けては通れないこともまた現実です。
動物実験もヒトとの種差の問題に加えて、倫理的な観点などもあり規制が進んでいます。
(M Wadman. Science. 2023)

そんな中で培養細胞を使った評価で創薬の成功率を高めることが期待されています。
(EC Butcher et al. Nat Biotechnol. 2004.)

細胞による薬剤や毒性のスクリーニングの予測能力の向上は動物の削減にも貢献するので、重要なポイントです。
そのためにも、細胞が目的の臓器の機能を再現していることが、信頼できる薬の応答の評価に必要不可欠となります。
(K Bhadriaju et al. Drug Discov Today. 2002. / LA Kunz-Schughart et al. J Biomol Screen. 2004.)

ところが、2次元培養は組織特異的な機能の消失が早いため、評価の予測能力が損なわれていると言われています。

  • 幹細胞の機能消失は4日程度
  • 薬剤代謝酵素は初期に失われる機能の一つ
    (MJ Gómez-Lechón et al. J Cell Physiol. 1998.)

この問題を解決するために、3次元培養を用いて

  • コラーゲンや基底膜で細胞周囲の培養環境を整える
    (F Berthhiaume et al. FASEB J. 1996.)
  • 合成ペプチド足場材料を使った培養環境の開発
    (CE Semino et al. Differentiation. 2003.)
  • 灌流培養による培養
    (MJ Powers et al. Tissue Eng. 2002.)

といった培養方法などが注目されています。

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2次元培養の具体的な問題

2次元培養では細胞の機能が不十分とのことでしたが、なぜそうなるのか深掘りします。

2次元培養は

  • 培養がシンプル、簡単
  • 低コスト
  • 様々な評価に使用されてきた実績

というメリットがあります。

しかし問題として、

  • 細胞-細胞、細胞-細胞外環境の相互作用の不足
  • 硬いプラスチック表面での培養

という体の中とは全く違う環境で培養されています。

この環境の違いは細胞に対して

  • 分化
  • 増殖
  • 生存
  • 遺伝子発現
  • タンパク発現
  • 刺激応答
  • 薬剤代謝
  • 他の細胞への応答

などにまで影響を与えると言われています。
(F Pampaloni et al. Nat Rev Mol Cell Biol. 2007. / BM Baker et al. J Cell Sci. 2012. / JA Hickman et al. Biotechnol J. 2014. / MJ Bissell et al. Curr Opin Biol. 2003.)

影響の具体的な例としてはこんな感じだそうです。

  • 臓器から単離した細胞は2次元培養をすると形態が変化したり、表現型の欠損が起きたりする。
    (K Mark et al. Nature. 1997. / OW Petersen et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1992.)
  • 細胞外の環境の形状(地形)は細胞の機能に影響を与える
    (G Mahmud et al. Nature physics. 2009)
  • 細胞とECMのシグナルのやり取りが再現できていないため、細胞の増殖や形態は生体と異なる挙動を示す。
    (L Hutchinson et al. Nat Rev Clin Oncol. 2011. / D Antoni et al. Int J Mol Sci. 2015.)
  • ECMとの相互作用が不足すると、細胞遊走、アポトーシス、転写の制御、受容体の発現に影響を及ぼす。
    (HK Kleinman et al. Curr Opin Biotechnol. 2003.)

3次元培養の利点

3次元環境で細胞を培養する利点は、より生体に近い機能と構造を持つことです。

  • 細胞-細胞相互作用
  • 細胞-ECM相互作用
  • 細胞力学
  • 栄養素などの供給

といった点で2次元培養と異なります。

これらの点は3次元培養の方が生体内に近い状態になっており、2次元培養よりも生体に近い機能を模倣していると言われています。

特にECMは本来の臓器の機能を維持して細胞を培養できたり、一度2次元培養で失われた機能の復元もできるという報告もあることで、3次元培養を行う上でも欠かせない因子の一つです。
 (MJ Bissell et al. J Theor Biol. 1982. / G Michalopoulos et al. Exp Cell Res. 1975. / JT Emerman et al. In Vitro. 1977. / JT Emerman et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1977. / J Yang et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1980.)

ライフサイクルの重要なイベントである、「増殖」、「遊走」、「アポトーシス」も3次元的な組織化の仕組みによって制御されているそうです。
(MJ Bissell et al. Differentiation. 2002.)

