本記事では「CAR T細胞」の基本・課題・今後の展望について解説した記事から学んだことをアウトプットします。
バイオ系の人ならCAR T細胞は聞いたとはもちろんありますね?
それではCAR T細胞は一体どんな細胞なのでしょうか?
私は恥ずかしながら答えられなかったので、これを機に勉強しました。
- そもそもCAR T細胞ってなに?
- CAR T細胞ってどれだけ実用化されているの?
について、わかりやすさを意識してアウトプットしてみました。
CAR T細胞とは
背景
CAR T細胞が作り出された理由
「オプジーボ」と聞けば誰もがピンとくると思います。
2018年のノーベル医学・生理学賞にもなった研究の産物です。
オプジーボなどは「チェックポイント抗体(免疫チェックポイント阻害剤)」と言って、がん細胞がT細胞の働きを弱めようとするのを邪魔して、T細胞が本来の力でがん細胞を攻撃する能力を維持する作用をするそうです。
ただこのチェックポイント抗体も万能ではなく、遺伝子変異の多いがん細胞しか対応することができないとのことです。
なので、遺伝子変異の少ないがん細胞でも認識して働くようなT細胞が必要だとのこと。
CAR T細胞
そこで開発されたのが「CAR T細胞」。
がん細胞を異物として認識する強力な方法としてモノクローナル抗体があります。
このがん細胞を認識するモノクローナル抗体とがん細胞を攻撃するT細胞を合体させたらものすごいT細胞ができるんじゃないかということで、できたのが「CAR T細胞」だそうです。(参考)
CARとはキメラ受容体(Chimeric Antigen Receptor)の文字をとってるようです。
抗体とかT細胞が持つ受容体とか色々合体した受容体だからキメラなんですね。
患者から採取したT細胞にCAR遺伝子を導入することで作製しているそうです。
CAR T細胞の特徴と課題
CAR T細胞の特徴
- 抗体のように高い特異性
- 細胞障害性T細胞のように高い細胞増殖性+高い増殖力
抗体とT細胞のいいとこ取りをしたそんな細胞ですね。
かなり高い効果を示しているとのことで、2017年にCD19 CAR T細胞療法がFDAで承認され、これに続いて現在様々ながんに対するCAR T細胞を作るために大競争中とのこと。
CAR T細胞の課題
現時点では血液がん(白血病など)にしか有効性がなく、固形がん(肺がん、骨肉腫など)に有効性を示すもの開発が現状の課題とのこと。
固形がんにCAR T細胞が効かない理由は下記の通り
- 固形ガンを認識するのに最適な抗体ができていない(抗体が認識する部分(抗原)が見つけられてない)
- CAR T細胞が組織中のガンの局所まで入り込んで行けない(遊走・浸潤ができない)
- がん組織の環境がCAR T細胞の働きを弱めてしまう。
- CAR T細胞が十分な体内で生存できない
そして医療費がものすごく高額とのこと。
1回の投与に5000万円ぐらいかかるらしいです。
これは患者ごとに毎回CAR T細胞を作らないといけないことと、徹底した品質管理が必要なためだそうです。
解決策
この記事では上記の課題の解決策として
- 他家(他の人)のT細胞から作る
- iPS細胞から作る
の2つの方法が述べられています。
1つ目の他家(他の人)のT細胞から作るについて。
必要な時に本人から血をとって作るのでは、時間とお金がかかる。そして他の人には使えないという課題がありました。
そこで、別の人からあらかじめ作っておいて必要な時に患者に使うという戦法でしょうか。
ただし別の人のT細胞を使うと免疫拒絶が起こるので、ゲノム編集をつかって、免疫拒絶が起きないように加工したT細胞にCAR遺伝子導入するそうです。
2つ目のiPS細胞については、免疫拒絶を起こしにくい人から作ったiPS細胞を使って、CAR T細胞を作ることで、あらかじめ用意しておき、必要になった時に使うというものですね。
日本国内で絶賛取り組み中らしいです。(参考)
最近の研究
ちらっと調べてみたところ、固形がんについてアプローチするCAR T細胞も成果が出てきているそうです。(参考1)(参考2)
その名も「Prime CAR T細胞」というもの。
CAR T細胞にIL-7というサイトカインとCCL19というケモカインを産生する能力を与えたものだそうです。
- IL-7はT細胞の生存と増殖を促進
- CCL19はT細胞や樹状細胞をがんへ集まりやすくする
という機能がそれぞれあるそうです。
これによって固形がんにも対応できる能力を得られたとのこと。
Prime CRT T細胞のPrimeはProliferation-inducing(増殖の誘発) and migration-enhancing(遊走の促進)の文字からとったそうです。
思ったこととか考えたこととか
ノーベル賞をとったオプジーボの不足している部分を補うようながんの治療法になるとのことで、それは期待大ですね。
T細胞に色々機能を付け足していくという発想がロボットみたいで面白いですね。
色々と調べてたらCART細胞の課題として、表面の抗原しか認識しないので、がん細胞の特徴が細胞の内側にしか出ていないものは認識できないらしいです。(参考)
この発想を勉強する中で自分でできなかったのはまだまだですね。
課題のところで触れられていたCAR T細胞の浸潤や遊走についてや、体内での生存について直接的な解決ではないけれど、3次元組織の培養技術を使って色々試すことができるのではないかなと思います。
「3次元がんモデル」というものがあり、3次元培養した組織の中にがん細胞を入れ込んで、がん細胞の動きや抗がん剤の評価を行う研究がされています。(参考)
こんな感じで、3次元培養した組織の中にがん細胞の塊を入れておいて、そこにCART細胞がどのように浸潤していくのか?浸潤に必要な要素はなんなのか?を調べるツールとして使えるのではないか。とか妄想が膨らみますね。
実際動物を使って実験した方が早かったりするのでしょうか。とはいえ、動物実験代替法などの動きもあるし、動物と人の組織の環境の違いとかもあるので、そこらへんは実際どうなんでしょうね。
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