本記事では「研究者になるなら大学と企業どっちがいい?」について、企業の研究環境を経験してみて感じたことのアウトプットです。
研究者になるなら大学と企業どっちがいい?
研究者を目指したいと思う人ならば、何度かはこの悩みを抱いた人も多いと思います。
これまで研究者になるなら大学の教員になるしかないと思っていました。
しかし、大学の環境に失望して、企業の研究者も経験してみようということで就職しました。
実際に企業の研究者になってみると、予想以上に企業で研究することが合っていたので衝撃でした。
その理由を考えてみたのが下記の2点です。
- 最近の大学の応用系は企業との役割が曖昧になってきている
- 「自分=研究テーマ」で考えなければ企業でもマッチする
今の所、企業でも全然問題なく研究者として生きていけています。
最近の大学の応用系は企業との役割が曖昧になってきている
まず大学の応用系の分野で研究をすることについて考えて行きます。
主に下記の3つの項目ですね。
- 業績
- 特許
- 流行
求められる業績について
大学で求められる業績は知っての通り、主に論文ですね。
ところが応用系の分野にいると、論文だけでは業績として足りなくなってきているように感じます。
というのは、大型の研究費では、論文に加えて社会実装まで求めるものも出てきているからです。
出口を意識することができるかを求められきているように感じますね。
(厳密には業績として評価されるような大型研究費の評価項目として社会実装が入っている感じ)
実際、大型研究費でベンチャー立ち上げまでされた例を見ると、売り上げ度外視でただ立ち上がるだけで、果たしてそこまで無理やりやった意味があるのかと感じてしまうことがあります。
特許について
自分の研究について特許を出すことも大事です。
特に応用系だと、出口手前まで行けるような研究もあるので、権利を確保しておく重要性が高いように感じます。
他の人が権利を獲得してしまって開発者なのに自由に使えなくなってしまうなんて例も聞きます。
とは言っても、大学って特許を申請したり維持するためのお金があまり無いので、大変らしいですが。
研究の流行の影響は少なからずある
みなさんご存知の「選択と集中」による研究の流行り廃りですね。
まだまだこれからなのに、数年前までは栄えていた研究分野が廃れたりなんてことがざらにあります。
人気の(予算が多くつけられた)研究分野によってたかっている感じでしょうか。
自分がやりたいと思った研究も研究費がつかないとできないので、研究費獲得のためには仕方ありません。
研究費獲得のためには、自分のやりたいこと以外のこともとにかくやるしかないという、「自分のやりたい研究を自由に」というのは、大学の研究者でもほんの一握りな気がします。
上記をやるなら企業でよくない?
という感じで、現在の応用系の大学の環境を体験して思うことが、「それやるなら企業でよくない?」でした。
これまで、研究室で教授方の研究費事情をみたり、学会でいろんな研究者の動向をみたり、栄えたり衰退したりをみたり、自分でも、論文書いて、特許もだして、研究費をとったりと、大学でやることは(浅いですが)だいたい経験させてもらえました。
実際にやって感じたのは、応用系として出口まで考えて、社会実装の入り口まで大学で要求され、さらに流行の影響を受けるなら、企業でやった方が早くないか?ということです。
企業に入って研究を始めてみたらまさしくその通りで、現在かなり満足度が高い状態で研究に取り組めています。
また、大学では任期のある中次のポストの不安や、来年の研究費も獲得できるかどうかわからない極限状態での研究活動ですが、企業だと、雇用も安定しているし、必要なことなら研究費の心配も大学ほどではないので、精神的な安定感は高いというのは大きな魅力です。
自分=研究テーマ」で考えなければ企業でもマッチする
次に考えるのが、これまで大学がいいと言ってきた人間が企業でも研究活動ができるかどうか。
主に考える点としては、自分と企業がマッチするかどうかだと思います。
そもそも企業とマッチするとは何か
大学で博士課程まで行くと、企業とマッチングしにくくなるとよく聞きます。
確かに、研究の中身で考えたらそのケースは多いかもしれません。
しかし、大事なことって「その研究をやってきた人間」であることよりも、そのテーマを取り組むに当たって、培われた考え方、知識、スキルだと思います。
その考え方、知識、スキルは大学だけでなく企業でも間違いなく役に立つと思います(というか現時点でかなり役に立っている)。
自分が企業からオファーをもらえたのは、共同研究を通して、どのテーマでも対応できる知識量と課題を解決するための考え方が大きかったようです。(面接でそんなこと言われた)
決して自分がやっていた研究テーマが企業の進めたいテーマと一致したからではない…はずです。
企業での研究って実際どんな感じ?