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2次元培養と3次元培養の違いについてまとめる

大まかに2次元と3次元の細胞培養の違いに触れたところで、ここからは下記の項目について2D培養と3D培養の違いについてまとめます。

  • 培養コスト
  • 培養品質
  • 生体内の再現度形状、微小構造、ECM
  • 酸素、化合物、栄養の拡散
  • 細胞間結合
  • 細胞増殖
  • 細胞分化
  • 薬物代謝・毒性評価
  • 薬物感受性
  • 機械刺激応答性
  • アポトーシス
  • 細胞遊走
  • 遺伝子発現
  • シグナル
  • 評価方法

培養コスト

基本的に3次元培養のほうが培養コストが高くなるとされています。
同じ培養面積でも高さ方向に細胞を積み上げている3次元の方が細胞数が多くなります。
細胞が増えると培養液中の栄養素の消費も多くなり、培地交換量が増えます。
また、3次元組織の培養容器も特殊なものが多く、値が張るものが多いです。

価格の面だけでなく、時間のコストもかかります。
例えば、培養した3次元組織を解析しようとして細胞凝集体から細胞を単離しようとすると、タンパク質分解酵素を用いても数時間から数日かかることもあります。
(S Khetan et al. Biomaterials. 2010.)

こういった問題を抱えている多くの3次元培養法は効率、再現性、実験の快適性の面で2次元培養よりも劣るとされています。
(JA Hickman et al. Biotechnol J. 2014.)

一方で、3次元の形態にすることによって得られる恩恵はあるので、目的に合わせて適切な培養方法を選択して利用するとよいのでしょう。
(LB Weiswald et al. Neoplasia. 2015.)

培養品質

3次元培養のデメリットになりますが、2次元培養よりも再現性が低いとされています。
2次元培養では細胞を培養皿に接着、増殖させるだけで良いですが、3次元培養では細胞同士が結合し、何かしらの形態を持ちます。
この形態の出来具合が中々揃わなかったり、ランダムな要素をはらんでいるため、同じように作った3次元組織でも同じ機能を持たないものが出てくることがあります。

問題となっている以上、当然品質の改善を行う研究もされています。
例えば、スフェロイドを用いた研究では、1つのスフェロイドを形成する細胞数を制御することで、サイズの再現性を改善したものがあります。
(M Vinci et al. BMC Biol. 2012.)

生体内の再現度

ここが3次元培養を行う重要なポイントの一つです。

まずは、3次元培養されたドナー組織由来の細胞は、元の組織の特徴を2次元培養よりも再現されていたという研究。
(LG Griffith et al. Nat Rev Mol Cell Biol. 2006.)

3次元培養は、適切な細胞-細胞、細胞-ECM相互作用を維持できているため、生体のように局所的な環境からの刺激を受けることができます。このため、細胞や形態や極性を維持することができます。
さらに、2次元培養で失われた本来の細胞の特徴を3次元培養では回復することもできるという研究もあります。
 (KM Yamada et al. Cell. 2007. / OW Petersen et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1992. / PD Benya et al. Cell. 1982.)

がん細胞を使った研究では、生体と同じ細胞密度を持った3次元培養の組織のみ、生体での固形がんと類似の薬剤反応を示した報告があります。
(CH Hsieh et al. Biomed Res Int. 2015.)

3次元培養は生体を完全に再現しているとは言えませんが、2次元培養よりも高い機能や生体類似性を持っていることから、従来の2次元培養モデルと動物実験の中間のモデルの位置付けになっているようです。
(KM Yamada et al. Cell. 2007. / AW Hamburger et al. Science. 1977. / AW Hamburger et al. Science. 1977.)

