本記事では、研究活動をするに当たって院転して気づいた有名大学のメリットについて、経験したことをアウトプットします。
世間一般的に見たら、大学のネームバリューやブランドは就職活動に有利とされています。
有名大学に行くメリットとはそれだけなのでしょうか?
大学院に進学してがっつり研究に携わった私から見た有名大学のメリットは、
地方大学と同じ授業料なのに、教育環境がものすごく充実していることです。
(※国立大学に限る)
具体的には下記の3つです。
- 有名な先生が多い
- 資金が潤沢
- 設備が豊富
学部・修士と国立の地方大学で過ごし、縁があって博士課程でそれなりに有名な国立大学に進学して、同じ授業料払っているのに、こんなにも環境に格差が開いているのかと驚嘆しました。
大学受験の勉強はこういった点でも、頑張っておくと自分のためになるんだなぁと、今更ながら痛感しました。
有名な先生が多い
有名な先生が多いと何がいいのか?については下記の2つです。
- 講演会で聞ける話のレベルが高い
- 勉強会が多い、その情報が回ってくる
講演会で聞ける話のレベルが高い
講演会でお話される先生は、だいたい教授の知り合いの先生であることが多いです。
なので、力のある先生ほど、ノーベル賞受賞者などの有名な人やこれからが期待されているすごい人を呼んでくれます。
それこそお金を払ってでも聞きたいような話がたくさん聞けるわけです。
勉強会が多い、その情報が回ってくる
大規模だったりハイレベルな勉強会というのも、その分野のトップの先生が舵取りをしていることが多いです。
そんな感じで他の人をまとめることができることがトップたる所以でもあると思います。
なので、そういう勉強会を開催してくれる先生が近くにいると、必然とその情報が入ってくるので、学ぶ機会が圧倒的に多いです。
そもそもそういう勉強会があること自体知らないと、調べられないのでなかなか有利不利別れるところだと思います。
という感じで、有名な先生が多いと、得られる情報の量と質が圧倒的です。
資金が潤沢
大学の資金事情について
国立大学とは言えど、やはり有名な大学とそうでない大学では資金面でかなりの差があります。
例えば、日本の研究.comでは獲得研究費の5年間の合計を見ることができます。
研究機関 | 推定研究費 |
東京大学 | 4,054億円 |
京都大学 | 2,302億円 |
東北大学 | 1,706億円 |
大阪大学 | 1,560億円 |
九州大学 | 1,228億円 |
産業技術総合研究所 | 1,046億円 |
名古屋大学 | 1,034億円 |
慶應義塾大学 | 790億円 |
東京工業大学 | 784億円 |
理化学研究所 | 765億円 |
トップ10はどれも有名な大学・機関ですが、それらの間でもかなり差が大きいですね。
この研究費は各大学に所属する研究室が獲得したものになりますが、だいたいの研究費は3割ぐらいが間接経費という名前で大学の運営資金として入ります。
なので、ランキングの比率と同じぐらいの運営費の格差があるということになります。(大雑把に言えばですが)
また、運営交付金という、国の予算から各大学に分配されるお金も一律ではありません。
(参考:数字つくってみた、2017年度 国立大学法人運営費交付金額ランキング)
職員や学生の人数も違うので一概には言えませんが、有名大学ほどお金が潤沢なので、その恩恵を受けることができる確率は高くなります。
実際に地方大学にいた時よりも、有名な大学に所属した方が多くの恩恵を受けることができました。
具体的な恩恵とは下記の2つです
- 講演会が開かれる回数が多い
- 学生に対する支援が豊富
講演会が開かれる回数が多い
講演会を開くのもタダではありません。
講演者への講演料や旅費を払ったりする必要があるので、予算があります。
とうことで、資金が潤沢なところはこの予算が多いらしく、講演会の開催回数がものすごく多いと感じました。
体感ですが、地方大学が月1ぐらいに対して、有名大学では週1ぐらいの差がありました。
回数も多いし質も高い。良いことしかないですね。
学生に対する支援が豊富
上記で述べた勉強会について、大規模で本格的になるほど、合宿形式だったりで参加費がすごく高くなるものがあります。
ところが、大学(各学部・学科など)が負担してくれることがあります。
私が参加したものは、参加費(宿泊費・食費込)と教科書代について、大学側の補助によって自分での負担額が0~20%ぐらいでした。
これはかなりありがたかったです。やはり博士課程で20代後半とは言えど学生で貧乏なので、このようなサポートは本当に助かりました。
他には、RA(リサーチアシスタント)という制度が充実しており、教授の研究業務補佐という名目で月に数万円程度支給してもらえます。
研究業務補佐と言いつつ、普段の研究活動もなんだかんだ教授の業績になるので、いつも通り研究しているといくらかお金がもらえるということになります。
地方大学にいたときはRAは幻の制度だと思っていましたが、有名大学では普通にあるんですね…
ちなみに私は大学に属していながらも、共同研究が主体の少々特殊な形態の研究室に所属してしまったが故に、RA制度は受理されませんでした。
同じ学費払っているのに…という文句は少しあったりなかったり。
設備が豊富
大学の主な設備と言えば下記の2つでしょう。
- 図書館の蔵書数が多い
- 実験機器の豊富さ
図書館の蔵書数が多い
大学の図書館の蔵書数は下記の感じだそうです。
順位 | 大学 | 蔵書数(千冊) | 大学種 |
