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研究室で指導教員からの指導を受けられなくても博士号取得までもがいたメモ

Science Memo
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本記事では、どうしても研究者になりたかった私が研究室で教員から指導を受けられなくても博士号を取得するためにもがいたことのメモについて、私が実際に経験したことをアウトプットします。

研究室で教員から指導を受けられない、それでも研究をしたい、研究者になりたいけどどうしたらよい?

という疑問に対して、私が師匠と呼ぶ人に教えてもらって実践した研究遂行能力を得るための方法は下記の3つです。

  • 自分の研究に新規性があると断言できるぐらい論文を読む
  • 先輩とディスカッションできるようになる
  • 試薬や機器の取扱説明書を熟読する

自力で〜的な感じで書いていますが、指導教員からの指導をほぼ受けられない中、幸いに貧乏ながらも自由に研究できる環境、研究室の人たちが良い人達、師匠と呼べる人に出会えたことなど環境に恵まれ助けられてきたのは事実ですし、そのおかげということもあります。

自分でやったこと半分、人・環境に助けられたところ半分という感じでどちらが欠けても厳しいと思います。
助けてもらった人・環境には本当に感謝しかありません。そして半分の人・環境は運によるところが非常に大きいと思います。
なので、多くの人にこのメモが役立つかもわかりませんし、同じことをしたから博士号を取得できるとも限りません。

ただ、研究者になりたいとの想いで配属された研究室の先生が実は放任主義だった時に、どうしたら良いかわからなかった私に研究者としての「研究遂行能力の身につけ方」を短期間ですが叩き込んでくれた師匠の教えは、今でも本当に通用するぐらい大事だと体感しているのでメモとしてアウトプットします。

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研究室の先生が放任主義だった

近年、教授1人で研究室を運営していることこというのは珍しいものではありません。
単純に人が足りないというところもあれば、若手に早いうちから経験を積ませることが目的で、助教授からでも研究室を構えることができます。
しかし、そのようなところは、基本的に先生が1人に対して学生が十数人つくシステムになっているところがほとんどです。
こうなると、研究費獲得の仕事や教員としての雑務に追われ、研究に携わることがほぼできません。

私は高校生ぐらいのころから、研究者になりたいと想って大学に入り、入学時より狙っていた研究室に入ることができました。
この時はまだ、大学の研究室のシステムとか全然理解していないひよっこだったので、とにかく自分が興味のある研究室に入ることができればよかったんですね。

実際に研究室に配属されて、テーマが割り振られた時に、そのテーマがめちゃくちゃアバウトでした。
まさに上記のような、1人運営で研究費と雑務に追われている教授だったんですね。
その代わり、割と自由にやって良いとのこと。
とは言ったものの、初心者の自由ほど怖いものはありませんね。

このままではいけない、自分でなんとかしなくてはと思い、とにかく自分で勉強を本気でしなければと実行したのがだいたい配属後1ヶ月目ぐらいでした。
その時の勉強方法を過去記事でアウトプットしています。

この過去記事の「教科書」と「学会」を使った勉強を主にやっていました。「取扱説明書」は後ほど詳しく記します。

ちなみに、博士課程で他大学の研究室に移りましたが、そこも放任主義だったため、やってしまった感はすごかったですね。

師匠に教えてもらった「研究遂行能力の身につけ方」

研究室に配属された直後、共同研究先に飛ばされました。
飛ばされたと言っても、研究室と共同研究先を毎日往復しながら実験を進める日々なのですが。

この共同研究先で研究担当をされていた助教授の先生を後に「師匠」と呼ぶはこと時は想像だにしていませんでした。

初めの印象はめちゃくちゃ優しい人だったのですが、話す中で「私が将来研究者になりたい。博士課程まで行くことを決めている」というと、次の日から豹変して死ぬほど厳しくなりました。
今思えば、共同研究なはずなのに、全く使えない新米を送って来られたのに、研究者として生き残る術を教えてくれたというのは、本当にめちゃくちゃ優しい人だったんだなとしみじみ思います。
厳しく怖かったのも、真剣さや緊張感を持たせてくれるためだったと思います。
そう思ってからはこの人こそ「師匠」だったなぁと後になって気づくわけですね。

たった4ヶ月程度でしたが、この師匠から教えてもらったことが、今でも通用するぐらい役に立っており、指導教官からの教育をほぼ受けなくても博士課程をなんとか取得できたのもこの教えがあったからだと強く思います。

実際に教えてもらった中で特に重要だったのが下記の3つです。

  • 自分の研究に新規性があると断言できるぐらい論文を読む
  • 先輩とディスカッションできるようになる
  • 試薬や機器の取扱説明書を熟読する
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自分の研究に新規性があると断言できるぐらい論文を読む

論文は攻略本

師匠曰く、論文は「攻略本」とのこと。

未知のことを自分で全て明らかにしていくのはとても時間がかかりますね。
例えばゲームの場合、全て自分で探索・検証しながら進むと膨大な時間がかかります。しかし、攻略本を読めば最短でクリアすることができます。
ゲームで初見から攻略本を使うと楽しさが激減ですが、研究は攻略本を使っても楽しさが減らないところが魅力ですね。