形状、微小構造、ECM

2次元、3次元培養の比較の研究を見ていて今のところ目に止まることが多いと感じるのがこのポイントについてです。

ECMは機械的、化学的な刺激を細胞に与えることで、生物活性を引き起こしたり、細胞運命を調節する重要な役割を持っています。

主に使用されるECMはコラーゲン、ラミニンなどの細胞接着性のあるタンパク質です。
2次元培養でも培養皿上にECMをコーティングして細胞培養ができますが、3次元培養ではECMのゲルを用いたり、その他ハイドロゲルとECMを組み合わせたりした、立体的な環境で培養を行います。
これにより、2次元と3次元では機械的、化学的環境が大きく異なる環境となります。

がん細胞について、ECMの組成の変化は腫瘍の進行とがんの特性に影響するとされています。
(AA Bulysheva et al. Biomed Mater. 2013.)
また、がん細胞は周囲環境の硬さなどによる影響を受けることが知られており、細胞周囲の環境を制御できる3次元培養はがん細胞の特徴を理解するために重要な培養方法とも言えそうです。
(AM Kloxin et al. Science. 2009.)

間葉系幹細胞を用いた研究では、アルギン酸とコラーゲンのハイドロゲルを使用し、間葉系幹細胞の細胞の広がり、増殖、分化に対するハイドロゲルの応力緩和の影響を調べたものがあります。

基底膜を再現した環境で3次元培養を行うと、腫瘍形成にも変化があるとのこと。
β1インテグリン受容体と上皮成長因子受容体の双方向の相関は2Dでは見ることができず、3次元培養特異的な現象だったり、
(F Wang et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1998.)
ECMの硬さなどの特性は乳管上皮細胞のERK/Rho機械調節回路に異常を与え、腫瘍化を促進させるといった研究結果があるようです。
(MJ Paszek et al. Cancer Cell. 2005.)
(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16169468/)
このような3次元培養のみが発現する特徴を見ることで、見分けるのが難しい悪性と正常な乳管上皮細胞を区別することができるとのこと。

組織から単離した細胞の2次元培養は形態が平坦、分裂異常、分化した表現系の消失が起きると言われています。
(K Mark et al. Nature. 1977. / OW Petersen et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1992.)
ところが、単離して変性した細胞は3次元培養を行うことによって、形態や機能を復元することができるようです。
例えば、脱分化した軟骨細胞を3D培養するとマーカーの表現型が回復する。
(PD Benya et al. Cell. 1982.)
乳管上皮細胞を3D培養すると、増殖の停止、形態、基底膜の発現が起こる。
(JT Emerman et al. In Vitro. 1977. / EY Lee et al. J Cell Biol. 1984. / OW Petersen et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1992.)

接着性の細胞は周囲のECMや細胞との相互作用によって形状や組織化が決定されるようです。
また、2次元と3次元培養で大きく違うパラメーターの1つが形態とも言われています。

  • 2次元培養
    水平方向に進展、垂直方向に進展しない、基底膜と頂端の極性
  • 3次元培養
    星状形状、極性は遊走の前後方向
    (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18042624/)

形態の変化は機能に直接影響を与えるようで、
基底膜と頂端の極性はアポトーシスに関係したり、
(T Mseka et al. J Cell Sci. 2007.)

2次元培養のケースではありますが、パターニングによって細胞が伸展する角度が変化させると、細胞増殖、アポトーシス、分化に影響を与える
(R Singhvi et al. Science. 1994. / CS Chen et al. Science. 1997. / CH Thomas et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2002. / R McBeath et al. Dev Cell. 2004.)

進展した細胞の総面積や形状は機能に影響を与えることがわかっているようです。
(A Brock et al. Langmuir. 2003. / M Théry et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2006. / M Théry et al. Nature. 2007. / G Mahmud et al. Nature Physics. 2009. / KA Kilian et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2010.)

細胞の接着・伸展は、インテグリンによる接着は葉状仮足によって行われます。
物理的な拘束のない2次元の基板上ではこの接着の現象は速く起こります。
一方、3次元環境下では細胞が伸展するために物理的な足場を避けたり、分解したりすることで、細胞の伸展は2次元に比べて遅くなるようです。
(S Khetan et al. Biomaterials. 2010.)

また、インテグリンの接着は2次元では細胞の片面のみに対して3次元は細胞周囲で生じます。
2次元と3次元の細胞の機能の違いとして、この接着の空間分布の違いによるものがあるとされています。
例えば、サンドイッチ培養を行うと、インテグリン結合が細胞の両面で起こるようになり、葉状仮足が減少し、星状の形態を取るようになるとか、
(HM Langevin et al. Am J Physiol Cell Physiol. 2005.)
その結果、サンドイッチ培養した幹細胞は機能の維持の改善が確認されたりするとのこと。
(JC Dunn et al. FASEB J. 1989.)