1位 | 東京大学 | 9,745 | 国立 |
2位 | 京都大学 | 7,126 | 国立 |
3位 | 日本大学 | 5,704 | 私立 |
4位 | 早稲田大学 | 5,647 | 私立 |
5位 | 慶応義塾大学 | 4,954 | 私立 |
・ ・ ・ | ・ ・ ・ | ・ ・ ・ | ・ ・ ・ |
34位 | 金沢大学 | 1,890 | 国立 |
・ ・ ・ | ・ ・ ・ | ・ ・ ・ | ・ ・ ・ |
691位 | 浜松医科大学 | 46 | 国立 |
基本的に、専門書の知識はネットで探すのは大変。というよりほぼ無いです。
その専門書も自分で買おうと思うと目ん玉飛び出るぐらい高いものが多いですね。
そこで頼りになるのが図書館です。
ただ、地方大学にいた時は、目当ての資料がなく、入手するのにすごく苦労しました。
一方有名大学では、流石の蔵書数です。ふと気になった資料は無いことがないし、探していた絶版本も普通に置いてあり、感動しました。
目的の文献を入手する労力は少ない方が良いですよね。そこにかける労力は中身の吸収に使いたいです。
実験機器の豊富さ
実験をする上で実験装置はものすごく大事です。
所有している装置の数ほど手数が増えるわけですからね。
また、論文によっては「この実験データ無いと通さない」という雑誌もあり、その時に装置が無いと本当に絶望です。
共焦点顕微鏡という大体1000万円〜の装置を例に見てみます。
地方大学にいた時は、学部で共焦点顕微鏡が1台しかなくて、全然使えなかったり、機能も必要最低限でなかなか使いにくかったりしました。
わざわざ長い時間をかけて装置を他機関に借りにいっていました。
有名大学に行ってから、かなり驚いたことの1つが、1つの学部で共焦点顕微鏡を3~4台も共通機器として所持していることです。
共焦点顕微鏡だけでそれですからね。研究費の格差は恐ろしいですね。
さらに脱帽したのが、研究室単位で共焦点顕微鏡を2,3台所有しているラボが結構あること…
田舎者には想像できないくらいの衝撃でした。
また、有名大学は大型プロジェクトで解析支援などの拠点にもなるので、1台数千万円を超えるような機器がゴロゴロ置いてある設備を無料で借りることができたりします。
研究を進める上でも、経験をする上でも本当に大きなアドバンテージだと思います。
必ずしも有名大学に行くのが良いわけではない
国立大学で見ると、同じ授業料を払ってこの差は大きすぎると思います。
ただし、研究者として生きていくのであれば、このアドバンテージが吉と出るか凶とでるかは割と本人次第だと感じました。
何も苦労せずにできる環境は、研究テーマについては没頭できるかもしれません。そして本来はそれが理想的です。
しかし世の中そんな理想的な環境だけではありません。
設備が使えなかったり、予算が取れなかったりした時に、じゃあどうやって対応するのかという能力は必ず使います。
この時には、実際に対応してきた経験があった方がもちろん有利です。
装置を借りるための交渉やレンタル、少ない予算の中でもやりくりして結果を出すというように柔軟に対応する経験ですね。
不自由さという一種の制限は、考えをより発展させる重要な因子だと思うので、経験としては至れり尽くせりよりも、多少不自由な環境の方がたくましくなるとは思います。
現に私も地方大学から有名大学に移る時に、周りからエリートばかりでやっていけるのか?みたいなことを言われましたが、実際に行ってみて、対応力や自分でなんとかする力は全然不足していないと感じました。
「どこで」よりも、「どこにいても」自分がやりたいこと、やるべきことを常に考えて、達成できるように行動することが大切ですね。
環境は使う人がいて初めて役に立つので、環境を十分に使いこなせるような人になることをまず目指すことが大事だなと思いました。
まとめ
本記事は、研究活動をするに当たって院転して気づいた有名大学のメリットについて、経験したことのアウトプットでした。
有名大学に行くメリットは就職活動以外にどんなメリットがあるの?
という疑問について私の経験して得た答えは下記の3つです。
- 有名な先生が多い
- 資金が潤沢
- 設備が豊富
受験勉強はそれほど頑張らなくても研究者にはなれるけど、そこまでの大変さは全然違うこと。
環境が豊かということはそれほど選択肢が豊富ということでもあります。
同じ額の授業料を払うなら、受験勉強はちゃんとやっておいた方が、コスパの良い大学生活ができるよということです。
ちなみに、私が地方大学に行った時は、当時やりたい研究をやっていた先生がその大学にいたからという理由です。
ちゃんと勉強して、その先生の研究室に入って、思っていた以上に自分のやりたい研究に携わることができて後悔は全くありませんでした。
なので、やりたいことが明確な人は、大学とか関係なく行きたいところ、やりたいことを優先すれば良いと思います。その思いと経験が力になるはずです。
あと、研究に携わってる人は、研究だけで相当苦労して痛い目みてると思うので、環境はもっと研究する人にとって優しいものであっていいと思います。
環境も辛い、研究も辛いだと研究者を目指す人材の確保が難しくなる一方ですね。
あと、自分はこんな大変な思いをしたというのをただの武勇伝で終わらせるのではなくて、後の人たちに同じ苦労をさせないような努力ができるのが立派な先人だと思います。
私はそうなれるように精進します。
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