本記事では「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」を読んで学んだことをアウトプットします。
売れる製品の作り方。ものづくりの本質を解説した本となっており、
- 製品はただのものではなく、成し遂げたいことを達成するもの。困難を解消するもの。満たされていない願いを叶えるもの。
- 人は刃の直径が4分の1インチのドリルがほしいのではない。4分の1インチの穴がほしいのだ。
- データは顧客の解決したいことを映しているわけではない
といったことが、実際にものづくりに関わる立場で、「あるある」とか「なるほど確かに」と感じさせられながら述べられていました。
この本を読んでみて、
- 研究成果を世の中に還元したいと考えている人
- 企業で新しい商品作りで悩んでいる人
- なぜ「良いもの」だけでは売れないのか疑問に感じている人
といった人たちにおすすめできる良書だと感じました。
「ジョブ理論」で解決したかったこと【購入(雇用)理由】
研究を世の中の役に立てたいという想いで企業で研究者をやっています。
役割としては新規のテーマとなる研究を行い、その出口を探すことです。
実際に研究をやって結果を出して、先行の製品と比較して、本当にこの研究成果は世に受け入れてもらえるのかな?と疑問がありました。
そして、この研究は本当に世に出て受け入れてもらえる自信も持てませんでした。
どうすれば自分でそう納得できるものができるものを作ることができるかもわかりませんでした。
その時に、セミナーでこの本をピックアップしている人が取り上げた1つのフレーズでこの本にはヒントがあるのではないかと感じました。
それが、
人は刃の直径が4分の1インチのドリルがほしいのではない。4分の1インチの穴がほしいのだ。
ジョブ理論、p270
単純で簡単なことなのだけれど、見落としがちな本質だと思いました。
「ジョブ理論」で解説されていること
章構成
序章
第1部
第1章 ミルクシェイクのジレンマ
第2章 プロダクトではなく、プログレス
第3章 埋もれているジョブ第2部
第4章 ショブ・ハンティング
第5章 顧客が言わないことを聞き取る
第6章 レジュメを書く第3部
ジョブ理論、もくじ
第7章 ジョブ中心の統合
第8章 ジョブから目を話さない
第9章 ジョブを中心とした組織
第10章 ジョブ理論のこれから
解説されていること
世界で最も影響力がある経営学者であるらしいクレイトン・クリステンセンさんが売れるもの(プロダクト)を作るためには何を考えなければいけないのかを解説した本です。
キーワードは「顧客が片付けたい物事(ジョブ)は何か?」
どんな”ジョブ(用事、仕事)”を片付けたくて、あなたはそのプロダクトを”雇用”するのか?
ジョブ理論、p15
といった感じで、購入してもらうことを、「雇用」と表現しているところが印象深かったです。
この本で重要だと思った3つのこと
- 製品はただのものではなく、成し遂げたいことを達成するもの。困難を解消するもの。満たされていない願いを叶えるもの。
- 人は刃の直径が4分の1インチのドリルがほしいのではない。4分の1インチの穴がほしいのだ。
- データは顧客の解決したいことを映しているわけではない
売れているものを「なぜそれほど売れているのか」調べてみると、「その製品の性能が素晴らしいから」ではなく、顧客が解決したいことを解決してくれるからというものだったそうです。
この顧客が解決したい物事(ジョブ)は、事象の一部を切り取って可視化したデータ(市場調査、顧客の動向)から掴むことは難しいとのこと。
ではどうやって顧客のジョブを掴んで、雇用してもらえるプロダクトを作るのか?
これについて、実際の例を挙げながら、製品が持つ本質(何を解決するためのもの)について解説されていました。
製品(プロダクト)を売ることよりも、達成したいこと(ジョブ)に応えることが重要そうです。
特にアカデミアの研究にどっぷり浸かって、「新規性こそ正義」という思考に陥ってしまっている人にとっては、耳が痛いことがたくさん述べられていました。
「ジョブ理論」を読んで得たこと
製品(プロダクト)って何だろう
自分が思っていた製品とは、「これまでにない新しいもの」でした。
研究者あるあるだと思いますが、「新規性」重視の考え方です。
世に出ている製品も、これまでになかった新しい機能を持っているものをすごいと思う傾向もありました。本当にその機能が必要か、売れているのかを気にせずに…
この本を読んで、「製品はただのものではなく、成し遂げたいことを達成するもの。困難を解消するもの。満たされていない願いを叶えるもの。」
ということを知りました。
確かにAppleを例に見てみると、自分自身納得するものがありました。
MacやiPadなどの新製品の発表では、搭載されているチップの性能やメモリの性能などのデバイスの性能として、これまでにないような素晴らしい性能を搭載しています。
ただ、あまりワクワクしませんでした。
振り返ってみると、スティーブ・ジョブズの発表でも確かに性能面については触れていますが、その先に「何ができるようになる。何がかわるのか」が示されていていたように感じます。
製品の魅力は「もの」というよりも「できるようになること」に感じていたからこそ、よりいっそうジョブズが発表する製品にはワクワクしていたのでしょう。
ただの新しいものはかなりアカデミア的な考え方が過ぎたなと反省しました。
新規性があるだけでは売れない、アドバンテージにならないことがわかりましたし、顧客を見ていない独りよがりな考え方だなと痛感しました。
この本を読んで以降、この製品は何を解決するためのものなのだろうかを考えるようになりました。
そうすることで、前よりも提案するテーマに対して「この研究は何の役に立つの?」という質問が減ったように感じます。
顧客が必要としているものって何だろう?