線維芽細胞の2次元と3次元培養の比較もされており、

  • 形状
  • 膜上の接着タンパクの局在

が異なるようです。
(D Walpita et al. Nat Rev Mol Cell Biol. 2002. / E Cukierman et al. Science. 2001. / AS Meshel et al. Nat Cell Biol. 2005. )

上皮系の形態も2次元と3次元培養で大きく違う特徴の一つです。
(LE O’Brien et al. Nat Rev Mol Cell Biol. 2002.)
MDCK細胞をコラーゲンで3日培養すると、腎臓の特徴的な構造(嚢胞)を形成します。
ここに、HGFなどの化学的な刺激を加えると、MDCK嚢胞は部分的に脱分化を起こし(部分上皮間葉転換)、枝分かれ管が形成されます。
この嚢胞と管は完全に分極した構造を持っており、頂端面は内腔に面し、基底面は隣の細胞や基底膜に面している構造になるそうです。
これは3次元培養ならではの現象のようで、2次元培養では基底側からの刺激などが不十分であるため、きれいな分極した構造を取らないようです。
このような細胞の分化には、立体的な空間の中での、空隙、細胞、ECMなどの相互作用が重要ということです。

ECMの働きは組織固有のタンパク質の産生や代謝にも影響を与えているようです。
(EY Lee et al. J Cell Biol. 1984. / J Aggeler et al. J Cell Sci. 1991. / JT Emerman et al. Exp Cell Res. 1981.)

ECMの中でも特に基底膜からのシグナルも重要とのことで、ラミニンが豊富な基底膜で培養すると、著しい形態と機能の分化が起こるとのこと。
(J Aggeler et al. J Cell Sci. 1991. / MH Barcellos-Hoff et al. Development. 1989.)

基底膜を使うにしても、2次元培養で基板上に固定したり、薄くコートするだけでは分化は起こらないようです。
3次元環境下でゲルの変形等による作用が、極性の形成に影響している可能性があるとか。
同じ3次元培養でも、材料としてコラーゲンと基底膜では細胞表面のインテグリンの発現に違いがあるとのことです。
(AR Howlett et al. J Cell Sci. 1995.)
例えば、管腔細胞をコラーゲンゲル内で培養すると内外逆転した管腔構造を取ります。
一方で、基底膜成分を用いた条件で培養すると正常な極性になるようです。

がん細胞について、ECMとの結合タンパクであるインテグリンβ1やEGF受容体の活性を調整したり、関連シグナル(MAPキナーゼ、PI3キナーゼ)の阻害を行うと、悪性の表現型を元に戻したり、シグナル経路正常化タンパク発現レベルを正常化したりすることができる研究結果があるようです。
ただし、この現象は3次元培養のときのみに起こり、2次元培養では生じないとのことです。
(VM Weaver et al. J Cell Biol. 1997. / F Wang et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1998. / M Anders et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2003. / )

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酸素、化合物、栄養の拡散

細胞は生き物であるため、酸素、栄養が不足すると生きることができません。
3次元培養の問題がこの酸素、栄養の供給で、立体的な細胞組織の中心部は酸素、栄養が不足すると内部壊死を引き起こします。
 (JB Kim et al. Semin Cancer Biol. 2005. / D Yip et al. Biochem Biophys Res Commun. 2013. )
3次元培養組織内の酸素勾配は代謝活性のある細胞と低酸素・細胞死の領域がわかれているとされています。
(E Volkmer et al. Tissue Eng Part A. 2008.)

この問題の一つの解決策が、ハイドロゲルを用いることです。
ハイドロゲルはサイトカインや成長因子などの可溶性因子がゲルを通過できるようにしながら生体のECM環境を模倣できます。
(SA Langhans et al. Front Pharmacol. 2018.)