世の需要に対しての解決策を見つける感じでしょうか。
大学での研究は、論理が通っていれば、世の需要に対応していなくても課題設定としては間違いとされませんでした。(というか大学の研究で取り扱う問題は需要よりももう少し大きな視点の自然科学の根源の問題についてなので、当たり前といえば当たり前ですね。おそらく、需要云々で行くと課題設定が小さいと言われる可能性もあるかもしれません。)
そこが論理的な考え方のある意味欠点だとも思いますが。
ただ、企業だとそれは間違いな課題設定になります。
世の中にどれだけ貢献できるものを作り出せるかが大事なので、世の需要は無視できません。
そしてそれは今必要なものでもあるし、数年後必要になるものでもあるし、数十年後必要になるものかもしれません。
とにかく各期間に合わせた様々なテーマに取り組んでいくのが企業の研究かなと思います。
これが意外とすごく楽しい!
短期のものは今使えるものをいかに駆使して達成できるか。
一方で、長期のものはそれこそ大学の基礎研究みたいな感じでオールラウンダー的な感じが自分と合ってていいなと思いました。
今やってる研究が全てじゃない
世の中はずっと変わり続けるので、その時その時で必要なものが変わっていきます。
その中で、「自分=研究テーマ」と結びつけると、その時そのテーマは必要とされていたけど、そのテーマが終了した時に自分もいらなくなってしまいます。
研究に対しての考え方・どれだけ柔軟に対応できるかという能力が企業と合うかどうかなのかなと考えています。
研究するのは論文を書くためじゃないから企業に進む?
まれによく聞く「論文を書くために研究をしたく無い」という主張。
大学にいる以上、論文が評価の主軸なので、いかに論文を出せるかに意識が向きます。
中には実用的な価値が無いとわかっていても、論文を書くしかないなんてこともあるので、その気持ちはわかりますし、自分もそのスタンスには疑問を感じることもあります。
とは言っても、企業でも論文は必要になることがあるのも事実です。
どんな時かというと、「論文を基準に物事を考える相手」を説得する時です。
機械系は日本語の文献かつそこまで論文を重要視しないと聞きますが、その一方で創薬系や医療系は英語の論文をかなり重要視していると聞きますし、実際にやり取りをしていて論文の必要性を感じます。
なので、その人たちに使ってもらうようなものを作る場合には論文が必要になります。
論文の役割はその研究結果が確かであるという一種の証明書だと思うので、大学にいても企業にいても論文は大事だということですね。
(企業の場合は本当に分野によると思いますが)
まとめ
以上、「研究者になるなら大学と企業どっちがいい?」について、企業の研究環境を経験してみて感じたことのアウトプットでした。
研究者になるなら大学と企業どっちがいい?
研究者を目指したいと思う多くの人が抱いたであろうはこの悩みについて、
実際に企業の研究者になってみて、予想外に企業で研究することが合っていました。
その理由は下記の2つかなと考えています。
- 最近の大学の応用系は企業との役割が曖昧になってきている
- 「自分=研究テーマ」で考えなければ企業でもマッチする
今の所企業でも全然問題なく研究者として生きていけているので、しばらく企業の研究者として生きていこうと思います。
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