これもアカデミア的な考え方だったなと感じますが、
今までの技術はここまで進んでいる。それでも解決できていない課題がある。
その課題を解決するものが必要なものだと考えていました。
論文や学会発表などでよく使うイントロダクション的な考え方です。
その考え方を改めるのに一番聞いたフレーズが下記のものです。
人は刃の直径が4分の1インチのドリルがほしいのではない。4分の1インチの穴がほしいのだ。
ジョブ理論、p270
単純明快でまさにこれぞ本質と感じます。
技術は悩みを解決するためのただのツールに過ぎません。
その技術からの視点で必要なことを考えても、それが顧客が求めていることとマッチするわけではありません。
なぜなら、それは技術側の都合であって、顧客が日々の暮らしで抱えている悩みは人間の都合だからです。視点が違うと見えるものも変わるというやつですね。
顧客が解決したいことを読み取って、技術をどうすれば解決できるようになるかを考えることが、ものづくりの本質なのかなと考えを改めさせられました。
人の暮らしをより豊かにするために技術があるという前提を忘れてはいけませんね。
需要ってどうやって調査するんだろう?
これまでの自分のその技術がどれぐらい必要とされているかの考え方は、
- 解決できていないことは何か
- 市場調査から注目されているところはどこか
というデータに基づくものが多かったです。
ところが、「ジョブ理論」によると、
「データは顧客の解決したいことを写しているわけではない」とのことです。
その理由としては、データは顧客の動向や考えの一部を抜粋したものだからとのことです。
特に「データ」についての考え方は下記の文章が印象的でした。
片付けるべきジョブが市場のプロダクトとなったとたん、受動的データは隅に追いやられ、能動的データが声高に迫ってくる。文脈を豊かに含んだジョブの視点は必然的に弱まってしまう。ひとたびプロダクトが売り出されると、蛇口がひねられてデータがつくられはじめる。そのデータは、売上が発生し、顧客が生まれるまで存在しなかったものだ。曖昧でつかみづらい苦闘のストーリーから、精密かつ整然としたスプレッドシートへと関心を移した時のマネージャーの安堵感はよくわかる。そしてこの切り替えは、ほとんど注目されることなく組織的におこなわれる。
ジョブ理論、p279
能動的データが切り取ったモデルをマネージャーが現実世界の姿だと誤認してしまうとしたら、むしろその進歩は毒になる。データはつねに現実を抽象化したものであり、その根底には、現実世界のまとまりのない現象をどのように分類するかについての潜在的な仮説が存在する。マネージャーはこのことを都合よく脇によけてしまいがちだ。それゆえデータは人為的なものだといえる。
ジョブ理論、p280
実際に企業で市場について調べる経験をすると、なるほど確かにと納得する文章でした。
当たり前のことですが、データの取得方法、加工方法を間違えていると正しいデータにはなりません。
「ジョブ理論」でも解説されているように、悩みは文脈による情報のため定量化できません。
そのため、データとして扱うためには加工するしかありません。
その加工方法を間違うと顧客の悩みという重要な情報が消えてしまうということですね。そもそもデータとして加工することが正しいことなのかもわかりません。
そもそもこれまでに解決できていないことは、製品になっていないからデータが集められないというのも言われてみれば確かにという部分です。
顧客の悩みを聴き、解決したいこと、達成したいことは何か?は、顧客から文として得るしかないそうなので、ヒアリングでいかに汲み取れるか、アンケートの設問が妥当かどうかを考え抜く必要があると感じました。
それをより多くの人に共通する形として解釈すること(同じ悩みを抱えている人がどれだけいるか?これが需要の量)が大事なのではないかと思いました。
まとめ
以上、「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」を読んで学んだことのアウトプットでした。
この本から、顧客に必要とされる製品とは何か?についてのヒントを得ることができました。
これまでは分野の一般的な広い課題の中での新しいものが製品だと思っていました。
実際には、もっと人間個人のより細かな解像度でみる中で、困っていることを何で解決するかが製品を作る鍵だということも知ることができました。
新しいものづくりを考える中で、「ただの新しいもの」(アカデミア的な考え方)から「どんな課題を解決できるもの」にシフトしていくことが徐々にできるようになってきました。
実際にやってみると、これまでは漠然と新しいことをやっていて、具体的に何を解決できるかが不透明だったものが、「誰が何に困っていて、つくったものでどれぐらい貢献することができそうか」という提案ができるようになってきた。
研究者として成果を世の中の役に立てたいと思う人にとって、自分で考える上でも、他人に納得してもらうためにも大事なことが書かれた本だと感じました。
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