前述の「形状、微小構造、ECM」の項目でも、ECMの働きについて触れましたが、酸素や栄養素の供給の点においてもECMは非常に重要な役割を持ちます。
その機能の例として、栄養、ガス(酸素、酸化窒素など)、可溶性エフェクター分子(モルフォゲン、成長因子、ホルモン、サイトカインなど)の空間分布の制御があります。
ECMは因子の貯蔵の役割も持っており、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは成長因子と結合し、コラーゲンTypeIVはTGFβと結合することが知られています。
(I Vlodavsky et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1987. / JE Park et al. Mol Biol Cell. 1993. / VM Paralkar et al. Dev Biol. 1991.)
この因子の貯蔵機能によって、因子の刺激を加えるタイミングと空間的な分布の制御がされているそうです。

この空間分布の制御の結果の一つが、因子の濃度勾配を形成することです。
濃度勾配は、細胞遊走、ホーミング、血管新生、発生初期の組織パターニングなどの基礎的なプロセス制御に必要とされています。
酸素は栄養素などは基本的には拡散によって細胞に供給されますが、拡散は複雑で周囲のECMの構造、多孔性、血管系と周囲の細胞が影響すると言われています。

例えば、3次元のECMのポアサイズ、相互接続性、ゲルの次元、細胞の濃度、因子のサイズ、電荷などが拡散に影響を与えると言われています。
(S Ramanujan et al. Biophys J. 2002.)
ゲルの大きさも拡散の速度に影響を及ぼし、mmサイズのゲルとμmサイズのゲルに包埋した細胞にHGFを添加すると、μmサイズのゲルのほうがHGFの影響を強く受けるが、mmのゲルは数時間立っても影響がなかったようです。
(S Raghavan et al. J Cell Sci. 2010.)

このような酸素や栄養素の拡散による供給においても、2次元培養と3次元培養で違いがあります。

2次元培養

  • 細胞が分泌したり、添加されたりした因子は対流によって即座に平衡化される
  • 一時的な勾配を形成し、極性や遊走などの走化性の現象を研究できる
  • 長期的な形態形成に必要な数時間から数日間の勾配の維持は難しい

3次元培養

  • 3Dや積層したECMは勾配の維持をサポートする
  • 凝集塊などの3D培養は勾配の影響を評価することができるシンプルなモデル

例)がん細胞によるサイズと中心部の低酸素による壊死。
 腫瘍形成因子、薬剤耐性と低酸素状態の研究に有用
(F Hirschhaeuser et al. J Biotechnol. 2010. / W Mueller-Klieser. Am J Physiol. 1997.)

細胞間結合

2Dと3Dでは細胞間の結合量が違うとされています。
心筋細胞において2次元と3次元培養を比較したとき、細胞と細胞の結合が多い、3次元のほうが生体に近い機能を発現しているのではないかとされています。
(CP Soares et al. PLoS One. 2012.)

SeedEZというマトリゲルを用いた培養システムでは、細胞-細胞間結合や3次元の細胞ネットワークの形成を促進することが報告されています。
(L Lang et al. J Hematol Oncol. 2019.)

このような細胞と細胞の結合は、組織の特異性、恒常性の維持に重要であると考えられています。
(HK Kleinman et al. Curr Opin Biotechnol. 2003.)

細胞増殖

3次元培養をしている組織について、細胞増殖は組織の外部と内部で違いがあり、外側でより高い傾向があるそうです。
 (S Pradhan-Bhatt et al. Laryngoscope. 2014. / S Pradhan et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2010. / S Pradhan-Bhatt et al. Tissue Eng Part A. 2013.)
これは「酸素、化合物、栄養の拡散」の項目でも触れた、組織の外部の方が酸素や栄養素が豊富で、内部で不足していることが影響していそうです。

また、がん細胞のいくつかの特徴は2次元培養では適切にモデル化されていないとされています。
(K Chitcholtan et al. Exp Cell Res. 2013.)
この研究では、ライン化されたがん細胞で3次元再構成基底膜培養よりも、2次元培養のほうが生体よりも高い、異常な増殖能力が示されていたようです。
がん細胞の3次元培養では、細胞の増殖は減少していたものの、β4とβ1インテグリン(細胞極性と分化マーカー)は増殖していたとのことで、3次元にしたから細胞の機能が低下したということではなさそうです。

同じく、がん細胞の2次元培養の研究で、2次元培養をすると組織特異的な機能や組織化が損失することが示されているようです。

一方で注意すべきことで、同じ細胞種でも株が異なるとグルコースの取り込み量が異なるようで、このグルコースの取り込み量は培養方法による影響は少なく、細胞増殖には影響しないこと。
細胞株特有の問題であるため、増殖と分化に2次元と3次元培養のどちらが良いか評価するのは難しいとのことです。

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細胞分化

3次元環境で培養された幹細胞は著しく高い分化能を示すことが報告されています。
(H Liu et al. Tissue Eng. 2005.)