とにかく、論文は自分が得たい結果を得るための最短経路の参考を示してくれる「攻略本」のようなものであるということです。
研究は速さ勝負のところもあるので、いかに早く結果が出せるということは大切です。それを助けてくれるのが論文ということだそうです。

新規性の根拠を補強する

また、論文は攻略本としての役割だけでなく、自分の研究が本当に誰にもされていないことかを示す一つの根拠になります。
(そもそも無いことを証明するのはめちゃくちゃ難しいと言われていますが今は気にしない)

自分自身で確認するためもありますが、教授とディスカッションする時に論文は非常に役に立ちます。
いくら勉強して、筋が通ったことを言っても、所詮は若造の言うこと。できた教員以外なかなかまともに聞き入れてはくれません。
そんな時に、先行研究があればつきつけることで教員を説得することができます。
(これもなかなかおかしな話だと思うんですけどね。教員も勘ではなく論理的に考えて欲しい…)

過去記事でもこれには触れていますが、この時にiPadなどがあれば非常に便利です。
これまでに手元に論文がなくて何度苦渋を舐めさせられたことか。

100報読めば慣れる

初めは読むのは一苦労ですが、数をこなせば大丈夫だと思います。

4年生の間に100報ぐらい読めばそのあとは論文を読むのに苦労することないでしょう。
これだけすれば、論文から「実験手法」「新規性」を読み取ることができるようになるので、自分でテーマを作ることもできるようになると思います。

論文を書く

論文を書くことについては、教えてもらえなかったので独学なところが多いですが、基本的に論文を見よう見まねで書きました。

ほとんどの論文はパーツの組み合わせでできているので、下記の記事のようにテンプレートを作り、穴埋めの要領である程度は作ることができます。
細かいところは、共著者と議論し、英文校正で修正してもらい、査読者とのやりとりでブラッシュアップしていくことで完成させることができます。

先輩とディスカッションできるようになる

先輩は良きディスカッション相手

誰かとディスカッションすることは研究をする上でどれだけ経験者になろうが大事なことですね。

指導教官が放任主義の場合、基本的に研究については自分で手を動かしていないことが多く、情報収集も学会の発表を聞いた程度で論文を読まない人がいるので、実験手法なんかのディスカッション相手としては向かないことがしばしばあるとのことです。

そんな時に頼りになるのが、「先輩」という存在だそうです。
特に博士課程の先輩がいたらその人がベストだと思います。
いなかったら、修士課程の中で特に頑張っていると思う先輩が適任でしょう。
内部でいないのであれば、他の研究室など外部で作ることも手だと思います。

自分の研究テーマについては教員よりも勉強しているため、理解しているという自信に溢れている人は結構多いように感じます。(実際教員より詳しい人もいますね)
なので、先輩のテーマに関連することであれば、実験手法を教えてもらったり、結果の解釈の確認・議論するにはもってこいな人とも言えます。
自信があるというのはそれなりに勉強しているということでもあります。
ただし、勉強をたいしてしていないのに自信だけある人は気をつけたほうが良さそうです。

初めのうちは当たり前ですが、なかなかちゃんと相手にしてもらえないこともあるので、「こいつちゃんとやってるな」と思ってもらえるまで食らいつくことが大事だと思います。

特に研究報告会なんかでは、自分から先輩の発表に質問しましょう。
先輩もどこがわかっていないかフィードバックがあるのは嬉しいですし、ちゃんと質問してくれる人と印象付けるのは、研究室での人間関係を築く上でも大事なことだと思います。

実験でわからないことを聞くのは自分で調べてから

ついついわからないことがあると反射的に聞いてしまいがちですが、よく「それぐらい自分で調べろ」と怒られました。
(一言二言で説明できるものぐらいパパッと説明してくれてもいいと思いますが。私はそう思うから説明するようにしています。)

これは、自分で調べる癖をつけることが大事であるのと、思っている以上に先輩は多忙であることが理由でしょうか。

研究は未知のものを明らかにすることが主な仕事なので、自分が得たい答えはどこにもありません。
ただし、そこに近づくための情報はたくさんあります。
その情報を自分で入手できるかどうかというのが研究者として重要な能力だそうです。
よく「常にアンテナを常に張り巡らせろ」と言われていました。
こうすることで、自分でなんでも調べて必要な情報を獲得する力がつくそうです。

多忙というのは、博士課程の先輩に限った話ではありませんが、基本的にはそれぞれ自分の研究を成し遂げたり、雑務に追われているため必死です。
そんな中、少し調べればわかることをわざわざ聞くのは相手の時間を無意味に奪うものだそうです。

なので、わからないことを聞くときは、一度自分で調べてからするようにしましょう。
調べた上でわからないことは先輩も「仕方ないな…」と快く教えてもらえることができます。
後述しますが、先輩のいうことも必ずしも全て正しいというわけではないので、論文や教科書の情報の出所も合わせて聞くと良いと思います。

