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【Weekly Report 11】心筋ファイバーで力を測る、肉の美味しさを数値化、ChatGPTを医学分野で使う

Weekly Report
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今週気になった論文や研究の話題についてのアウトプットです。
主に再生医療・組織工学、培養肉、AIの研究が中心。

今週(2023.11.13~19)気になった研究・話題は以下の通り。

  • 心筋細胞ファイバーで収縮力を評価する研究
  • お肉の美味しさを数値化する研究
  • ChatGPTを医学分野で使う注意点を調べた研究
  • AIを使った需要予測で廃棄額を削減した三菱重工の話
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心筋細胞ファイバーで収縮力を評価する研究

心筋細胞とアルギン酸でファイバーを作り、ファイバーの動きを計測することで心筋の収縮力を測定する研究が面白かったです。(PubMed

細胞ファイバーといえば東京大学のこの論文が有名ですが(PubMed)、今回は慶応大学から同様のファイバー作製技術を用いて、iPS細胞由来の心筋細胞ファイバーを作り、収縮力を測定できる系を作った論文のようです。

結果は

  • 心筋細胞と心筋線維芽細胞をアルギン酸ゲルのシェルで包んだファイバーを作製
  • 1ヶ月ぐらい培養しても形状が維持可能
  • 薬剤の応答性を動きの変化を測定することで収縮力として評価できる

ということで便利そうな評価系ですね。

細胞をファイバーに閉じ込める単純な系のように見えますが、ファイバーの中で心筋組織を維持するためには心筋細胞のみではなく、線維芽細胞を混ぜることが必要のようです。

ここも面白いのが、一言に線維芽細胞と言っても、皮膚線維芽細胞では形状維持が上手くできず、心筋の線維芽細胞が必要とのことです。
線維芽細胞も臓器由来によって分泌しているタンパク質や発現しているチャネルなどが違うようで、適切なものを使用することが重要そうですね。

先行文献としてバイオワイヤー(PubMed)という、細胞だけで構築した心筋組織の評価系と比較していて、収縮力や長期培養の安定性で今回の研究は優れているようです。

気になる点としては、動画でファイバーの動きを算出することで収縮力を算出しているので、解析が重いこととスループット性が低そうな点、ファイバーの長さによる機能の違いがあるのかどうかというところでしょうか。

それにしてもピクピク動いているファイバーがちょっと可愛いですね…

お肉の美味しさを数値化する研究

肉を食べたとき感じる「おいしい!」は味、匂い、食感がどれだけ関係しているのか?について追求しようとした研究が興味深かったです。(日本の研究.com

「おいしい」を構成する味、匂い、食感という変数が絡み合った複雑さについて定量化する手法を開発することで和牛などのおいしさを伝える指標になるかもということです。

実験の内容は鶏肉エキスを飲んで、うま味、塩味、匂いなど注目を惹きつけた要素を経時的に記録し、どのように変化するのかを測定、解析することで評価できるとのことです。

組織工学の研究には直接関わりはありませんが、最近注目されている培養肉の研究で有用になりそうな研究のように感じました。

培養肉を作るためにまずは肉の形をつくる研究が行われていますが、味ももちろん大切です。

培養肉の味の決め手は何なのか?どういった要素をどの程度制御すればおいしい培養肉が作れるのかということを、この研究で突き止めた食肉の指標を参考に取り入れることで、培養肉の研究がより進むのかなと思いました。

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ChatGPTを医学分野で使う注意点を調べた研究

ChatGPTなどの対話型AIの勢いが凄まじく、とりあえずまずはChatGPTに聞いてみよう!という人も多いのではないでしょうか。
ChatGPTの利用目的を調査した結果では「調べ物・リサーチ」で使用する人が50%ぐらいと半分を占めていた調査もあるようです。(参考

なんでも質問できてそれなりの回答を返してくれる便利なChatGPTですが、回答の正確性についてはまだまだなところだと思います。
間違った情報を得ても大事にならない領域(趣味とか)では問題ないですが、仕事など特に医療分野など人の命に関わるところでは大きな問題ですね。

ということでChatGPTは医療分野でどれほど使えるのか?注意するべきところは?について調べた研究が面白かったです。

結論としては、ChatGPTの正答率は文献数と相関がある
つまり、情報が多いものは正しい回答が多く、情報が少ないものは間違いが多いとのことです。

研究内容としては、次のような実験を行ったようです。

  • 医師国家試験の問題を分野ごとに分類
  • 分類した分野の論文数を集計
  • ChatGPTが解いた医師国家試験の回答をもとに分類ごとの正答率と一貫性を解析

そして結果は

  • 回答の一貫性は正答率と相関がある
  • 正答率は文献数と相関がある

とのことでした。

また、世界最大の医学研究資金を提供しているNIH(アメリカ国立衛生研究所)の研究費の分配額との関係についても調べてみたようですが、こちらはあまり関係は無いようです。

このようなAIの性質をしっかりと証明して特徴を掴んでいく研究は、現状で使用する注意点を知るとともに、これからどういった方向で改善してくかを明確にする大事な研究だと思いました。

2023年のガードナー ハイプ・サイクルでは生成AIはちょうど「過度な期待」のピーク期に来ているようで、とにかく進めという時期でもあります。(参考

ここから色々な問題を解決し、安定して使えるようになるまでに時間がかかるとは思いますが(とは言っても5年程度の予測となっていますが)、この研究のようにいかに安全に安定して使えるようにするかを突き詰める研究がどんどん大事になって来そうですね。

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AIを使った需要予測で廃棄額を削減した三菱重工の話

組織で新しい仕組みを取り入れるのは難しいですよね。

AIの発達が目まぐるしい中、AIを活用することを検討するような段階はあっという間に過ぎ去り、活用することが当たり前という流れになったように感じます。

とは言ってもなかなか取り入れられないのが組織というもの。

そんな中、AIを使った需要予測で廃棄額を削減した三菱重工の話が面白かったです。(参考

工場で生産している薬品の廃棄額が年6000万円も発生しており、コロナ禍の売上減少も追い打ちをかけて無駄の削減が急務になった中、AIを活用することでほぼ0にすることができたようです。

もちろん初めは上手く行かず、失敗を乗り越えて成功にたどり着いたとのことです。

私の職場でも失敗したプロジェクトの行く末を何度か見ましたが、失敗した経験を生かさずにそのまま流れてしまうことの方が多いように感じます。そうやって流れたものは後にも失敗した悪いイメージしか残っていないことがほとんどです。

現場側は失敗から得たこと活かせば次の手が打てると考えていても、経営側は失敗というイメージに縛られてそれ以上触れたくないというような温度差が気になるところです。

この工場では、「コロナによる業績低下を境に、現場発の業務改善の機運が高まっており、失敗も許容する空気感が醸成できていたという。」ように、挑戦の失敗を許容する環境ができていることが羨ましく感じました。

また、「スピード感を持って早くトライし、失敗するにしても早く失敗することを実践していた。」という点についても、イノベーションのジレンマという本でも似たようなことが解説されており、成功の秘訣なように感じました。

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