いくつかの研究で、2次元と3次元での細胞増殖、分化、遺伝子発現レベルの比較の実験が行われた結果、
Collagen TypeIをコートした2D培養では3D培養(EBやゲル)よりも分化が早くなることが示された。
(ET Pineda et al. Cells Tissues Organs. 2013.)

また、細胞の組織化が分化に影響することも示されており、

  • GATA4(心筋転写因子)の評価では、3次元培養で血管系への分化を促進する。
  • 神経分化は3次元培養(EB培養)のみで発生する。

弁間質細胞(心臓弁の腫瘍な細胞型)では基板の硬さが細胞株の遺伝子発現に影響を与えているようです。
この材料のヤング率が細胞骨格、収縮性、マトリックス再構成遺伝子に影響し、2次元で増殖させた細胞は、3次元培養で増殖させた細胞よりも高いレベルの細胞骨格要素と細胞外マトリックスタンパクを発現していることが示されています。
(ET Pineda et al. Cells Tissues Organs. 2013.)

薬物代謝・毒性評価

iPS細胞由来心筋細胞、心筋線維芽細胞、血管内皮細胞で共培養したスフェロイドを用いて、心毒性の評価を行うと、生体に近い応答を示した報告があります。
(SA Langhans et al. Front Pharmacol. 2018.)

肝細胞を用いた3次元細胞モデルでは、薬物誘導性の肝毒性を効率的に調べられることがわかっているようです。
しかし、スループット性が低く、薬の評価モデルとして使用するためには課題が残るとのこと。
(Q Meng. Expert Opin Drug Metab Toxicol. 2010.)

薬物感受性

2次元培養は濃度依存的な薬の感受性や耐性の評価で生体と大きく異なることが知られています。このため、3次元培養はその過大評価や過小評価を防ぐことを期待されています。
(LG Griffith et al. Nat Rev Mol Cell Biol. 2006.)

まず、3次元培養のほうが薬剤の感受性が低いと言われています。
これは、組織内への化合物の供給低下、低酸素による病態生理学的な違い、細胞周期の変化によって生じるものと考えられています。

また、細胞-ECM相互作用はがん細胞の薬剤耐性に対して重要な役割を持つという報告もあります。
3次元のシルクから作られた足場(生体腫瘍ECMに類似した繊維配向構造を持つ)で培養した細胞は、パクリタキセルに対して耐性を持つようになるようです。

スフェロイドは2次元培養と異なる薬の応答を示すが、薬だけでなく放射線への応答にも影響を与えるようです。
具体的には、3次元培養は放射線に対する耐性が増加するとのこと(DNAヘテロクロマチン化の影響)。
これは、ヒストンH3の脱アセチル化やヘテロクロマチンタンパクα1が3次元培養で高発現していることが要因で、3次元培養で高いレベルで発現しているヘテロクロマチンは放射線由来の二重鎖の破壊から部分的にDNAを保護する効果を持っているようです。
(K Storch et al. Cancer Res. 2010.)

3次元培養では薬剤耐性の予測に関して良好なデータが得られることが示されています。
in vivoの腫瘍と類似する3次元培養細胞群では、アルキル化剤耐性があるとのこと。
(H Kobayashi et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1993.)

機械刺激応答性

細胞のシグナル伝達カスケードについて、3次元培養ではより多くの伝達メカニズムがあることが明らかになってきているようです。
(L Gu et al. Nat Rev Cancer. 2016.)
例えば、α1インテグリンと上皮成長因子受容体の共役相互作用は3次元培養でのみ見られるようです。
(F Wang et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1998.)