試薬や機器の取扱説明書を熟読する

これは当たり前で小さいことのように感じますが、意外とみんなやっていないそうです。

とにかくまずは自分が使う試薬や機器の取扱説明書を熟読することと言われました。
と言うのも、多くの人もやっているかと思いますが、研究室で教えてもらった方法で試薬を扱っていたら、実はその方法が正しくなく、共同研究先でものすごく怒られてしまいました。

その一件以来、取扱説明書は必ず熟読するようにしています。
そして、取扱説明書から得られる「試薬の扱い方」はもちろん「試薬や機器の原理」「論文では当たり前すぎて書いていない基礎的かつ重要なこと」なんかも意外と解説しているものが多く、教材として非常に良いものであると実感しています。

取扱説明書を読むメリットは過去記事でアウトプットしています。

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この方法で力をつけることのデメリット

上記で記した方法は確かに自分の研究を遂行する能力を高めてくれるのですが、デメリットもいくつかあります。

私が感じたデメリットは下記の3つ

  • アカデミアの世界の情報を入手する余力がなくなる
  • 雑務が増える
  • パンクして精神を病む

アカデミアの世界の情報を入手する余力がなくなる

アカデミアに残ろうとした時に、意外とその世界の情報が大切になります。
交友関係しかり、噂話でしか知り得ない裏の話などなど。

このようなことを知っているのと知らないのとでは結構立ち回りに大きな差が生まれてしまいます。
ただ、自分で能力を磨こうとするとどうしても遠回りになる部分もあり、注力せざるを得ないんため、世間の情報収取がどうしても後手になってしまいます。

アカデミアで生き残りたい人にとってはなかなか不利な立ち回りを強いられてしまうと感じました。

雑務が増える

放任主義な教員は、自分の教育ポリシーというより、手がそこまで回っていないからというのが多そうです。
なので、そのような教員の元で力をつけてしまうと、仕事が回っていない教員にとってありがたい存在になるわけですね。

そうなると、本来お給料をもらってその仕事をしている教員のたくさんの雑務が降ってきてしまします。
仕事をもらえるのはチャンスでもあるのですが、使い潰すぐらいの量の仕事が降ってくることがしばしばなので、デメリットの方が多い気がします。
気がつけば雑務まみれで、雑務が終わった残りの時間で、余力を振り絞り自分の研究をするなんてことにもなってしまいます。

仕事で手が回せなくて放任になっている教員が頼んだ仕事の管理なぞできるわけもなく…ですね。

パンクして精神を病む

上記のような雑務にまみれた生活を2年ぐらい送ると、よほどメンタルが強い人でないと精神を病む可能性が出てきます。

私は見事にやられました。
幸運なことに、体に影響が出やすい体質だったので、完全に潰れる前に対処できました。
体に出にくいとか、本当にダメになるまで症状が出ない人とかもいるので本当に注意が必要だと思います。

身体と精神は研究をする上で何よりも大切なものなので、自分を大切にしていきたいですね。

最善の方法は研究室を変えること?

本記事で記してきたことを実際にやってみて思ったことは、「結果として博士号を取得できはしたものの、正直ここまで無理することはないと思う」というのが正直なところです。

はじめに放任主義の先生を選ばないことができるのであればそれがベストです。
それができなかったときは、4年の頃に院試を頑張って、修士で評判のいい研究室に行くことをお勧めします。
放任主義かどうかは入って1ヶ月ぐらいすれば見抜けると思うので院試にも十分間に合うと思います。

研究室の見つけ方の一つとして、学会に参加する方法があります。
学会冬から春前にかけて多く、ここで候補を探すことができるでしょう。
少し勇気がいるかもしれませんが、気になる研究を発表している人を見つけ、先生やそこの学生にアプローチをかけてみると良い情報が得られるかもしれません。

まとめ

以上が、どうしても研究者になりたかった私が研究室で教員から指導なしでも博士号まで取得したメモについて、私が実際に経験したことのアウトプットになります。

私が実践していたことは下記の3つでした。

  • 自分の研究に新規性があると断言できるぐらい論文を読む
  • 先輩とディスカッションできるようになる
  • 試薬や機器の取扱説明書を熟読する

これだけやれば博士課程を終えるまでに必要な研究を遂行する能力を得ることは十分できるのかなと感じるところが個人的な意見です。

ただし、これだけあれば博士号を得られるというわけでもなく、自分が置かれた環境も大きく左右すると思います。
私は放任主義の教員の元で指導を受けられなかったという反面、割と自由に研究をすることができる環境であったり、研究室の人間関係が良好だったり、初めに生き残る術を身につける方法を教えてくれる人と出会えたりと運が良いと思うところも多々ありました。

本記事では自分の研究を実行するために必要な能力の身につける術について記しましたが、自分の努力半分、周りの人・環境が半分というのが正直なところです。
なので、周りの人たちと環境がなかったらもっと苦難な道を歩んでいたと思うので、本当に感謝しかありません。
自分が努力できるのは人・環境があってこそだと思うので、指導されないなか自分の力で頑張ったとしても周りへの感謝は忘れてはいけませんね。

ということで、私が経験した指導を受けられない中もがいたことのアウトプットでした。
多くの人には役に立たないかもしれませんが、1人の人間の体験としてこの記事がいつか誰かの役に立つことがあったら嬉しいです。

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