硬さや形状といったECMの特性への応答による細胞形態の変化は、幹細胞分化に重要な機械的調節因子とされているようです。

細胞の機械応答の評価は、平面のみの変化を考えればよい2次元培養のほうが簡単であると言われています。
3次元培養は表面から受ける力だけでなく、他の細胞やECMから受ける力も加わるため複雑になるとのことです。

ECMに及ぼす力の正確な測定は、がん細胞や免疫細胞の遊走などの生理学的プロセスを理解するために必要であるとされています。
3次元のコラーゲンマトリックス内のがん細胞の移動の力を定量化した研究では、
マトリックスの硬さが変化しても同様の力が生成されているのに対して、2次元培養では周囲の硬さの増加に伴って、物理的な力も増加するという違いが見られるとのことです。
(K Wang et al. Nat Methods. 2016.)
ただし、この研究はマトリックスの硬さが唯一の原因ではないことに注意とのことです。

細胞とその周囲には常に機械的な力が働いています。
この力は細胞の構造や機能の制御に重要な因子であるとされています。
(J Eyckmans et al. Dev Cell. 2011. / BD Hoffman et al. Nature. 2011.)

体内と比べてガラスやプラスチックといった非常に硬い表面の2次元培養細胞は剛性の点で、生理的でない静的機械環境に置かれているとも言えます。
この基板の硬さは、細胞接着、形態、幹細胞の維持と分化に影響を与えることがわかってきているようです。
(AJ Engler et al. Cell. 2006. / MJ Paszek et al. Cancer Cell. 2005. / PM Gilbert et al. Science. 2010.)

2次元と3次元培養で細胞が硬さを認識するメカニズムに違いがあるかもしれないという考えもあるようです。
MSCの軟骨分化において、3次元培養では中間の硬さで骨形成の効率が最大になるが、2次元培養ではプラスチックやガラスの硬い基板上で骨形成が最大になるとのこと。
(N Huebsch et al. Nat Mater. 2010.)
3次元では柔らかい環境でインテグリンのクラスター形成が生じますが、硬いと生じないこと。
2次元ではこの現象が見られないことが、硬さ認識のメカニズムの違いなのではないかとのこと。

また、2次元培養では基板の伸張に応じた力がかかる一方、3次元培養では細胞の結合やECMの構造など複雑な形態を取っており、外部からの力の加わり方はその構造によって異なるとされています。
そしてそれらの細胞の形態や力の方向、マトリックスの構造は細胞の応答に大きな影響を与えるようです。
(K Kurpinski et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2006. / AS Nathan et al. Acta Biomater. 2011.)

2次元培養では水平面上で形状の変化が可能であり、機械的物理的制約が少ないこと。
細胞にかかる力は接着表面の接線方向、つまり細胞接着表面にせん断応力がかかるとされています。
(M Dembo et al. Biophys J. 1999. / JL Tan et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2003.)
一方で3次元培養では細胞が伸展するとき周囲のマトリックスの変形による応力がかかると考えられているようです。

アポトーシス

がん細胞の場合、高密度のスフェロイド形成によって、パクリタキセルなどの抗がん剤を暴露してもアポトーシスが起きないことがあるようです。
この原因は、スフェロイドの凝集体で、表面では最も高い増殖性を示す一方、内部では多くの静止細胞や壊死細胞が存在しています。
(R Edmondson et al. Assay Drug Dev Technol. 2014.)

これらの静止細胞は薬剤の影響を受けにくく、新しい腫瘍の種になる可能性があるとされています。
(LC Kimlin et al. Mol Carcinog. 2013.)

2次元培養では、壊死した細胞は培地中に剥離し、生細胞のみが培養表面に露出するため、3次元培養のように酸素や栄養の濃度勾配の影響を受けない点が違いとなります。
単純な拡散の限界だけでなく、幾何的形状による細胞挙動の変化が生理学的反応に影響を与えている可能性があるということです。

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細胞遊走

細胞の遊走は次元で異なると言われています。
これは3次元培養での複雑な細胞の相互作用による影響が強いと考えられているようです。
3次元環境中の細胞はすべての側面が囲まれているか密着しています。
これにより、移動の障害が生じたり、3次元培養環境で複雑な細胞相互作用が生じ、細胞の運動性やメカニズムに変化が生じる可能性があるとされています。
このような細胞遊走は細胞力学の観点からも重要であり、がんの転移や他の疾患や障害において重要な役割を持っているそうです。

3次元のECM培養は細胞の浸潤の挙動評価が可能とのことです。
2次元と3次元培養では細胞の遊走速度が異なるようで、
2次元では、インテグリンに由来する細胞接着の強さに依存する
3次元では、マトリックスの立体構造、機械特性が影響するとのこと。
(MH Zaman et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2006. / MH Zaman et al. Biophys J. 2005.)

また、同じ3次元環境下でもECMの違いによって細胞の遊走速度も異なるとのことです。
コラーゲン、フィブリンといった細胞由来マトリックス中では、線維芽細胞は2次元培養の1.3倍以上速く遊走するが、基底膜成分を含むゲル中では逆に遅くなることが示されています。
(KM Hakkinen et al. Tissue Eng Part A. 2011.)

3次元足場は細胞の遊走の研究のための重要な環境を作り、細胞の遊走によるがんの転移やその他の疾患の影響の理解や予防の進歩に貢献すると考えられています。

遺伝子発現

3次元培養は2次元培養と異なる遺伝子発現レベルを持つとされています。
例えば、スフェロイドで発現増加した遺伝子はがん組織で増加するものと類似していることがわかっているそうです。
(S Ghosh et al. J Cell Physiol. 2005.)

また、培養基板の特性はインテグリンのmRNA、タンパクの発現量に影響するとされており、
細胞を2次元のプラスチック表面で培養すると、β1インテグリンのmRNAの発現量が著しく増加する一方、
基底膜成分の3次元環境で培養を行うと、元の組織と類似したmRNAの発現を示すようになるとのことです。
(M Delcommenne et al. J Biol Chem. 1995.)

シグナル

2次元と3次元培養では分子の局在が異なるという報告があります。
(VM Weaver et al. J Cell Biol. 1997. / F Wang et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1998.)

また、同じイベントでも2次元と3次元培養では異なるカスケードを引き起こす可能性があるとされています。
(K Amsler et al. Am J Physiol. 1999. / PD Vermeer et al. Nature. 2003.)

評価方法

3次元培養のサンプルは、

  • 散乱が多い
  • 様々な厚み

といった理由から、顕微鏡での観察が難しいとされています。

また、zスタック撮影などで同じ領域に光を当て続けるような観察をすることもあり、光褪色や、光によるダメージを最小限にすることが重要だそうです。

そのため、3次元組織の恩恵を受けるためには次のような観察の課題を解決する必要があります。

  • 評価に必要な培養期間維持させること
  • イメージング技術
  • 深さ方向、光ダメージ
  • 良いSN比
  • 広い視野
  • 良い空間分解能
  • 速い画像取得能
  • 低い細胞の蛍光励起レベル
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まとめ

以上、「細胞の2次元培養と3次元培養の違い」についてのまとめでした。

2次元培養と3次元培養について、

  • なぜ3次元培養が注目されているのか
  • 2次元培養の具体的な問題
  • 3次元培養の利点
  • 2次元培養と3次元培養の違いについて

の項目についてまとめましたが、やはり情報が多く、まとめきるのが難しいですね。

3次元培養は良いという意見が多いけれど、様々な作り方があったり、培養コストがかかったり、一概に良いと断言するのは難しそうです。

これからもたくさん論文を読んで3次元培養についての知見を綴っていきたいところです。

参考文献

  • LP Ferreira et al. Design of spherically structured 3D in vitro tumor models -Advances and prospects. Acta Biomater. 2018.(PubMed
  • TS Biju et al. Role of three-dimensional cell culture in therapeutics and diagnostics: an updated review. Drug Deliv Transl Res. 2023.(PubMed
  • K Duval et al. Modeling Physiological Events in 2D vs. 3D Cell Culture. Physiology. 2017.(PubMed
  • BM Baker et al. Deconstructing the third dimension: how 3D culture microenvironments alter cellular cues. J Cell Sci. 2012.(PubMed
  • MJ Bissell et al. Tissue architecture: the ultimate regulator of breast epithelial function. Curr Opin Cell Biol. 2003.(PubMed
  • JA Hickman et al. Three-dimensional models of cancer for pharmacology and cancer cell biology: capturing tumor complexity in vitro/ex vivo. Biotechnol J. 2014.(PubMed
  • F Pampaloni et al. The third dimension bridges the gap between cell culture and live tissue. Nat Rev Mol Cell Biol. 2007.(PubMed
  • 二次元培養から三次元培養への潮流〜細胞培養技術の変遷〜、宮本義孝 et al.、Organ Biology、2020(参考

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